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インタビュー

Tommy Guerrero

耕すように録音された音からたちのぼる土臭さ

プロ・スケーターとして活躍していた80年代から90年代にかけて、一筋通った〈哲学〉を貫いてきたトミー・ゲレロは、ギャラクシアからソロ・デビュー作『ルース・グルーヴズ&バスタード・ブルース』をリリースして以来、一貫した哀愁感漂うメロディセンスと荒削りなビート、そして彼のスケートスタイルに似た流麗なサウンドを世に届けてきた。前作『ライフボーツ・アンド・フォーリーズ』は、ジョン・コルトレーンを始めとするジャズ、ラテン、サイケ・ロックを吸収して作り上げられた傑作として絶賛されたが、最新作『リヴィング・ダート』は、通算8枚目のフル・アルバムというよりも、〈ライヴ演奏〉に焦点を当てたコンセプチュアル・アルバムだ。ライヴ演奏と言っても、ツアーのライヴ・レコーディングを収録したわけではなく、何もアイデアを決めずにスタジオに入って、オーディエンスがいないところで、一人だけの〈ライヴ録音〉を刻み込んだアルバムなのだ。

「このアルバムは、5日間でレコーディングしたんだけど、何も決めないで、真っさらの状態でスタジオに入ったんだよ。スタジオの中をいくつかのセクションに分けて、そこにギター、ベース、ドラム・マシン、キーボード、パーカッションなどを置いた。ドラム・マシンの音をループさせて、その上にどんどん楽器を演奏して、エフェクターでループさせながら重ねていった。レコーディングした後に編集もしてないから、曲はライヴのように、レコーディングしたままの状態なんだよ。一人でライヴをやることもあるんだけど、サンプラーやループ・ペダルを使うから、バンド・ライヴと違うんだ。このスタイルでライヴをやるのは、アート展のイベントや小さな会場で演奏するときなんだ。俺は更にそのアイデアを追求した作品を作ってみたかったんだよ。そのときの瞬間を捕らえた作品なんだ。演奏したときのアグレッシブな気持ちや、悲しい気持ちが、サウンドに反映されたんだよ」

今作のサウンドは、編集なしで演奏したようには聞こえないほど曲の構成と完成度が高く、トレードマークである哀愁感あるメロディや歪んだブレイクビーツに加え、初の4つ打ちのトラックや、映画のサントラを思わせるアンビエント・チューンなど、意外性のある曲も多数収録されている。タイトル『Living Dirt』(直訳すると、「生きた土」)は、アルバムの制作方法と〈土臭い〉サウンドに対するアティチュードが凝縮されている。

「土というのは、人間の生活に不可欠で、土がなければ人間は生きていけない。そして、土そのものが生き物なんだ。このアルバムのサウンドは、土のようにダーティでラフなんだ。俺のペダルもギターもノイズが出るから、ノイジーなサウンドになるんだ。ラフで生々しいサウンドの作品だし、生演奏によってとても有機的なプロセスでこのアルバムを作り上げたんだ」

9月に来日予定のトミーだが、彼のワンマン・ライヴも体感してみたいものだ。彼は確固たるスタンスを保ちながらも、自身のサウンドを発展させていくに違いない。

 

『Tommy Guerrero "Living Dirt" Release Party』
9/3(金)22:00開演 会場:eleven
Live: Tommy Guerrero / Pepe California
DJ: KENJI TAKIMI(Luger E-Go/Crue-L)矢部直(United Future Organization) and more
http://www.rushproductionmusic.com/

『METAMORPHOSE 2010』
9/4(土)会場:自転車の国 サイクルスポーツセンター
http://www.metamo.info

9/6(月) THE BOTTME LINE(名古屋)
http://www.bottomline.co.jp

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年08月20日 22:13

更新: 2010年08月20日 22:24

ソース: intoxicate vol.87 (2010年8月20日発行)

interview & text : バルーチャ・ハシム