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インタビュー

小原孝

NHK『趣味悠々 指1本から始める小原孝の楽しいクラシックピアノ』やFM番組『弾き語りフォーユー』でもお馴染のピアニスト、小原孝が詩人にテーマを当てたCDをリリースしている。第1弾は阿久悠の作品を集めた『小原孝のピアノ詩集〜また逢う日まで』(2008 年)、そして第2弾となる岩谷時子作品を集めたCDが出る。

「もともと歌の〈詩〉の世界が好きで、そのポエジーからインスピレーションを受けてピアノを弾く『ピアノよ歌え』シリーズを作ってきました。さらに深く詩の世界を表現したいと思うようになって、まず阿久先生の作品を取り上げたのです」

阿久と仕事をした時に「君は日本語でピアノを弾くことが出来る珍しいピアニストだね」と言われたことも、小原を励ました。そして今回は岩谷時子をテーマにした。

「越路吹雪さんの歌うシャンソンの訳詩を手掛けられていることは以前からよく知っていたのですが、今回、改めて調べてみると、この作品も岩谷先生の詩だったのかと驚くほど幅広い世界がありました。テレビドラマの主題歌《サインはV》とか、沢田研二の隠れた名曲《君をのせて》とか、もちろん加山雄三さんの作品も。どの作品をアルバムに残すかが本当に難しかった」

その録音過程もちょっと変わっている。

「まず、その作品の詩の世界をじっくり自分の中で味わって、だいたいのアレンジのプランを持ってスタジオに入ります。楽譜は書かないんです。スタジオでピアノを弾き、録音したテイクを聴いて、また弾き、という作業を何回か繰り返して、その中で良かったものをまるごとワンテイク採用します。というのも弾くたびに違うので、編集が出来ない」

それを楽譜にして出版もするが、その時にも採譜をしてもらい、さらに自分で楽譜をチェックするという作業を行うので、かなり時間を取られるという。

「しかも音符だけでなく、★とか三角とか図形を使った部分もあります。そこはもう演奏者の自由に弾いて欲しいということで、あえてそういう形にしています」

今回の岩谷作品の場合は、名曲《ろくでなし》も取り上げられているが、CDの演奏ではかなり大胆な音も出てくる。それが楽譜でどう表現されるのかも楽しみだ。

「僕がピアノで歌を表現するのは、その音楽を聴きながら、歌詞が口をついて出てくるという瞬間を味わって欲しいからなんです。呟きでも良いけれど、あ、こんな歌詞だったよねとふと思い出す。歌を知っている人にはそんな風に楽しんで欲しいし、歌を知らない世代には、こんな素晴らしい詩があったんだなと知ってほしい」

本格的なクラシック・ピアニストでもありながら、ピアノの表現の可能性に向かいあって来た小原孝。今年はなんとCDデビュー20周年を迎える記念の年でもあり、さらなる活躍が期待される。

 『小原孝コンサート情報』
2/25(木)26(金)朝日ホール「モリー先生との火曜日」
2/28(日)つくば 小原孝ピアノコンサート
3/2(火)〜7(日)銀座博品館 中島啓江・夢で逢いましょう
13(日)東京オペラシティー 東北大学OB合唱団
17(水)STB139 小原孝ピアノコンサート 他
http://www2.odn.ne.jp/~cau57200/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年02月25日 16:14

更新: 2010年02月25日 16:24

ソース: intoxicate vol.84 (2010年2月20日発行)

INTERVEW&TEXT : 片桐卓也