次松大助
掲載: 2009年09月09日 18:00
更新: 2009年09月09日 18:16

今年4月、結成10周年の年に解散を発表したThe Miceteeth。でも、それはバンドのヴォーカル=次松大助にとって、ひとつの通過点に過ぎなかった。早くも彼が初のソロ・アルバム『Animation for oink, oink!』を完成。そこには新しい音楽と向き合う喜びが溢れ返っている。レコーディングをスタートさせたのはバンドが解散した4月だったそうで、つまり次松のなかで新たな音楽はずっと鳴り続けていたのだ。
「バンドの解散が決まった時、バンドに替わる(音楽活動の)メインになるものをやりたいと思ったんです。ピアノの弾き語りで箱っていうソロ・ユニットもやってましたけど、あれはバンドあってのユニットやったし。今回のアルバムでは整理されすぎてない、ある程度ゴチャゴチャしてても良しと思えるような音楽を作りたかった」。
アルバムを聴いてまず心を奪われるのは、色彩豊かな楽器の音色だ。ヴァイオリン、チェロ、フルート、サックス、ヴィブラフォンなどさまざまな楽器を織り込んだ、リッチなサウンドに舞い上がるメロディー。それは次松が以前から頭のなかに思い描いていたものだった。
「特にストリングスは、ずっと憧れのまま手付かずだったんです。たまたまThe Miceteethのメンバーの奥さんがヴァイオリンを弾く人で、何度かクラシックの話をしているうちに信頼関係も出来てきたんです。だから今回いっしょにやってもらおうと思って。そしたらこっちの考えてることを全部わかってくれて、すごくやりやすかった。今回参加してくれた人たちは、みんなそうでしたね。何も言わなくても、100どころか120くらいわかってくれてた」。
The Miceteethではバンドの編成を念頭に置いて作曲していた次松だが、ソロとなった今回は思うままに作曲できたのだとか。おかげで発見もいろいろあったようで、「例えば“St. Snorkmaiden street”を作っている時は、クラリネットとヴィブラフォンが重なると、こんなおもしろい音になるのか!っていうのを発見して、急にヴィブラフォンのフレーズを変えたり」──そうしたアンサンブルへの興味は、ここ数年よく聴いているアフロ・ジャズやクラシックからの影響もあるらしい。思えば彼がbounceで連載していたコラム〈踏切次第〉では、そういったアルバムを挙げることが多かった。
「あの連載で挙げたアルバムは本当に感動したものだけを紹介してるんで、今回のアルバムには間違いなく影響していると思いますね。それまでジャズとか全然聴いてなかったんですけど、ちょっと聴いてみたら、この和音に対してのこのメロディーは自分のなかからは出てこないなあっていうのがあって。それからジャズをちゃんと知らなアカンと思うようになったんです」。
使用する楽器も、音楽の幅もグッと広がった本作。それだけに選択肢も多かったが、そこでの迷いは一切なかったという。
「レコーディングで最終的なジャッジを全部自分ひとりに任せられることって、今回初めてだったんです。自分はB型で優柔不断なんですけど(笑)、イエス/ノーがすぐ判断できた。それは自分でも意外でした。〈そんなにハッキリ、自分のなかで(作りたい音が)決まってたんや〉って」。
そんなふうに、自分のミュージシャンとしての資質を再発見するレコーディングでもあった本作でめざしたのは〈純音楽〉だ。「カラオケで歌われたりとかする必要はなくて、音楽のための音楽」、そんな次松の気持ちの昂ぶりは、昂揚感に満ちたこのアルバムから十分に伝わってくる。では最後に、本人からアルバムについて感想を一言。
「近所の駅前の自販機に、明石家さんまのポスターが貼ってあって。そこに〈人生上々〉って書いてあるんですけど、そんな感じですね。上々なアルバム(笑)」。
さあ、パーティーは始まったばかりだ。
PROFILE/次松大助
79年生まれのシンガー・ソングライター。99年にスカ・バンド、The Miceteethのヴォーカリストとしてキャリアを開始。2002年にミニ・アルバム『CONSTANT MUSIC』でアルバム・デビュー。以降5枚のフル・アルバムを発表していく。バンド活動と並行して、2004年頃からピアノ弾き語りによるソロ・プロジェクト=箱をスタートさせ、小規模な会場でのライヴ活動や自主制作音源のリリースなどマイペースな活動を展開する。2007年に箱のファースト・アルバム『long conte』を発表。2009年4月にThe Miceteethが解散。その直後よりソロ・アルバムの制作を開始し、このたびファースト・アルバム『Animation for oink, oink!』(Pヴァイン)をリリースしたばかり。


