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インタビュー

南波志帆 『ごめんね、私。』

 

ナチュラルかつキュートなヴォーカルで洗練されたポップ・チューンを歌う、17歳の女性シンガー、南波志帆。これまでインディーで2枚のミニ・アルバム『はじめまして、私。』『君に届くかな、私。』を発表し、幅広い層から高い評価を受けてきた彼女が、メジャー・デビュー作となるアルバム『ごめんね、私。』を完成させた。

「『ごめんね、私。』は、メジャー・デビュー作ですけど、いままで出してきた〈私〉シリーズの集大成って思いがあるんです」と語る南波。新作は、これまでに引き続きプロデューサーに矢野博康、作家陣には土岐麻子、宮川弾、コトリンゴ、堀込高樹(キリンジ)、 G.RINA、奥田健介(NONA REEVES)、堂島孝平、末光篤、おおはた雄一といったセンス抜群のメンツを迎えて制作された一枚だ。

「最近はどんな人が私の音楽を聴いてくれてるかだいぶわかってきたので、その人たちへのメッセージを込めたところはありますね。そういう意味ではすごくライヴを意識したアルバムになってます。レコーディングでも、この曲はアンコールでやったら盛り上がるなとか、お客さんの顔を思い浮かべながら歌いました」。

揺れ動く女の子の気持ちを爽快で疾走感溢れるトラックに乗せたタイトル曲をはじめ、煌めくようなラヴソング“スローモーション”、恋する気持ちを綴ったエレクトロニカな4つ打ちチューン“会いたい、会いたくない”、テクノ・ポップな“シャイニングスター”、アコースティック・ギターの柔らかい音色に乗せて新たな一歩を踏み出す思いを歌う“光の街”など、高いクォリティーの楽曲を聴かせていく『ごめんね、私。』。

「私は歌詞の世界の主人公を演じているんじゃなく、自分のなかの共感できる部分を探りながら歌ってるんです。だから、可愛らしかったりツンデレだったりロマンチストだったり違うキャラの女の子が出てくるけど、すべて〈私〉なんですね。あと、歌に関しては自分の感情をすごく出して歌うというよりも、あえて感情を抑えて歌うようにしてるんです。それは、あまり自分の感情を押し付けてしまうと、聴いてる人が感情移入できないんじゃないかなって。私だけの音楽じゃなく、聴いてくれるみんなといっしょに作っていく音楽だと思っているので、そこは気をつけてますね。これを聴いたときに感じた感情を、例えば10年後に聴いて思い返してくれたら嬉しいなと思っています」。

彼女のいまとシンクロする歌詞の世界観、決して易しくはない曲たちを自分のものに昇華し、スムースに歌っていく彼女。ルックスやキャラクターにアイドル的資質はありつつも、極めてアーティスト的といえるそのポテンシャルは、メジャー・デビューを機にさらなる進化を遂げている。

「アルバム・タイトルを『ごめんね、私。』にしたのは、いままでの自分に対して〈ごめんね〉という思いがあったから。それはマイナスの意味じゃなく、プラスの意味で。変わらないことがいいことだと思ってた時期もあったけど、でももっと広い世界を見てみたいし、もっと多くの人に知ってほしいって思いが強くなってきたんです。なのでタイトルには、過去の自分に〈ごめんなさい〉ってさよならを言って新たなステップに行くという思いが込められてますね」。

世の中と同じく、音楽シーンのトレンドも移り変わりのスピードがさらに加速しているが、そんななかでキラリと光り輝くことができるのは、リアルさと普遍性を併せ持った音楽だろう。『ごめんね、私。』には、そうした感覚が漲っている。秘めた可能性は無限大。改めてここからスタートする南波志帆の音楽の旅に期待は高まるばかりだ。

「このアルバムは、全体を通じてショート・フィルムを観てるような感じがありますね。とくに後半3曲は、友人との楽しかった日々を通じてお互いを信じ合う“Bless You, Girls!”があって、離れても通じ合う気持ちがあれば大丈夫という“楽園にて”があって、自分の決意や将来を決めた“光の街”っていう、繋がった物語になるなって。〈私〉シリーズの集大成であり、私の新たなスタートとなるこのアルバムを、いろんな世代の方に聴いてほしいです」。

 

PROFILE/南波志帆

93年、福岡生まれ。幼少の頃からダンスや演劇など舞台キャリアを重ね、14歳の時に元Cymbalsの矢野博康と出会ったことをきっかけに、シンガーの道を歩むことを決意。2008年にミニ・アルバム『はじめまして、私。』でデビューを果たす。翌2009年1月にはコンピ『ディズニー・ドリーム・ポップ』に参加。8月にリミックス・アルバム『ティーンエイジシンフォニー』、9月にミニ・アルバム『君に届くかな、私。』を発表。矢野のプロデュースのもと、土岐麻子、キリンジ、NONA REEVESといったクリエイターたちが参加したこともあって作品はいずれも高い評価を受ける。このたび、メジャー・デビュー作となるニュー・アルバム『ごめんね、私。』(ポニーキャニオン)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年07月02日 18:55

更新: 2010年07月07日 19:12

ソース: bounce 322号 (2010年6月25日発行)

インタヴュー・文/土屋恵介