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インタビュー

Jazzin'park

日々を爽やかに吹き抜けていくメロディーと、ポジティヴなリズム――眩しい季節のサウンドトラックはこの一枚でキマリでしょ!

  ジャパニーズ・ハウス界の人気ユニット――Jazzin'parkをなんとなくそう捉えている人は多いだろうし、決してそれが間違った認識というわけではない。だが、その音をよく聴けば、彼らが巷の国産ハウス勢からは微妙にハミ出た存在だということがわかるだろう。共に作曲からプロデュースまでをこなす二人が紡ぐサウンドは、ダンス・トラックの枠を超えて洗練されたポップスとして成立しているし、多くの楽曲ではみずから歌って(!)さえいる。クラブ系ユニットというよりもシンガー・ソングライター・デュオ。あるいは職人作家コンビ? そんな特異な佇まいが、そのまま彼らの個性でもあるのだ。

「Jazzin'parkの音楽は、普段の生活のなかで聴いてもらえるものをめざしています。自分がDJでかけたい曲は、別にDJ用のヴァージョンを作ってますし、楽曲にもよりますけど、必ずしもフロアでの鳴りを褒められなくてもいいというか(笑)」(栗原暁)。

「最初は歌うつもりなんてなかったんですけど、自分たちで歌ってデモを作ってるうちに、曲によってはこのままでいいんじゃないかと。クラブ系のクリエイターで自分で歌う人っていないし。それで、作品を重ねるごとに歌う比重が増えていったんです」(久保田真悟)。

 このたび届けられた3枚目のオリジナル・アルバム『A DAY IN THE LIFE』には、そんな彼らのポップス志向がより大胆に横溢。多和田えみやRyoheiらを迎えた開放的なハウス・チューンを揃える一方で、メロウ・ソウルな“Gold Inside”やボッサ調の“Long way”など、ビートに縛られない楽曲も多くを占める。4つ打ちにドラムンベース、ダウンテンポまで揃えてます!みたいな幅の持たせ方ではなく、楽曲そのものに呼ばれるようにして、多彩なアレンジがごくごく自然に集まってきている感じが楽しい。

「僕らはメロディーを最重要に考えていて、曲を作るときも、まずそこからなんですよ。で、このメロディーにはこういうアレンジがいい……って作っていく。そうすると、意図しなくてもいろんな曲調になっちゃうんです」(久保田)。

 そうして丁寧に描かれたメロディーには、華麗にして緻密なコーラス・ワークが全編で絡まり合う。ソウルやジャズからの影響を色濃く漂わせるその複雑な響きは、昨今のダンス・ミュージックではなかなか聴くことのできないものだろう。スティーヴィー・ワンダーの名曲“Summer Soft”をカヴァーしていることにも、彼らのハーモニー・フェチっぷりが表れているように思う。

「二人ともコーラスがすごい好きだし、古いソウルとかのコーラス・ワークに惹かれるんです。他のシンガーの方に歌ってもらった曲に、自分らのコーラスを足しちゃうこともありますし」(栗原)。

「僕はパット・メセニーが大好きで、彼はギタリストだけど、作ってるのは決してギター・アルバムではない。いろんな要素が入っていて、音楽的に高度なことをやってる。そういうのが理想なんです。でも一方で、ダンス・ミュージックの気持ち良さも知ってるので、その2つをどうにかいっしょにできないかなあと。僕らのやってることは、そういうせめぎ合いですよね」(久保田)。

 最後に好きな日本のミュージシャンを訊いてみると、「キリンジ」(栗原)に「冨田恵一」(久保田)というお答えが。ウェルメイドなポップメイカーにして盟友でもある両者をそれぞれが挙げてみせるあたりに、Jazzin'parkの進む道が指し示されている気がする。

▼Jazzin'parkのプロデュース/リミックス曲を含む作品を一部紹介。

▼『A DAY IN THE LIFE』参加アーティストの作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年07月22日 18:00

ソース: 『bounce』 312号(2009/7/25)

文/澤田 大輔

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