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インタビュー

EBONY BONES!

   革命って、こうやって信念と知性による小さな点からいつもスタートするのよね、と快哉の握り拳を上げたくなる。金髪アフロと腹や腕に巻いたドーナツ型のオブジェ、そしてゴージャスなスパッツというキュートな装いも素敵なエボニー・ボーンズ!。ファースト・アルバム『Bone Of My Bones』で聴けるサウンドの破壊力は、ジェンダーや人種や常識の壁を一瞬にしてブチ壊すほどだ。例えるならば〈一人スリッツ〉? もしくは〈ライオット版チックス・オン・スピード〉? レゲエやファンク、ポップスにパンクにヒップホップ……とさまざまなエッセンスを掛け合わせながら生まれた曲たちは、聴くうちに多彩な要素が一つのサウンド/価値観に集約していくのがおもしろい。そう、パンクだ。

 「クールな意見をありがとう。そういった意見は嬉しいわ。何しろパンクな女性アーティストよりも、なぜかラッパーと比較されることのほうが多いのよね。私自身はM.I.A.なんかのヒップホップ・アーティストよりもパンク・ロッカーに強くインスパイアされているのに!」。

 実は彼女、もともとは名門シェイクスピア・グローブ座での舞台やTVドラマなどで注目を集めた、シリアスからコメディーまで幅広く演じられるUK本国では名の知れた女優。とはいえ「我の強い性格だから女優は向いてない」とあっさり表現の場を音楽に移したという。

 「お金はたくさんあったけど、すごく孤独だったの。それで自分の持っているお金を音楽に注ぎ込んでみたのよ。いままで溜めてきたアイデアをたくさん集めて何かを実際に作るって、すご~く楽しかった!」。

 その結果、一銭も残さず音作りにすべて費やしたという潔さも最高だ。現在はバック・バンドも付いているが、当初はベッドルームに一人こもってコンピューターで制作していたそうで……。

 「他の人といっしょに作ると、自分らしくなくなってしまう気がしたのよね。プロデューサーのテイストが強くなってしまっては、意味がないと思ったの。音楽のベースになっているもの自体も私自身の経験や環境だし、とにかく私は自分がどこまで一人でできるかチャレンジしたいの。それに、メディアがアーティスト自身よりも男性プロデューサーをいちばんに話題にする傾向にも、疑問を感じていたしね。アーティストが女性だと特にそうなのよ。プロデューサーとかバック・バンドとか、とにかくそのプロジェクトに関わる男性を探して取り上げようとするのよね。それに対して誰も疑問を抱かないのはおかしいんじゃないかしら。だからすべて一人の女性、つまり自分だけで何かをやるってことに挑戦してみたのよ」。

 そんな彼女に早い段階から目を掛けていたのが、ベースメント・ジャックス(初ライヴは彼らのサポート)やスリッツ(ツアーで前座を体験)という、オーヴァーグラウンドに身を置きつつもクセのある面々。もちろんアーバン部族系とでも呼びたい、パンクでトライバルでキュートな彼女の曲はフロアで踊るのにぴったりだけど、多くのアーティストを魅了した歌詞も含む細部を追及するという聴き方もお忘れなく。

「音楽やアートって教育だと思うの。視聴者やリスナーに、いろいろなことに対する疑問を持ってもらうのよ、良い意味でね。現状や歴史の真実を伝えて、それを各々が自由に、自分なりに追求していくべきものだと思うわ。でも最近の音楽って、そういう自由やチャンスを奪ってる気がする。疑問を持つのを止めたら成長することは決してないし、成長が止まれば世界の動きも止まってしまう。その成長や動きこそが、ソサエティーを作ってるのにね」。

 う~、いちいち言うことが素敵。肝が据わってて、信念があり、目線は遥か彼方まで眺めていて……。揺るがぬ女は最高なのです。

PROFILE/エボニー・ボーンズ!

本名、エボニー・トーマス。82年生まれ、ロンドン出身のシンガー・ソングライター。12歳の頃に役者としてキャリアを開始。2002年から3年連続で〈ブリティッシュ・ソープ・アワーズ〉にノミネートされるなど国民的な人気を博すも、2006年に女優業を引退する。2007年11月に自主でファースト・シングル“We Know All About You”を発表。その後はヨーロッパ各国やUSでも積極的にライヴを展開し、口コミで話題を集めていく。2008年にロブ・ダ・バンク主宰のサンデイ・ベストと契約。今年5月にシングル“The Muzik”で本格的なデビューを飾り、このたびファースト・アルバム『Bone Of My Bones』(Sunday Best/BEAT)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年07月22日 18:00

ソース: 『bounce』 312号(2009/7/25)

文/妹沢 奈美