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インタビュー

Charito

ハーヴィー・メイソンの発案でつくられたマイケル集

インターナショナルなスタンスで活躍する実力派ジャズ・シンガー、チャリートの新作『ヒール・ザ・ワールド』はなんとマイケル・ジャクソン絡みの楽曲を取り上げたアルバムだ。プロデュースはハービー・ハンコックのヘッドハンターズを起点に、リーダーとしても多彩な活動を見せているコンテンポラリー・ジャズ界の名ドラマーであるハーヴィー・メイソンが担当。「ハーヴィーと正式に知り合ったのは、2、3年前。それで、彼にプロデュースを頼んでいたんですが……」

一緒に録音することは決まっていたが、昨年の6月下旬までは内容がきっちり煮詰められていなかった。実はジャクソンが亡くなった時に、彼女はちょうど仕事でLAに滞在していたのだが、「訃報を聞いてショックを受けていたら、ハーヴィーから電話がかかってきたんです。彼の曲を歌ったアルバムにしてみないかいって」

やはり子供のころはマイケルの大ファンだったという彼女だが、あのダンス色の強いマイケル曲をちゃんと自分流に料理できるのかと、当初そのアイデアには困惑も覚えたという。が、メイソンの強い勧めもあり、選曲に着手。結局、ジャクソン5時代の曲や、ジャクソンがダイアナ・ロスとミュージカル映画『ザ・ウィズ』で歌った曲なども、そこには選ばれている。

「メロディが綺麗な曲、展開がある曲を選ぶようにしました。それから、歌詞ですね。やはり、彼のヒューマンなメッセージは素晴らしい」

レコーディングは昨年の11月と12月の2回に分けて、LAで行われた。集まったミュージシャンはエイブ・ラボリエルやヒューバート・ロウズらメイソンの知己たちであり、アレンジはAOR調のアルバムを何枚も出しているマイケル・ラフが主に担当している。「洗練されたアレンジのもと、自分の表情を出せればと思いました。やはり、ジャズ・エッセンスをキープしたいというのは、ハーヴィーに伝えましたね」

アダルトなポップ感覚と風通しの良いジャズ感覚が解け合ったいかにもLA的なサウンド・プロダクションのもと、彼女のリッチな歌が自然体で乗る。実は、近作はブラジリアン・ポップの名作曲者であるイヴァン・リンスやフランスの大作曲家であるミシェル・ルグランとそれぞれタッグしたものだったりする彼女だけに、そうした末広がりな行き方はまったく違和感なし。彼女はこれまでになく素直に歌うようにしたというが、やはりその新作できっちりとアピールされているのは、キャリア豊かな自立した歌い手ならではのしなやかさや滋味だ。

「今作は新しいチャレンジでした。でも、普段ジャズを聞かないような人にも訴求するものが作れたと思っています。実は、私は元々モータウンやチャカ・カーンやダイアナ・ロスが大好きなR&Bシンガーだったんです。だから、今回はレコーディングしていて、かつての自分を思い出したところもありましたね」

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年07月01日 20:28

更新: 2010年07月01日 20:38

ソース: intoxicate vol.86 (2010年6月20日発行)

interview & text : 佐藤英輔