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インタビュー

TWO DOOR CINEMA CLUB 『Tourist History』

 

 

ミュージック・レーベル、ファッション・ブランド、アート集団などさまざまな顔を持つキツネ。音楽面だけを見ても注目度は高く、例えばシミアン・モバイル・ディスコやクラクソンズ、デジタリズムのシングルを初めてリリースして、ニューレイヴ・ムーヴメントの下地を用意したのはキツネだった。まさに狐のように鼻の利く彼らがアイルランドで嗅ぎつけた新たな才能、それがトゥー・ドア・シネマ・クラブだ。幼馴染みの3人によって結成されたこのバンドは、トリオながらドラムレスというユニークな編成。打ち込みやサンプリングのビートとギター・サウンドの融合から生み出されるマジックが、ファースト・アルバム『Tourist History』にはたっぷり詰まっている。

「僕らが最初に思い描いていたより、はるかに良いものができたと思う。結成以来、2年間の間に書きためてきた曲で、僕らが気に入っている曲すべてをアルバムに入れたんだ」(サム・ハリデイ)。

「スタジオで本格的にレコーディングするのは今回が初めてで、時間が許す限りいろんな実験をしたんだ。アナログの古いシンセや機材がスタジオにあったから、これまで僕らがほんとに出したかったサウンドを作り出すことができた」(アレックス・トリンブル)。

3人の知り合いにドラマーがいなかったという単純な理由で、ドラマー不在のままでバンドをスタート。とりあえずドラムをラップトップで代用しているうちに「最初は違和感があったけど、そのうちにすごく気に入ってきた」(アレックス)とか。少しずつ磨き上げられたビートメイキングは、本作でさらに進化を遂げている。

「いままでずっとドラム・マシーンだけでやってきたけど、どこか無機質で堅苦しいビートだったんだ。だから今回は生のドラムの音をサンプリングして、もっとバウンシーで踊れるビートにしたかった」(ケヴ・ベアード)。

「これまでもダフト・パンクとかホット・チップなんかは好きだったけど、キツネといっしょに仕事をするようになって、よりダンス・ミュージックを聴くようになったんだ。彼らからダンス・ビートの作り方をいろいろ学んだ部分はあったと思うな」(アレックス)。

シャープなギター、スウィートなメロディー、そして、ダンス・ミュージックを吸収した躍動感溢れるビート。ビートにナマっぽいテイストが増したことで、タイトなバンド・アンサンブルがくっきりと際立って、聴けば聴くほどバンドがライヴ・サウンドを大切にしていることもよくわかる。

「ライヴ感は大事にしたよ。バンドのありのままで演奏しているような雰囲気を捉えたかったから、できるだけ生な感じを残すようにしたんだ。バンドを始めた時から、僕らはライヴで演奏するというのがいちばんの楽しみだった。だからその楽しみを、いろんな人たちと分かち合えるようなアルバムにしたかったんだ」(アレックス)。

でも何よりメンバーの3人が、音楽をプレイする喜びを分かち合っていることがよくわかる。子供の頃からいっしょに育ってきた仲間だからこその相性の良さも、バンドにとっての大きな武器に違いない。

「確かにそうだね。例えば曲を作る時って、どうしてもパーソナルなものを赤裸々に表に出さないといけない。でも、この3人なら何でも話し合えるし、お互いに心が裸でいられる。そういうところで得をしてる部分は大きいと思うな」(ケヴ)。

お互いに強い信頼関係があるからこそ、ドラマーがいないという弱点を強みに変えることもできる。音楽という絆に支えられて、3人はいまロック・シーンの最前線へと走り出した。

 

 

PROFILE/トゥー・ドア・シネマ・クラブ

アレックス・トリンブル(ヴォーカル/ギター/シンセサイザー)、サム・ハリデイ(ギター)、ケヴ・ベアード(ベース)から成る3人組。2007年に北アイルランドで結成される。ライヴ・パフォーマンスが評判となってキツネとの契約に至り、2009年4月にシングル“Something Good Can Work”でデビュー。同曲はコンピ『Kitsune Maison Compilation 7』への収録でも脚光を浴びる。11月に“I Can Talk”、今年2月に“Undercover Martyn”とコンスタントにシングルを発表。並行してフェニックス“Lasso”などのリミックスも手掛けていく。〈BBC Sound Of 2010〉への選出でも注目を集めるなか、ファースト・アルバム『Tourist History』(Kitsune/Kitsune Japon)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年02月17日 17:59

更新: 2010年02月17日 18:05

ソース: bounce 318号 (2010年2月25日発行)

インタヴュー・文/村尾泰郎