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インタビュー

上妻宏光

十季 〜上妻宏光  10年目の原点回帰〜

世界的に活躍する津軽三味線奏者・上妻宏光が、デビュー10周年を迎えこれまでの集大成となるベスト盤と新録音盤の2枚を同時リリースした。

「各アルバムごとに、従来あった津軽三味線のスタイルではなくもっとこういうことができないかと 考えて曲を作ってきました。コテコテの津軽三味線というもののイメージとは変えたかった。例えばどうしても早引きに走りがちなわけですが、逆にしっとりと バラードをやってみたらと、そういう発想で取り組んできたわけです。この10年間何をやってきたか、やりたかったかが今回のベスト盤でおわかりいただける んじゃないかと思います」

通して聴いていくと、演奏へのアプローチの変化、進化の度合いもはっきりと聴くことができる。

「いわゆるノリ、グルーヴにしても、一時期はジャストで演奏するということを強く意識していたこともありました。でもやっぱりもう少し歌う感じで三味線を弾きたいという思いもある。三味線の打楽器的な側面、リズム楽器的な側面でのグルーヴ感も表現したいですし」

卓越した技術に裏付けられたソロパートでは、彼の多彩な音楽的バックボーンが浮かぶ。

「70年代のハードロックはけっこう聴きました。レインボーやレッド・ツェッペリン、キッスやジ ミヘンも。この時代のギターソロというのはわりと三味線でも弾きやすいのですが、完全コピーするのではなく自分流に変えてしまってみたり。三味線では チョーキングはできませんが、ニュアンスを出すために弦の横滑り、スライドしてみたりといったアプローチもしてきました」

一方、新録音盤は真正面から古典に取り組んだ作品だ。ぼくはこのアルバムを、炎天下の都心でまるで風鈴を聴くような心地よさに包まれながら拝聴した。

「デビュー時のじょんがら節と今のじょんがら節は、音色の深さであったりとか間であったりとかい うものが違うと思います。そういうものをひとつの区切りで録音したいというものもありました。海外公演をしたりという経験の中で、自分の原点はやはり民謡 にある、と。そこと正直にスタジオの中で向き合い、逃げられない環境の中で自分と向き合うという作業をしたかった。自分自身何度も聴けるアルバムだなとい うふうに思いますし、自然に演奏できたという心地よさのようなものを収録できたかなと思っています」

八月末からは三味線独奏でのツアー『生一丁!』も控えている。

「三味線というものを感じてもらいたいと思いますし、駒を変えたり撥を変えたりしながら、最も響 くようホールと会話し、お客様と会話する。そういう作業を通しての達成感も重要だと思いますし、久々に生でやるということによって自分と向き合っていく、 そういう姿勢、生き様を見ていただくのも重要だなと思っています」

 

『ソロ・デビュー10周年 上妻宏光「生一丁!」Tour 201』8/29(日)岐阜 多治見市笠原中央公民館 アザレアホール
9/4(土)長野 北野文芸座
11(土)横須賀 ヨコスカ・ベイサイド・ポケット
18(土)愛知 電気文化会館ザ・コンサートホール
20(月・祝)福井 みくに文化未来館
22(水)石川 北國新聞赤羽ホール
25(土)千葉 船橋市文化創造館きららホール
26(日)新潟 新潟市民芸術文化会館 能楽堂
10/1(金)京都 京都コンサートホール(小ホール)
2日(土)兵庫 兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院小ホール
8日(金)福岡 あいれふホール
15(金)北海道 札幌コンサートホールkitara小ホール
29(金)岡山 岡山ルネスホール
30日(土)広島 広島ゲバントホール
10/31(日)兵庫 姫路キャスパホール
11/6(土)愛知 知立リリオ・コンサートホール
7(日)茨城 多賀市民会館

『ソロ・デビュー10周年特別公演 〜伝統と革新〜』11/23(火・祝) 東京 渋谷Bunkamuraオーチャードホール
スペシャルゲスト:綾戸智恵、志村けん、藤原道山、村治佳織、他(50音順)
http://www.agatsuma.tv/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年08月20日 21:45

更新: 2010年08月20日 21:57

ソース: intoxicate vol.87 (2010年8月20日発行)

interview & text : 磯田健一郎