こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

Droog 『Violence』

 

 

今度は大分・別府からアンファン・テリブル(恐るべき子供たち)の登場だ。幼稚園からいっしょという今年19歳の4人組、Droog。会ってみると、ヴォーカルのカタヤマヒロキはホラーズを意識したという(すなわち、ニューヨーク・ドールズ時代のジョニー・サンダース風の)髪型だし、ギターの荒金祐太朗はバズコックスのTシャツを着ていた。そして、カタヤマのカバンの中にはボロボロになった名音楽書「パンク・ライナーノーツ」(森脇美貴男 著)が。これで10代? まるで年配のパンク第一世代と話しているみたいだ。

「中学の時の数学の先生がパンクを教えてくれたんです、セックス・ピストルズのアルバムを。そこから中古CD屋でいろいろ買い集めるようになって」(カタヤマ)。

小学6年生の時に初めて楽器を手にしたという彼らだが、実際にバンドを始めたのはそのパンクの洗礼を受けた中学2年の時。最初はオリジナル・パンクのコピーだった。

「でもすぐオリジナルを作りはじめて。最初はとにかく速くて短い曲(笑)。でも、ラモーンズの“53rd & 3rd”を聴いて、こういうミドルテンポでロウ・パワーな曲もいいなと思えてきたんです。それがいまの原型になっていますね」(荒金)。

ソングライティングは最初の大枠とリフを荒金が作り、メロディーをカタヤマが作るというやり方。これはいまに至るまで変わっていないそうだが、力ずくで爪痕を残すような曲だけではなく、ボディーブロウのように後からアザが浮き出てくるような曲も、今回の2枚目となるミニ・アルバム『Violence』からは増えている。カタヤマによる退廃的なアウトロー感を纏ったリリックをソリッドなギター・リフや起爆力のあるビートにひたすらぶつけるというより、メロディーとリズムのコンビネーションや曲の構造をしっかり捉えたようなナンバーも多い。いまでは地元を中心に多くのオーディエンスを集める人気バンド。曲をしっかり作り上げて聴かせる醍醐味を覚えたのかもしれない。

「最初は〈パンク〉にこだわっていたんです。やっぱり、何かに対してとにかく反抗するような気持ちがあったんですよね。漠然と何もかもがくだらないなって。その気持ちがバンドに向かっていたんだと思います。自分を壊す瞬間がパンクだなって思えてたから。でもお客さんの前でライヴをやったら、そういう気持ちが変わってきた。自分のやっていることにリアクションがあるってことはこんなにすごいんだって」(カタヤマ)。

もちろん、年齢的にも彼らはリバティーンズやジェットなど2000年代以降のバンドにも少なからず影響を受けているし、勉強熱心な彼らはスターリンやルースターズ、ブルーハーツなど日本のバンドも聴いている。しかしながら、彼らはただパンクの歴史の上に横たわった幻想を辿っているのではなく、無邪気に大好きな音楽に少しでも近付こうとしているだけだ。やっぱりそこは10代。中古レコードを買うことが楽しくて、東京へ出てくるたびについつい大量に買い込んでしまうとはにかむ彼らの笑顔には、まだまだあどけなさが残る。新作に収録された“お気に入りのレコード”の歌詞の一部が象徴的だ。〈こうしちゃいられない/待ってたって聞こえない〉——そう、90年代生まれの彼らは手を伸ばして何かを掴もうとはしていても、まだそれが何かがわかっていない。でもその闇雲なパッションは、いまなお時としてロックンロールの持つ衝動と接合する。その時、Droogのようなバンドが生まれるということだ。

「古いとか新しいとか、そういうのをあまり考えたことはないんです。ただ、カッコイイと思える音楽をやっているだけ。これからもそこは変わらないと思いますね」(カタヤマ)。

 

PROFILE/Droog

カタヤマヒロキ(ヴォーカル)、荒金祐太朗(ギター)、多田拓斗(ベース)、右田智弘(ドラムス)から成る4人組。大分は別府出身で、幼稚園の頃からの幼馴染み。小学6年の時に原型となるバンドを結成し、中学2年より本格始動。2007年にバンド名をDroogとする。2008年に大分のバンド・コンテスト〈ロックンロール・ハイスクール Vol.1〉で優勝。2009年に〈閃光ライオット〉の地区大会に出場し、順調に勝ち上がるが途中でボイコットして注目を集める。2010年2月にミニ・アルバム『Droog』を発表。夏には〈PUNKSPRING〉〈サマソニ〉〈ROCK IN JAPAN〉など大型フェスにも出演して話題となるなか、10月6日にセカンド・ミニ・アルバム『Violence』(redrec)をリリースした。

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年10月15日 14:25

更新: 2010年10月15日 14:26

ソース: bounce 325号 (2010年9月25日発行)

インタヴュー・文/岡村詩野