AOKI takamasa
宇宙のシステムがループして、羊が上から見下ろした!
コンピュータ/ソフト・ウェアをベースとした音響表現をいち早く実践し、高木正勝とのユニット、シリコムで鮮烈なデビューを飾ったAOKI takamasa。その後、不規則なビートが規則的に並ぶさまが印象的なソロ作品を経て、Tujiko Norikoとのコラボ、これまで歩み寄ることのなかった4つ打ちの導入、そして2008年の『Private Party』における真新しい電子ファンク解釈など、常に高い意識を維持しながら前進・拡張を続けてきたAOKI。そんな彼が、これまでの音源とセルフ・リミックスを収録した初のリミックス集を発表した。
AOKIいわく「完成というスイッチを押されたと同時に一生回り続ける永久機関、宇宙のシステムのようなループをつくりたい」という構想、その質感とタイミングは、2003年のスケッチ・ショウ 《Mars》のリミックスから、2009年のセルフ・リミックスまで一貫している。
「できる限り自然なバイオリズム、物理法則にかなったタイミングで音を鳴らす、ということをずっとやっていたので……人の曲を自分が求めているフラクタルなバイオリズムに落としこむ、という意味でリミックスじゃなくフラクタライズ。そういう発想です」
収録楽曲は、HASYMO、スケッチ・ショウ、坂本龍一に半野喜弘と、これまでのAOKIの確かな歩みを象徴する、つまるところ偉大な音楽家のものばかり。
「日本の音楽を引っ張ってきた方々の威力は、僕にとってロケットのブースターみたいなもの。その一部を使わせていただくことで、本来行けないところまで飛ばしてもらえるんです。〈ありがとう〜!〉って感じで(笑)」
原曲へのリスペクトと独自の手法による〈相乗効果〉。そのねらいは坂本龍一の《composition 0910》において、穏やかながらも爆発的な創造のピークを迎える。
「2ヶ月間くらい何も出来なかったんですよ、原曲の完成度が高すぎて。すごく悩んでいた時にちょうど坂本さんの撮影の仕事をいただき、目の前で演奏を見たんですが、原曲と全然ちゃうんですね。その時のバイオリズムで、まさにタイミングで弾いておられて。あ、これやと思ったんですよ。原曲のリズムを自分のバイオリズムに落としこむだけやと。そこからは一瞬で出来ましたね」
今後はラスター・ノートンからのアルバムも予定されているというAOKI。踊りを大前提に、ポップに包まれた批評性と世界への温かな眼差しを宿した彼の音楽。そこから浮かび上がるものは、彼の弁のように明快である。
「出来る限り人が人を殺し合わない状況を。そういう理想を音楽にこめています。その波紋が世界中に広がり、そういう人が少しでも増えていけばもっと大きな動きになって……で、人が人を殺し合わない次のレベル、僕はそれが進化だと思うんですけど、そのレベルにいくようなひとつのいい流れに参加できたら最高やなぁと」
「地球、変わりますように」