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インタビュー

山本貴志

ショパンの母国ポーランドに学んだ想い

ワルシャワ・ショパン音楽アカデミー在学中の2005年、ショパン国際コンクール第4位入賞で大きな話題を集めた新鋭ピアニスト・山本貴志さん。受賞後もポーランドに留まり、演奏活動の傍ら、研鑽を重ねて2008年に卒業。翌年、拠点を東京へ移して本格始動。

ショパンの母国に学んだ5年の想いを込めて、ソロ・デビューCD『ショパン:ワルツ集&舟歌』を発表した。

「不思議な悟りの世界をもつ『舟歌』は、節目に弾いてきた曲。折々の感情や吸収したものが出やすく、毎回弾き方が変わる曲なので、今どういう心境か自分でも確かめたかったのと、思い入れもあって選びました。ショパンの曲は、旋律を意識しがちですが、ポーランドで学んで、左手のリズムの表情や身体の動きから出てくる自然な流れの中のリズムといった、最も基礎的な形における音楽の喜びを知ることができました。ワルツには、フランスとポーランドの両方の特質をもつショパンらしさが最も出ていると思えたので、第1弾でとりあげました」

山本さんにとってショパンはどのような存在なのだろう。「僕にとっては癒しという特別な存在です。日々感じるいろいろな想いを伝えたくてピアノを弾いていますが、自分で弾いている感覚ではなく、違うところから降りてくる…ショパンにはそういう感覚があります。和音の重なりにも意図しないものがあり、非常に複雑に和音が変化する、そうしたものが醸しだす音色の多彩さはショパンが一番です。それらが心を開放してくれます。それに、彼自身ピアニストだったこともあって、ショパンを弾くと、物理的に身体も楽しいんです。即興の精神を見失わずに書かれた精緻な曲ばかりなので、難しい指の動きもありますが、それにも増して弾く喜びがあります」

CD第2弾を7月に録音する予定。「ノクターンの選曲集です。ショパンの曲はもともと自己主張が薄く、ノクターンも、風景画のような趣です。そこに隠された主張を掘り起こしてみたい気持ちにかられました」

ピアノを始めたきっかけは、「幼稚園でピアノにあわせて歌うのが大好きで、次第にピアノに興味をもつようになりました。昔も今もそうですが、旋律よりも、それを支える和音や伴奏のほうに惹かれます。お客様に演奏を聴いていただけるのは幸せなことですが、語弊を恐れず言うと、今もピアノは楽しみのひとつという感覚です」 週1回、1日、ピアノを弾かない日を作る、それがまた新たな発見につながるという。他の人の演奏や録音はあまり聴かないが、「内田光子さんのモーツァルトは好きで聴いてました。曲を大切にする感じがいいですね。CDでもそれが伝わるから、音楽は凄い!と思います」

ソロ、協奏曲、室内楽と演奏活動も活発。「11月20日のCD発売記念リサイタルは、ポーランドをイメージさせる曲を選びました。ノクターン、マズルカ、ソナタ、ポロネーズ、もちろん舟歌もワルツも弾く予定です」

山本貴志 公演スケジュール
9/26(日)長野・木曽文化公園文化ホール(リサイタル)
11/12(金)長野・ホクト文化ホール  共演:スロヴァキア放送交響楽団
11/18(木)宮城・えずこホール(リサイタル)
11/20(土)トッパンホール(リサイタル)
http://www.concert.co.jp/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年07月14日 15:55

更新: 2010年07月14日 16:10

ソース: intoxicate vol.86 (2010年6月20日発行)

interview & text : 横堀朱美