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インタビュー

SandiiBunbun

Sandiiとカリンバ奏者Bunによるデュオ・アルバム

近年はハワイやタヒチの音楽とダンス(フラ)のクムフラとして多忙をきわめるサンディー。それは彼女がハワイ育ちだから、ということにもよるが、歌手/音楽家としての彼女は、ハワイ/タヒチだけにとどまらず、世界のさまざまな音楽に関心を持って音楽活動を続けてきた。KOH+TAOの親指ピアノ(カリンバ)奏者、BUNと組んだSandiiBunbunの最新アルバム『飛らら』には、これまで彼女が出会ってきた音楽のさまざまな要素がこだましている。

「KOH+TAOのレコーディングに招かれて、妖精が遊んでいるような、エゴ・トリップのない音楽にひかれ、赤ちゃんをあやすガラガラに似た音色が心地よいBunさんのカリンバと一緒にやりたいと思ったの」(サンディー)

Bunは藤原新也に影響されて写真家めざしてインドを放浪中、カリンバで人とコミュニケーションすることの楽しさに目覚め、カメラを売り払って音楽家になった。タンザニアの人間国宝的親指ピアノ奏者フクウェ・ザヴォセに師事したが、アフリカ風の演奏ができず、逆に、おまえは自分のオリジナルをやればいいと諭され、タイで知り合ったメンバーKOH+TAOをはじめた。

「ぼくがカリンバをチューニングしてずっと弾き、サンディーさんがそれに合わせて鼻歌でメロディをうたう。そのフレーズから曲ができてきたんです」(BUN)

「野外で目を閉じてカリンバの音を聞いていると、太陽が内側にしみこんでくる。その気持のいい部分を音にのっけていったら、曲ができたの。おそらくクムフラの修行中にわたしの中で育っていたものが出てきたんでしょうね」(サンディー)

前作『花ビラ』は石垣島への旅から生まれたが、『飛らら』は沖縄の宮古島での体験からはじまった(タイトルは地名の平良に由来。《女神の羽衣〜飛らら》は古代の伝説がある大神島や宮古島で彩雲や虹を見た体験から生まれた)。アルバムには穏やかな演奏の曲が多く、サンディーの歌声はこれまでにもまして優しい。

「歳をとると、いろんな別れが重なってくるから、時間がいとおしくなるのよね。それは別れの悲しみというより、自分の中の何かを愛おしむ気持ちが強くなる感じ。おばあちゃんが孫にうたう子守歌が優しくなるようなものかしら」(サンディー)

ダンスが好きなサンディーだから、踊れるような曲ももちろん入っている。《キラキラHappy Birthday》は、この夏出演するフジ・ロックにみんなで遊びに行って踊れるような曲をということで入れた曲で、タヒチとオーストラリアと沖縄とニューオーリンズとインドネシア……をつなぐようなグルーヴがある。しかし生楽器の音が基本なので、そんな曲でさえとても優しい。サンディーの音楽の終りのない旅はまだまだ続く。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年07月26日 20:58

更新: 2010年07月28日 14:38

ソース: intoxicate vol.86 (2010年6月20日発行)

interview & text : 北中正和