インタビュー

キーワードから紐解く七尾のあれこれ――(2)

 

【参加作】ゲイ・テイストを押し出した淫靡なエレクトロ・ディスコとなった石野卓球とのコラボ曲“ラスト・シーン”でも炸裂させている変幻自在のヴォーカルは評価が高く、電気グルーヴ“スーパースター”をはじめとする卓球絡みの諸作や、フルカワミキ“世界のささやき”、石橋英子『Drifting Devil』での2曲、hitomi“IS IT YOU?”など、コーラスで参加している作品は数限りない。また作詞やアレンジなどを手掛け、全面的に関わったのが川本真琴のシングル“ブロッサム”は、ピアノ主体のたおやかなバラードが時おり不穏に歪む瞬間が美しい。そしてworld's end girlfriend“all imperfect love song”では歌い手として前に立ち、ピアノやストリングスとグリッチ・ノイズが交錯する音世界にエモーショナルな物語を与えている。さらにコンピ『Perfect! -Tokyo Independent Music-』にはフォーキーな“LAST DATE”を提供。シンガーとして参加した環ROY“Break Boy in the Dream”は、“Rollin' Rollin'”と表裏一体を成すメランコリックなアーバン・ブルースだ。*澤田

 

▼関連盤を紹介。

左から、電気グルーヴの2008年作『J-POP』(キューン)、フルカワミキの2006年作『Mirrors』(ARIOLA JAPAN)、川本真琴のベスト盤『The Complete Singles Collection 1996~2001』(ソニー)、world's end girlfriendの2002年作『dream's end come true』(ミディクリエイティブ)、コンピ『Perfect! -Tokyo Independent Music-』(ROSE)、環ROYの2010年作『BREAK BOY』(POPGROUP)

 

【七尾旅人】98年に〈恐るべき10代〉としてデビューした七尾だが、これまでに発表したオリジナル・アルバムは新作を含めても5枚とかなりの寡作家(ただしライヴでは頻繁に新曲を披露している)。10代最後の年となる99年に生み落とされた初作『雨に撃たえば...!disc 2』は、中性的な歌声と独特の危うさを持ったサウンドと青い感情を爆発させた詞世界が絡み合う、胸がヒリつくような作品だ。2002年には2枚組の大作『ヘヴンリィ・パンク:アダージョ』を発表。石野卓球との仕事もあったからか打ち込みが大幅に導入されており、クリアな音響で紡がれる甘美な調べはまるで天上の音楽のよう。続く2003年の『ひきがたり・ものがたり Vol.1 蜂雀』は一転して全編アコースティックの弾き語り盤となり、彼の音楽的な核である〈声〉の力がもっとも生々しく表れた一枚と言えるだろう。そして2007年作『911FANTASIA』では〈9.11〉をモチーフにした物語を3枚組で展開。語りの部分と楽曲がシームレスに繋がった構成はポップスの新たな可能性を提示するものであり、そのストーリーは優れたSF作品としても評価されるべきだ。*北野

 

▼七尾旅人のアルバムを紹介。

左から、99年作『雨に撃たえば...!disc 2』(キューン)、2002年作『ヘヴンリィ・パンク:アダージョ』、2003年作『ひきがたり・ものがたり Vol.1 蜂雀』(共にWONDERGROUND)、2007年作『911FANTASIA』(HEARTFAST)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年06月30日 18:01

ソース: bounce 322号 (2010年6月25日発行)

文/北野 創、澤田大輔