インタビュー

映画『アリス・イン・ワンダーランド』 ティム・バートン監督 インタヴュー

「撮影中はレッド・ツェッペリン、ピンク・フロイドをしつこく聴いていたね」

ちりちりの髪はかなり白いものが混じってきたが、黒装束、黒メガネに身を固めて会見に登場したティム・バートンは51歳とは思えないしなやかな動作を見せる。父親が大リーグ選手だったせいだろうが、とかく芸術的奇才は動きが鈍そうだから、彼の機敏性にちょっと眼を見はってしまう。

「世界中のスカウト・ネットワークを行使してアリス役の若い女優を探し、やっと集めた200人から8人、そして2人にしぼりこみ若々しいのに、どこか老いた魂を感じさせ、好奇心と賢さにあふれたミア・ワシコウスカに決めた。彼女が現れなかったら映画のインスピレーションが半端になって、満足のゆく作品にはならなかったろう。

マッド・ハッター役には当初からジョニー(デップ)がやりたい、やりたいと名乗り出て、自分で描いた水彩画のイメージを持ってきたら、なんと私のアイデアとほとんど同じだった。長いこと一緒に行動すると似た者同士になるというが、これには仰天したね。ネオン・グリーンが四方を囲んだスタジオで、それぞれが、棒切れにつけたテニスボールを動物たちと思って演技をしてくれ給えと頼んだのだが、出演者もクルーもネオン色にイライラしたり、吐き気を催したりで苦労したのだよ。

3Dにしたのは『不思議の国のアリス』は、体が伸びたり縮んだり、ウサギの穴から落っこちたり、トランプの女王が騒ぎまわるなど、観ている人の顔めがけての急な動きが効果的だし、とにかく楽しいと思ったから。『アバター』は忙しくて観ていないけれど、凄いと思う。僕はテクノロジーにのめり込んだりせず、適当に利用し、基本的には面白くて、奇抜な映画を創りたいだけ。アイデアは夢の中から出てきたり、空想している時に、白黒だったり、極彩色だったり、どうも滞在している都市によって色合いが変わってくるのだよ。

原作者のルイス・キャロルがクスリを使って書いたのではないかと言われるが、僕もクスリは使わないけれど、変テコなことばかり考えているから運命の結びつきを感じる。制作のディズニーは僕の毎日のように変わるアイデアと僕を取り囲む奇人、変人のたぐいを信頼して、思うような映画が出来て、大変にうれしい。外から見たら、頭がおかしい科学者連中に見えただろうから。

今回は、よく知っているダニー・エルフマンに作曲を頼んだが、撮影中はレッド・ツェッペリンやピンク・フロイドの《ザ・ウォール》をしつこく聴いていたね。ちょうど20年前にジョニーとはじめて会ったのだが、ティーンのアイドルにあきたらない彼にシザーハンズの役が最高にフィットすると分かって、それからもう7本目のコラボなのだなぁと感心してしまうよね。コーヒーショップで会って、8杯もお代わりをして、お互いにあれ程、コーヒーを飲んだのはあとにも先にも、あの時だけだね、なんてなつかしがっているのだよ」

 

映画『アリス・イン・ワンダーランド』 
監督:ティム・バートン
原作:ルイス・キャロル 音楽:ダニー・エルフマン 出演:ジョニー・デップ/アン・ハサウェイ/ヘレナ・ボナム=カーター/クリスピン・グローヴァー/マット・ルーカス/ミア・ワシコウスカ 配給:ウォルト・ディズニースタジオ モーション・ピクチャーズ・ジャパン(2010年 アメリカ)
◎4/17(土)より全国ロードショー
© Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

http://www.disney.co.jp/movies/alice/

 

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年04月27日 20:38

更新: 2010年04月28日 11:15

ソース: intoxicate vol.85 (2010年4月20日発行)

interview & text:成田陽子