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インタビュー

INTERVIEW(4)――歌詞は情景描写みたいなもの

 

歌詞は情景描写みたいなもの

 

――詞と曲では、どちらが先ですか?

藤崎「全部、曲です」

深瀬「ポップであることが大前提だと。誤解を恐れずに言うと、歌詞はおまけだと思ってるんです」

――じゃあこのポップなメロディーから、このメロディーにはこの歌詞と。

深瀬「そうですね。このぐらいポップだったら、このぐらいポップじゃないことを言っても大丈夫だろうぐらいのテンションで(笑)言ってますね」

――いまの話を伺った限りでは、歌詞はとても個人的なことを書いているということですよね。でも受け手の感触は、よりファンタジックでグローバルなものだと思うんです。そこに個人を投影してる?

深瀬「そうですね。僕の生活そのものを書いてます。誤解されるのはしょうがないと思うんですけど、“虹色の戦争”とかはそのへんを散歩してるような曲で。電気屋さんの前を通りかかると、〈世界が平和でありますように〉〈地球を大切に〉じゃないですけど、〈No War〉みたいなデモ行進の映像が流れていて、それから公園に寄ると、虫を捕まえてカゴに入れてる子どもとか、お花畑で花を摘んでる人がいる。その公園にはカラスを駆除するような箱……罠があって、そこにはいっぱいカラスが入ってて、一回入ると出られない、みたいな。で、そういうのを見た時に聴いていた音楽が、〈世界が平和になりますように〉〈どうして私たちは傷つけ合うんだろう〉みたいなもので……僕、それに対して怒りとかはまったく覚えないんですけど、漠然と違和感を感じたな、と」

――そう言われると、なるほどな、と思いますね。日常のなかに存在する矛盾に気付けるかどうかが問題であって、ここに書いてあることは、単なる個人的な日常だと。

深瀬「そうですね。まさにそんな感じで。叫ばないんで、僕、歌う時に。感情的に歌わない。僕はそう思ってるだけだ、ってことを、歌い方で表現している。藤崎が僕のヴォーカルのプロデューサーなんですけど、〈そんなに感情込めたらダメだよ。そんなに叫びそうになってたら、君がそれを正しいと思って叫んでるみたいじゃん。ただ思ってるだけなんだったら、もっと抑えて歌わなきゃダメ〉って。だから」

藤崎「叫ばなかったね」

深瀬「叫ばなかったです」

――正しいとか正しくないとかじゃなくて、そこにあるものをそのまま書いている。

深瀬「言ったら情景描写みたいなもんなんですよ。〈世界〉という言葉を使うからには、そこには虫や花や動物や魚も入れないと、っていう、僕的な辞書があるというだけで。で、辞書にメッセージ性はないですし。なんか、〈worldism(世界主義)〉っていう言葉があるんですけど、意味をネットで調べてみたら、〈人類至上主義〉みたいなことが書いてあって、〈なんじゃこりゃ?〉って思って。僕の辞書(笑)では、〈世界〉は〈人類〉という意味ではありません、〈世界〉って書いてあるところに赤線をひっぱって〈人類〉と書き加えて、〈人類主義〉に変えないと、意味が違ってます、っていう。世界主義=人類主義ってことは世界=人類ってことで、じゃあみんな、そう言われたらどう思うのかな?って。〈世界って人類っていう意味?〉って訊いたら、みんな〈違うでしょ〉って言うと思うんですよ。だけど、そうやって使われちゃってる現状があるっていうことを、僕がそのままレポートとして提出する、みたいな感じですね」

――おもしろい(笑)。すごく理解できました。じゃあこの歌詞を読んで、他のみなさんは、彼らしいな、って思います?

藤崎「そうですね。歌詞に書いてあることは、普段話してることだな、って思います。それをすごくポップに、誰にでもわかる言葉で表現してる。深瀬はいつも、自分の妹からお婆ちゃんまで伝わるような歌詞にしたい、って言ってるもんね?」

深瀬「うん。作詞っていうのは、大衆に対する言い方に変換するっていう作業ですね」

 

カテゴリ : ニューフェイズ

掲載: 2010年03月31日 17:59

更新: 2010年03月31日 21:40

インタヴュー・文/土田真弓

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