インタビュー

Vassilis Christpoulos

意欲的プログラムをひっさげ手勢と初来日!

1932年にドイツのコンスタンツに設立された南西ドイツ・フィルハーモニー交響楽団。伝統あるこのオケを率いるヴァシリス・クリストプロスは、オーボエ奏者である父同様に、はじめはオーボエ奏者としてアテネ放送響でのキャリアをスタートさせたのち、指揮者に転じた。

「子供の頃ピアノとヴァイオリンをはじめ、オーボエはそのあと、6歳ではじめました。15歳からオーボエに集中し、95年からミュンヘン音大のヘルマン・ミヒャエルについて指揮を学びました。彼からは音楽に直接関係することはもちろん、どうコミュニケーションしつつリハーサルをすればよいかなど、実際的なことも様々に教わりました。最初からプロのオケを振れたのも、いい経験になりましたね」

レパートリーは、交響曲からオペラ、スカルコッタスやテオドラキスといったギリシャ近現代音楽まで幅広い。

「テオドラキスは第二次大戦中にレジスタンス活動で投獄され、1960年代には軍事クーデターで再び投獄されました。その時、彼は歌曲を多数作曲しました。当時ギリシャで彼の作品は発禁でしたが、旋律が美しいのでとても有名になりました。音楽を通し、ギリシャの最も重要な文学作品たる、リッツォスやカヴァフィスといった優れた詩人たちの作品に曲をつけたのは、テオドラキスの最も重要な功績の一つです」

そんなクリストプロスだが、手勢を率いた初めての日本公演のプログラムは、1778年から1788年までの10年間に書かれた、モーツアルト後期の交響曲、都合12曲を3夜で演奏するものだ。その中には、ポストホルン・セレナーデの改作である作品番号のない交響曲や、序奏だけモーツァルト作で、その後はミヒャエル・ハイドンの作品たる交響曲第37番という、演奏機会のあまりない曲も含まれている。

「第39番から第41番までの最後の3曲は、それぞれ独特の特徴を持っているので、それぞれ演奏会のクライマックスとして、3つの演奏会の最後に配しました。それから、各曲の性格、調性の相性やコントラストなどを考えました。たとえば第3夜の交響曲第41番の前の第32番は単一楽章で短く、41番ハ長調の属調=ト長調ですから、41番へのアウフタクトのように響くでしょう」

こうした音楽を奏でることになる南西ドイツ・フィルは、ホルンとトランペット以外はモダン楽器を用いている。

「陸路が使える欧州ならばナチュラルホルンやトランペットを用いますが、今回は長距離移動なので、運搬を考えると、今公演で使えるかどうかは、もう少し考えたいと思います。いずれにせよ、私たちにとって今回のツアーは非常に大切で、非常に楽しみにしています。この公演のために、何ヶ月間にもわたり演奏会でモーツァルトを演奏し、理解を深めてゆく研究過程も重要でしたし、このツアーは大きな挑戦です。私たちのオケとともに、聴衆のみなさんに喜んで頂ければ幸いです」

 『モーツァルト/ザ・テン・イヤーズ・シンフォニーズ1778-1788』
ヴァシリス・クリストプロス指揮 南西ドイツ・フィルハーモニー交響楽団
6/8(火)交響曲 第31番 ニ長調K.297「パリ」/第38番 ニ長調K.504「プラハ」他
6/9(水)交響曲 第35番 ニ長調K.385「ハフナー」/第33番 変ロ長調K.319他 
6/10(木) 交響曲 ニ長調K.なし/第36番 ハ長調K.425「リンツ」他
3日とも、18:30開場 19:00開演
会場:すみだトリフォニーホール
http://www.triphony.com/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年05月06日 11:20

更新: 2010年05月06日 12:05

ソース: intoxicate vol.85 (2010年4月20日発行)

interview & text : 川田朔也(音楽ライター・仏語翻訳)