インタビュー

lecca『パワーバタフライ』

 

 

 

今度のleccaは更に強気のアクションを打ち出してきた。昨年大ヒットした『BIG POPPER』に続く、
強烈な5thアルバム『パワーバタフライ』に込められた<攻め>への想いとは?
レゲエをベースにしつつエレクトロ、ハウス、ロックと方法を選ばずに
最上の音楽的メッセージを打ち上げること。この人の頼もしい才気をいま感じてほしい!

 

「自分たちのエネルギーが大きくても、何をしたいのかが分からない。でも自分の力をもう一度信じて行動を起こしてほしい」(lecca)

 

 まず『パワーバタフライ』というタイトルについて教えてください。

「気象に関する方面の言葉で<バタフライ理論>というものがあるんです。例えば、すごく小さな蝶がここで羽ばたきをしたら、
それが風になり、気流に変わって、そして地球の裏側で雨が降る…。
わずかな動きが何かに影響を及ぼし思いも寄らない場所で
結果を成したりする。それは素晴らしい理論だなと。
それが人の事だとしたら、自分が今日している小さな動きが、もしかしたら自分の全く知らないところで何かを変化させているのかも。
そう思うと、自分の中にパワーがあることを、
もう一度信じられる気持ちになるかと思ったんです」

 

 

 前作との違いについては?

 「『BIG POPPER』では、私が感じる喜怒哀楽をみんなと共有したくて、
みんなにわかってもらえる曲をまず選んでました。
今回は一歩進んで、私自身が忘れているかもしれない力、そしてみんなの中に秘められている、
パワー、夢、目標。それを引き出し、鼓舞するというようなイメージで曲を書きためてきました」

 

 

 サウンドは冒頭からパワフルですね。

「“ちから”は10代後半~20代前半の若いコたちに届けたかった曲です。
その世代がいま社会のなかで無力感を抱いているとしたら、
本来の自分たちのエネルギーが、大きくても何をしたいのかが分からないかもしれない。
でも自分の力をもう一度信じて行動を起こしてほしいと。
サンバの力強さにボサノヴァも入った曲をやりたくて。
“Gambling”は“ちから”のメッセージをより俯瞰的な視点で歌ってます。
大人たちもなるべく自分が持っているものを使わずに、ためる方向になっている…。
今まで築いてきたものに縛られちゃうと、昔の自分にはなかなか勝てない。
そんな閉塞感をとっぱらう賭けをしよう! という私なりの提案です」

 





 プロデューサーを招いた曲がCDの中盤に集中していますね。

「“年老うふたり”はLittle TempoのHAKASE-SUNさんですね。
ドラム以外はみんな生で、ストレートなとても温かいレゲエです。
そこで浮かんだのが老夫婦の愛。実際に祖母が話していた祖父への言葉を元に歌詞を書いています。
“未来カメラ”は朝本浩文さん。<黒い>けれど、すごくキャッチーなメロディを含ませてくれてます。
トラックはDrum’N BASSっぽいですが、こういう音を聴いたことがなくても<体>でその良さがわかると思う。
できたら低音がちゃんと出る、いいスピーカーで感じてほしいですね」

 

 

 “too BAD, too FAKE”ですがこれは問題作でしょうか?(笑)。カップルがベッドでしていることは、
はっきり男の独りよがりだと?

「女の子たちの否もあるかもしれないですね。でも日本って男の子たちのセックス・ファンタジーが強いと思う。
男の子たちは自分が下手だって気づいてない人も多そうじゃないですか(笑)」

 

 

 イタいですね~(笑)。この曲は男の思い込みを容認しつつも、女たちがお尻を叩いてあげないとダメ、という歌ですよね?

「(笑)その通りです! この曲はロックっぽい曲で、私のなかではちょっとシェリル・クロウ的。
不良っぽい味も出せたかなと思ってます」

 


 

 では一転して、“証”について。ぐっとハウス的なビートが印象深いです。

「実は若くして亡くなった友だちについての曲です。みんながそのコにもらったことは、
「今日一日で、何があっても絶対に折れずに頑張る」というメッセージだったりするんです。
とにかくいつも彼女は素敵な笑顔でした。その笑顔が周り人たちの心に今も残っているのは、
あのコがいたことの<証>。それを強く憶えていたい、という気持ちを込めました。
そのコにはとても夏のイメージがあって、お盆の時期独特の湿った空気感だとか、いろんなものが始まるけど
同時に終わって行く感覚を、曲調に込めてみました」

 

 

 なるほど、そこからあのディープな切なさが展開されているのかもしれませんね。
今回のアルバムは、ほんとに盛りだくさんだと思います。
訊きたいことは沢山あるんですが、シャギーとの共演曲“TARGET”のお話をぜひ。

「もともと彼のアルバムに参加するオファーがありまして、そのきっかけで私の作品でもとお願いしたんです。
一昨年ぐらいから温めていたトラックでしたが、結果として最高の相手がみつかりました。
シャギーは何て言うか、お父さんみたいな存在。
私が10代の終わりのころ彼はすでに世界のシャギーでしたけれど、2年前に出したアルバムでは、
かなりジャマイカ回帰をしていて、その留まらない表現者ぶりが素敵だと思ってました。
ただのエロオヤジじゃないんだなって(笑)。そしてあの声! もう楽器みたいで、ギンギンにきちゃうというか。
私はここでいい女ぶりを演じている感じですね(笑)」

 

 

 いつも最新の曲がフェイヴァリットだと言われますね。すると、このアルバムでいちばん気に入っているは?

「今はラストの“Copy Robot”です。すごく気に入っていて、実はこのアルバムを通しで流して各曲を
春夏秋冬の感覚で分けていったら、最後のこの曲で、もう一回夏に入って行く感じがつくれました。
6、7月のイメージで、冒頭のサンバに戻れるかなと。次へと続く最後の一押しのような曲になったと
思っていますね」

 

■ LIVE…


lecca LIVE TOUR 2010"パワーバタフライ"
9/14(火) 広島 CLUB QUATTRO
9/16(木) 大阪 Zepp Osaka
9/18(土) 石川 金沢 Eight Hall
9/21(火) 愛知 Zepp Nagoya
9/23(木・祝) 北海道 Zepp Sapporo
9/25(土) 宮城 Zepp Sendai
9/29(水) 福岡 Zepp Fukuoka
10/1(金) 東京 Zepp Tokyo
詳細はHPまで。

■ PROFILE…lecca(レッカ)

 06年8月にメジャー・デビュー。ダンスホール・レゲエをベースにしつつも、ジャンルにとらわれない
オリジナルなスタイルがファンに支持されている。
約一年ぶりとなるアルバムリリース後はフェスティバルの出演や全国ツアーを控えている。 

 


記事内容:TOWER 2010/07/20号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2010年07月19日 00:00

更新: 2010年07月20日 10:07

ソース: 2010/07/20

shuichi iketani