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インタビュー

lego big morl 『Mother ship』

 

 

勢いに任せた演奏から曲そのもので聴かせる真のダイナミズムへ。そして、すべての人に届けるような大らかさのあるバンドへ——そんな、あきらかに成長の跡が窺えるアルバムだ。2006年に大阪で結成された4人組、lego big morlのセカンド・アルバム、その名も『Mother ship』。これはまさに、母船に乗って身を任せたような、安心感を携えた壮大な仕上がりになっている。

「〈音楽ってそもそもどこから来るのかな?〉〈この音はどうやったら鳴るのかな?〉みたいなことをずっと考えるようになっていたんです」(カナタタケヒロ)。

もともとスケールの大きなバンドをめざしていた彼らは、ファースト・ミニ・アルバム『Tuesday and Thursday』のリリースからわずか2年で、今年の〈ap bank fes〉にも出場するなど着実な歩みを重ねている。だが、東京に活動の拠点を移し、音楽活動に専念するようになったことも引き金となって、彼らは自分たちの音楽のあり方を根本から捉え直すようになったのだとか。

「例えばコールドプレイとかミューズとかって、1曲のなかにドラマがあって、ちゃんと盛り上げていって印象に残るフレーズがあると思うんですよ。僕らも今回のアルバムでそういう聴かせ方ができるようになりたいと思っていて」(タナカヒロキ)。

「僕らの曲っていざライヴになったらいっしょに歌えなかったりしていたみたいで。結構凝ったことをやっていても、ライヴでお客さんを巻き込んでいくようなことができなきゃダメだなって思えてきたんですよ」(カナタ)。

もちろんlego big morlは大きな波を作りながら会場中を一体化させていけるだけの技術を持ったバンドだ。だが、どうも物足りない。それが何かを考えた時に辿り着いたのが、曲を聴かせる表現力や感性だったということなのだろう。だから今回は、曲作りの段階から細かなニュアンスを施すことを試みたという。

「今回は何か大きなものに対してメンバーみんなで丁寧にアプローチしていくというやり方で曲を作ったんです。とにかく曲をちゃんと作って、それを演奏することを考えようって。もちろん途中で迷ったりブレたりしたこともありましたよ、“バランス”という曲は特にそうでしたね」(カナタ)。

「“バランス”は最初、盛り上がりに欠けていたんですよ。で、サビのメロディーを変えたり、ビートを変えたりしたんですけど、当初考えていた〈淡々としているなかにある深い何か〉みたいなものがなくて。それで、細かい表情を付けていったら、結果として自分たちでもすごく満足のいく仕上がりになりました」(ヤマモトシンタロウ)。

「前のアルバムはほぼ勢いだけで作ったようなところがあったんです。でも前のように演奏していたら今回は成立しなかったような曲が多いと思いますね。そういう意味でもレコーディングの難しさを痛感しました」(アサカワヒロ)。

プロデューサーとして小林武史がしっかりバックアップしてはいるものの、最終的な調整は自分たちで行ったようで、ファースト・アルバム『Quartette Parade』より遥かにシンプルな構造の曲が増えたのも彼らの判断だったという。もちろんシャープに切り込んでいくビート・ナンバーもあるが、アルバム全体で雄大な情景を描いていくような作品となったのも、彼らの意識が大きく改革されたからなのだろう。

「今回のアルバムを作る前に、メンバーだけでものすごい話し合ったんです。お互いのパートにそれぞれちゃんと意見を言ったりして……まあバンドとしてやっと始まったって感じですね」(カナタ)。

 

PROFILE/lego big morl

カナタタケヒロ(ヴォーカル/ギター)、タナカヒロキ(ギター)、ヤマモトシンタロウ(ベース)、アサカワヒロ(ドラムス)から成る4人組。2006年に大阪で結成。2007年より関東近県でのツアーなど活動の範囲を広げる。同年にライヴ会場で配布した無料音源“テキーラグッバイ”が話題に。2008年5月にタワレコ限定でシングル“moonwalk for a week”を、6月にミニ・アルバム『Tuesday and Thursday』を発表。夏フェスなどのイヴェント出演で注目を集める。2009年1月に初のフル・アルバム『Quartette Parede』をリリースしてワンマンを含む全国ツアーを敢行。今年8月の先行シングル“バランス”を経て、9月1日にニュー・アルバム『Mother ship』(ORS-LLP)をリリースしたばかり。

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年09月17日 14:15

更新: 2010年09月17日 14:15

ソース: bounce 324号 (2010年8月25日発行)

インタヴュー・文/岡村詩野