インタビュー

Luis Nanook

二つの才能が溶け合って生まれた、新しい歌のかたち

シンガー・ソングライターの佐立努と、電子音楽ユニット、opitopeとして活動する畠山地平が結成した新ユニット、Luis Nanook。最初に声をかけたのは、佐立の歌とギターに魅了された畠山だった。

「彼のヴォーカルとギターのスタイルがすごく好きだったんです。まず歌声が中性的というか、男性的なものと女性的なもの、両方を兼ね備えている。エレクトロニクスとヴォーカルというスタイルだと女性ヴォーカルが多いんですけど、彼の声だったら電子音とすごくマッチングするんじゃないかなと思ったんです」(畠山)

何度も打ち合わせをして、サウンドの方向性を探っていった二人。その途中で方向性を見失った時、ライヴ活動をしたことが新しい可能性をもたらした。

「なんか自由になった感じがありましたね。それまでは曲を作って録音していたんですけど、ライヴでは曲がだんだん崩れてきて、そこに折り重なっているいろんなものが見えてくるようになった」(佐立)

「例えばアルバムに入っている《Seeds》は、最初のレコーディングではカッチリ録ってたんですけど、二人ともなんか違うなあ、と思ってて。でもライヴで彼がギターと歌、僕がラップトップを同時に演奏したら、間の感じとかがすごく良かったんですよね。だからレコーディングでも、もっとライヴ感を出していいんだって気がついて録り直したんです」(畠山)

ライヴ感を大切にしつつ、できるだけ佐立のヴォーカルにフォーカスして音を作り込むことで、歌とトラックはよりオーガニックに溶け合っている。「できるだけ自然に、普段生活している時みたいに」歌う佐立に合わせて、畠山の音作りも変化していった。

「最初はいかにもエレクトロニカな音もありかな、と思ってたんですけど、結局そういうものは止めました。音の素材としては全部、生楽器のものであったり、皿を洗ってる音とかの生活音が入ってるんですよね。宅録なんで偶然的に入ってしまう音とかもあって、そういうのもあえて削らずに入れました」(畠山)

二人の生活、二人の息遣いが細やかにレイヤーされて生まれたサウンド。二人の対等で濃密なコラボレーションなしには、今回のアルバムは生まれなかった。

「誰かと一緒にやるっていうのは初めてだったんです。人とやることで、ソロと同じようなことをしてるつもりでも違うんだな、というのをすごく思いました。広がっていく感じがすごく面白かったです」(佐立)

ちなみに〈ルイス〉はアルメニア語で〈光〉、〈ナヌーク〉はイヌイットの言葉で〈シロクマ〉のことだとか。二つの異なる言葉が組み合わさることで新たなイメージが立ち上がってくるように、佐立の歌とギターが畠山のサウンド・プロセッシングと溶け合うことで生まれた新しい歌の風景、それが『プレイス』だ。

 

『Luis Nanook Live Information』2/24(水)open 18:00 / start 18:30
会場:月見ル君想フ(青山)
『Luis Nanook 『プレイス』リリースパーティ』
4/29(木・祝)open 18:00
会場:EATS and MEETS Cay(Spiral B1F)
http://www.luisnanook.com/
http://www.flyrec.com/

 

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年03月17日 18:03

更新: 2010年03月17日 18:10

ソース: intoxicate vol.84 (2010年2月20日発行)

interview & text : 村尾泰郎