ALOHA FROM HELL
アロハ~! 地獄の住民も大合唱したくなる(!?)楽しいエモをお届けするよ!
アロハ・フロム・ヘルという名前が、彼らの音楽観を物語っている。〈キュートな感じのアロハという言葉を入れたい〉というヴィヴィ(ヴォーカル)の主張に対し、他の男性メンバーが〈それじゃロック・バンドっぽくないから、ヘルって言葉も入れてくれ〉と抗議してバンド名が決定したとのこと。ファースト・アルバム『No More Days To Waste』にはカヴァーが2曲含まれていて、それがシンディ・ローパーの歌った永遠のガールズ・アンセム“Girls Just Want To Have Fun”と、ハードなサウンドで疾走するアナ・ジョンソンの“Catch Me If You Can”だと明かせば、バンドの方向性がより理解できるかも。
ヴィヴィは9歳の時に同じドイツ出身のロック・バンド、ダイ・ハッピーのコンサートを観てシンガーになりたいと決意。アヴリル・ラヴィーンの遺伝子を感じさせるキャッチーなメロディーやルックスに加え、空手を5年間やっていたせいか、タフな精神も持つ。リストカットに逃げたり、妊娠したうえにカレシに捨てられるなど、現状を抜け出せずに痛みを抱える同世代の女友達に向けられた曲が多く、16歳にしてその存在感は圧倒的だ。
「私たちにとって、現実の問題を取り上げるのも重要なことだった。“Fear Of Tomorrow”では、自分の悩みや恐れていることから逃げている女友達のことを歌っているわ。私はこの曲で友達やリスナーのみんなに〈それじゃダメなのよ!〉って言いたかったの。〈辛いのはわかるけど、そこから逃げちゃダメ。どんな状況にも出口は見つかるはずだから〉って思いを込めてね」(ヴィヴィ)。
一方、ヴィヴィの幼馴染みであるフィリ(ドラムス)&モー(ギター)の兄弟と、音楽学校で知り合ったマックス(ベース)とアンディ(ギター)は、ジューダス・プリーストやアイアン・メイデン、ホワイト・スネイクといったヘヴィー・メタルを嗜好し、最近だとブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインがお気に入りだという。
「僕らのアルバムで特に好きな曲は“I'll Smash Your Mind”。重いリフと歌詞がカッコイイし、ステージでいちばんロックできる曲だから気に入っているよ。自分たちらしいサウンドだとも思うしね」(モー)。
なお、このたび登場した日本盤は、シングル曲のアコースティック・ヴァージョンなどボーナス・トラックをプラスした17曲入りという豪華仕様。アルバム・タイトルにもなったパーティー・ロック・チューン“No More Days To Waste”をはじめ、エモに留まらずポップ・ロックやヘヴィー・ロックなどの要素がここには搭載されている。もうちょっと曲順を整理しても良かったとも思うが、何といってもアロハ・フロム・ヘルの魅力はこの振り幅の広さ。確かな歌唱力と、どの曲もシングルになり得る完成度の高さは見事だし、これで平均年齢17歳だなんて末恐ろしい。昨年の本国デビューから1か月後には、世界30か国以上で私設ファンクラブが発足されたという話にも納得がいく。早くライヴでの実力を確かめてみたいと思うばかりだ。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2009年05月14日 16:00
更新: 2009年05月14日 16:49
ソース: 『bounce』 309号(2009/4/25)
文/伊藤 なつみ