インタビュー

レ・フレール

一台のピアノを二人で連弾するという独自のプレイスタイル、名付けてキャトルマン・スタイルで知られる兄弟ピアノ・デュオ、レ・フレール。勢いに乗る彼らから届いた最新作は、クリスマスの名曲をカヴァーしたスペシャル・アルバムだ。様々なテイストをレ・フレール流にアレンジした名曲が詰まった、誰が聴いても楽しめる一枚となっている。

「クリスマスはもちろんのこと、一年中、聴いていただきたいですね。クリスマス・シーズンに聴くだけではもったいないアルバムだと思っています(笑)」(兄・守也)

その言葉通り、おなじみの曲を驚くほど新鮮に聴かせるお手並みが実に鮮やか。《レット・イット・スノー》は彼ららしいブギウギ、《シルバー・ベルズ》はブルースにゴスペル風味を効かせ、《ホワイト・クリスマス》はボサノバと、まるでカラフルなキャンディ・ボックスのように、異なる味わいがぎっしり詰まっている。

「《ウィンター・ワンダーランド》はロックステディをイメージしていますし、《ジングル・ベル》は一瞬、何の曲かわからないかもしれません。ドイツ民謡の《楽しく陽気にいこうよ》も、元はスローな曲調で単純なメロディなんですが、あえて超高速で弾いています。そんな僕たちらしいアレンジを楽しんでいただけたら嬉しいです」(弟・圭土)

興味深いのは、選曲もアレンジの仕方も、意見が衝突することなく、すんなり決まったという点。兄弟アーティストならではの〈あうん〉の呼吸だろう。

「クリスマスの思い出といえば、7人と姉弟が多かったんですが、子どもたちから親へのプレゼントとして、毎年、演奏会や劇をやっていました。一カ月くらい前になると、姉が号令をかけて準備が始まるんです」(圭土)

「そういえば、朝練もあったなあ(笑)」(守也)

「あった、あった。どんな内容か、当日まで内緒だったから、両親が起きる前に集合したんだよね」(圭土)

「大切な、いい思い出です。考えてみると、あの発表会が原点になったのかもしれません。両親が喜んでくれて、演っている僕らも楽しかった。そうした経験が、音楽で活動するうえでの大きな自信になっているんだと思います」(守也)

高度なテクニックを駆使し、音楽通をうならせている二人。一方で、音楽にそれほど詳しくない聴き手の心をも鷲づかみにしてしまう。その魅力の秘密は、どうやら斎藤家のあったかい思い出に答えがありそうだ。

「観ている立場であれ、演奏する立場であれ、会を一緒に過ごす時間が、とにかく楽しかったな。今度は、ライヴでお客さんと楽しい時間を過ごしたいです」(圭土)

心躍るレ・フレールのクリスマス・ソングたち。聴いた人全てに、幸せなひとときを運んでくれるだろう。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年02月18日 14:21

更新: 2010年02月18日 14:38

ソース: intoxicate vol.83 (2009年12月20日発行)

interview & text : 中沢明子