矢野沙織
高校生でサックス奏者としてデビューした、現在23歳の女性プレイヤーが、日本のジャズ・シーンの中でもっとも注目を浴びているビバッパーであること。よく考えてみると驚くべきことではある。矢野沙織の最新アルバム『BEBOP at the SAVOY』はNYレコーディングのオルガン入りストレート・ジャズ作だ。
「サヴォイ・レーベルのアーティストであることをすごく誇りに思っていて、毎回アルバム・タイトルに〈Savoy〉の文字を入れて欲しいと言ってきたんですが、今回ようやく実現しました。選曲も私自身がしまして、《ファイヴ・スポット・アフター・ダーク》などのジャズの黄金時代のサヴォイの名曲を入れました」
内容的にビバップにこだわる理由は?
「デビューして7年間ビバップをやり続けている理由はビバップを知らない若い世代に、これがジャズなんだよ、と知ってもらう責務を同じ世代であるわたしが背負っていると思うからなんですね。年齢的に自分がクラブ・ジャズをやるのは変ではないかもしれないですが、ビバップをやるのはそういう意味があるんだと。とはいえ私もビバップの曲を知ったのはジャコ・パストリアスがチャーリー・パーカーの曲をやっていて…、という誰かを通してだったので、私もその誰かになれるといいと思います」
今回のアルバムはジム・ロトンディ、パット・ビアンキ、ランディ・ジョンストン、そして田井中福司というNYを本拠にする実力派の面々がそろっている。
「オルガン入りのアルバムはこれまでも何枚か出してきています。メンバー集めは田井中さんのお力によるものです。すごくみんなに慕われていて。おかげで大変いい雰囲気でレコーディングは進みました」
50年代~60年代のジャズ全盛期の曲をメインに取り上げ、ボーナス・トラックに今回唯一のオリジナル曲《Laura Peacock ~ 太陽の船のテーマ》を収録。
「曲を作るのは好きです、時間はかかりますが。ちなみにオリジナル曲をビバップみたいな曲にするつもりはないです。ビバップってある時期に最盛期を迎えた音楽のひとつの形で、完成されたものだと思います。オリジナルは自己を表現していくための手段ですから。今回収録のオリジナル曲は斉藤ネコさんにお手伝いしていただいて出来上がったものです。以前は自分のアルバムの中で昔のビバップと自分の曲を並べた時に、曲の感じが全然かみ合っていないなと思っていたんですが、今はそれでもいいんだと思っています」
一貫してビバップ、これからもそうかもしれない。だが、まだ20代前半の彼女ゆえ、進む未来は大海原のように広がっている。
「何かを作ろうと思うなら、斉藤ネコさんと今度は、江戸川乱歩の世界をやってみたいですね。実は昔の文学が大好きで。山崎バニラさんの大正琴や上妻宏光さんの三味線を入れてみたりして」
ライヴ・インフォメーション
『BEBOP at the SAVOY』
2/20(土)福井・大野市文化会館
2/21(日)福井・パレア若狭
3/6(土)茨城・常陸大宮市文化センター
3/19(金)兵庫・兵庫県立芸術文化センター
3/20(土)愛知・愛知県芸術劇場小ホール
3/21(日)静岡・月見の里学遊館うさぎホール
3/27(土)東京・shibuya duo music exchange
出演:矢野沙織(sax)河合代介(org) 細野よしひこ(g) 田井中福司(ds)
http://www.yanosaori.com