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インタビュー

黒木メイサ

  しょせん女優の歌手活動だろ?なんてツッコミを余裕で跳ね返す、本気と衝撃度に満ちた仕上がりとなった黒木メイサの新作『ATTITUDE』。全曲ダンス・ナンバーで攻めたファースト・ミニ・アルバム『hellcat』からわずか数か月で歌唱力は飛躍的に向上し、ダンサブルはダンサブルでも音はより洗練されたものに。気鋭のU-Key zoneがMOMO“mocha”N.とのコンビで全曲を手掛けた本作には、イマドキの着うた系ポップスとは一線を画す、鮮烈な楽曲が並んでいる。

 「いま自分が思ってることを歌っていくっていうのは『hellcat』から変わらないんですけど、音を聴いてくれた人たちが〈おっ!〉と反応してくれるような新鮮さのあるものにしたかったんです。あと、いまは〈泣きましょうソング〉が多いけど、そうじゃないところをやりたくて。例えば“#1”は、〈二番目でいいからあなたの側にいさせて〉みたいな歌をたまたま聴いて、それはありえないでしょ?ってMOMOちゃんとガールズトークして作った歌なんです」。

 対人関係のストレスをテーマにしたリード曲“Are ya Ready?”は、挑発的な歌詞とぶっといキック音にトバされること必至のナンバー。人との付き合いに摩擦は付きものだが、だからこそ本音でぶつかり合いたいという彼女の生き方がこの曲に表現されている。

 「これは凄く踊りやすいし、アガる曲になったなって思ってます。私は必要以上に気を遣われるのがイヤで、特に身内の人に心を探りながら来られるのが凄くイヤなんですね。本音でぶつかるのがそんなに怖いのか?っていう歌詞は、そういう付き合いを求めるからこそ、自分に対しても言ってるんですよ」。

 この曲や、〈好き放題カキコみ/ストレスちょっと解消しましたか?〉なんてフレーズが飛び出す“Stand Up”など、基本的に彼女は音も言葉も攻め姿勢。だが、“Kind Of Guy”は少しコミカルな軽さもある新境地だし、ミッド曲“Late Show”では〈お気に入りのシーンはなぁに?〉〈その場面巻き戻しPLAYしてあげる〉と、前作に収録されていた“SEX”の上を行くセクシーさで悩殺する。

 「前の曲は“SEX”というタイトルをつけておきながらちょっと幼稚な感じがしたんです。でも、今回はチラリズム的な感じがあって、ちょっと大人になったかな。全裸でいる女性を見るよりチラリズムのほうが男性はドキドキするっていうじゃないですか(笑)。だから“SEX”のほうが全然裸で、今回はセクシーな下着をつけてる感じ。そういうイメージがありますね」。

 ラストに置かれた初のスロウ・ナンバー“Awakening”も注目曲。これは過ぎ去った恋を想う切ないラヴソングとも解釈できるが、彼女には他に特別な思いがあった。

 「私、2009年5月に父親を亡くしていて、この歌詞を貰った時はもう父親のことしか考えられなかったんです。これまではテンポの速い曲を歌ってたから気持ちも前のめりになってたけど、これはゆったり、ゆっくり、詞と音楽に気持ちを重ね合わせて歌ってました」。

 とにかく今回は歌うのが楽しかったという彼女。CDデビューした時からブログを始め、リスナーと繋がりが持てるようになったことも音楽に対する姿勢に変化を起こしたようだ。

 「正直、『hellcat』の時は〈私はこう行くわよ、放っといて〉っていう感じだったんです。だけど、今回はリスナーに向けて歌うようになったし、そうやってみんなに自分の〈姿勢〉を見せて何かを伝えようとするんだったら、まず自分の〈姿勢〉を正しておかないと、っていう意味で『ATTITUDE』というタイトルにしたんです。それに今回は、全曲レコーディングする日が日常の出来事とか思ってることにドンピシャで、凄く不思議な、というか絶妙なタイミングで歌えたんですね。なんかもう〈幸せだなあ……〉って思って泣けてくるくらい(笑)。それくらい楽しみながら、幸せを感じながら作れたアルバムなんですよね」。

PROFILE/黒木メイサ

88年生まれ、沖縄出身の女優/モデル/シンガー。幼い頃から歌やダンスのレッスンに励み、中学2年生の時にスカウトされてモデルとしての活動を開始。ファッション誌やTVCMを中心にして徐々に活動の場を広げ、舞台やTVドラマ、映画などで女優としても脚光を浴びるようになる。2007年にはゴールデン・アロー賞の新人賞を獲得。2008年に配信限定で“Like This”を発表してシンガー・デビューを果たす。その後もレコーディングを進め、2009年1月に自作曲も含むファースト・ミニ・アルバム『hellcat』をリリースする。同年9月にはシングル“SHOCK-運命-”を発表。さらなる注目を集めるなか、2010年1月1日にセカンド・ミニ・アルバム『ATTITUDE』(ソニー)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年01月06日 18:00

ソース: 『bounce』 317号(2009/12/25)

文/猪又 孝