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インタビュー

Nothing's Carved In Stone 『Sands of Time』

 

 

2008年、Nothing's Carved In Stone(以下NCIS)が誕生したことは日本のロック・シーンにおける衝撃だった。ELLEGARDENの生形真一、ストレイテナーの日向秀和、FULLARMORやズボンズで活動してきた大喜多崇規、そしてABSTRACT MASHの村松拓――この4人が生み出す音は何よりも刺激的で、ロックの新たな可能性を提示するものであった。しかしそれだけに次の作品というのは予測できなかった。名うてのプレイヤーで結成されたバンドだから、そのスタイルはすでに完成されていると思えたからだ。だが彼らはツアーを繰り返すことによって1つのバンドとして進化していく。昨年2月末に代官山UNITで行われた初のライヴに始まり、ファースト・アルバム『PARALLEL LIVES』のリリースと2度のツアー、そしてシングル発表とそれを引っ提げた3度目のツアー、この短期間でNCISは多くのリスナーを魅了していった。それを端的に示すのがライヴ会場で、最初のワンマン・ツアーでは恵比寿LIQUID ROOM、前回は渋谷AXでファイナルを敢行し、次回のツアーは9月に赤坂BLITZで最終公演が行われる予定だ。そのロード・マップは地に足を着けてステップアップしていく多くのバンドの歩みそのものであるが、それを彼らは短期間で成し遂げた。生形はそれがメンバーそれぞれの手応えになったのは間違いないと言う。

「やっぱりライヴをしているとわかるじゃないですか。初ライヴの時なんて本当はガチガチでしたよ。でも、それも変わっていきましたよね。手応えを感じてやってこれたから、それぞれがこのバンドをもっと進化させようって考えてたと思うんですよ」(生形真一)。

そしてこのたび完成した彼らの2枚目のニュー・アルバム『Sands of Time』に課されていたテーマも〈進化〉であった。

「それがセカンド・アルバムの目標だった。ファーストの匂いや雰囲気を残しながら、さらに進化した作品を作りたかったんです」(生形)。

まさに新作はこの言葉通りの作品になった。新たにライヴのオープニング・ナンバーになりそうな“Chaotic Imagination”でパワフルに幕を開け、そこから4曲目の“Around the Clock”までは音の圧力と疾走感で突き進んでいく。だが唯一のインスト・ナンバー“Memento”で景色が変わる。エレクトロニカとNCISのサウンドを融合させた“Sunday Morning Escape”、ハードな展開ながらもダンサブルな“Rendaman”、そして静かな打ち込みのビートが激しい生音にメタモルフォーズする“Slow Down”――これらは前作にはなかった新しいタイプの楽曲だ。

このように、アルバム全体にはバンドのクリエイティヴィティーが細部にまで施され、プレイヤーとしての個々の音色やフレーズも強い存在感を放っている。しかしどの曲も村松の歌うメロディーが強い芯となっていることは、どんなに実験的なサウンドになってもブレることはない。音楽的な自由度を増しながら、始まりから終わりまでNCISの確固たる世界を作り出している。

『Sands of Time』という作品で表現された進化。それは1年半という時間のなかで得た手応えと確信によって生み出されたものだ。ロック・シーンをサヴァイヴしてきたメンバーが集まったバンドだからこそ、その結果は深く濃く、圧倒的なクォリティーとなっている。そして彼らはふたたび次の進化へと歩み出す。

「曲も増えたから、〈Sands of Time Tour〉では繋ぎ合わせ方やセッションによって新しい見せ方ができるようになると思うんです。このツアーでNothing'sが持っているいろんな面が見えるはずですよ」(村松拓)。

 

PROFILE/Nothing's Carved In Stone

ABSTRACT MASHの村松拓(ヴォーカル/ギター)、ELLEGARDENの生形真一(ギター)、ストレイテナーの日向秀和(ベース)、FULLARMORの大喜多崇規(ドラムス)から成る4人組。ELLEGARDENの活動休止を機に生形が日向へ声をかけたことがきっかけで2008年に結成。しばらくヴォーカル不在のままセッションを続け、後に村松が加入して現在の編成となる。2009年2月に初のライヴを行い、同年5月にファースト・アルバム『PARALLEL LIVES』をリリース。全国ツアーや夏フェスへの出演を経て2009年12月にファースト・シングル『Around The Clock』とライヴDVD「Initial Lives」を同時に発表。このたびニュー・アルバム『Sands of Time』(Dynamord)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年06月16日 17:59

ソース: bounce 322号 (2010年6月25日発行)

インタヴュー・文/桑村治良