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インタビュー

FROG

ガキにはできないヴェテランの自信がモノを言った知的な新作。極彩色の沖井礼二ワールドからはカエルの歌が聴こえてくるよ!


  「FROGは、デザイナーのLOKIこと菊池(元淑)くんが個展をやるから音楽で何かやりませんか?と誘われてコラボレートしたことが最初だったんですけど、そこから時間をかけて変化していったんです。で、いまはFROG自体がひとつのテーマを持った僕の個展。去年の最初のアルバム『EXAMPLE』は、まさしく〈お試し〉ってところだったんですけど、今回はより皮膚感、肉体性みたいなところを出したかったんです」。

 Cymbals解散後も、ウィットに富んだ洒落っ気のあるポップ・ミュージックをマイペースに作り続けている沖井礼二のソロ・プロジェクト、FROG。昨年8月のファースト・アルバムから1年経たずして届いたニュー・アルバム『Caricature』は、Cymbals時代から変わらない、どこか第三者的な視点でもうひとりの自分が曲を書き、自分をプロデュースしたような〈ひとりブリル・ビルディング的〉な作品だ。ソングライティングはもちろん演奏にも関わるが、ヴォーカルは青野りえ(aoyama)と新井仁(N.G.THREE、NORTHERN BRIGHT他)を起用するなど、決して沖井自身は前に出ようとしない。あくまでカラフルで躍動的で甘酸っぱい曲が主役だ。

「僕はモンキーズが好きなんですけど、それはモンキーズというプロジェクトそのものが好きなんです。一流のソングライターが曲を提供していて、メンバーの雰囲気も良くてって。あれが僕のひとつのロールモデルなんです。去年から今年の冬にかけて、RUNTSTARの高津哲也くんのソロ・アルバムをプロデュースしてみて、自分の次のソロ作をどうすれば良いか?ってことを考えてみたんです。で、改めて思ったのは、僕に関しては人格と音楽は別。僕自身はくだらない人間ですけど、音楽はそうでありたくないってことなんですよ。そういう意識でFROGにも向き合っている感じですね。僕は自分自身を投影した私小説を書けるような味わいのある人間じゃないんでね(笑)」。

 しかしながらニュー・アルバムの曲は、ザ・フーやセックス・ピストルズが好きでバート・バカラックやキャロル・キング&ジェリー・ゴフィンの仕事もリスペクトする彼自身の音楽趣味が、あくまでカジュアルかつ目線の低いまま仕上げられたキッチュな雑貨のような内容。実はTVCMソング制作なども多数こなしているが、一方でベースを抱えてエネルギッシュにステージに立っていたCymbals時代のイメージも、特に今回のアルバムにはよく出ている。

「そうですね。結局、どっちもやりたいというか欲張りなんです(笑)。折り目正しいポップ・ミュージックも好きだけど、僕にはジョニー・ロットンに最敬礼するのもある意味で折り目正しい行為。それを実践したいというのは常にあって、今回のアルバムに対してもそういう意識が当然働いたと思うんです。40歳になって、自分としてはそれなりにいろいろな音楽のスキルを身に付けてきている。なら、若い頃にはできないことをやらなきゃ歳をとった意味がないと思うんですよね」。

▼『Caricature』に参加したアーティストの作品を紹介

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年06月24日 18:00

更新: 2009年06月24日 18:21

ソース: 『bounce』 311号(2009/6/25)

文/岡村詩野