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インタビュー

COMBOPIANO

ストレート・エッジの真逆を行く、二日酔いのハードコア!

渡邊琢磨による不定形音楽ユニット、コンボピアノのスピードが止まらない。初期のジャズ、クラシックを基調としたクールで実験的な作風からは、まったく想像もつかない性急なサウンド。生き急ぐような速度と耐久性がぶつかり合い、危うきに遊ぶテンションが沸き立つハードコアに変貌した彼が、ライヴでお馴染みの千住宗臣(ドラムス)、内橋和久(ギター)という最強の布陣を従え、ついにトリオ編成でのアルバムをリリースした。

渡邊曰く「せーの、という勢いで録れる感じのものを用意した」という楽曲は、3人による磨き抜かれた演奏がびっしりと凝縮されている。なかには、2分にも満たないブラスト・ビート曲もドタバタと顔をのぞかせる。

「彼を知ったのは、クラシックの『Agatha』やったんで。ドカドカドカみたいなデモが送られて来たときにはがっかりしましたねー(笑)。そんなイメージまったくなかったんで。インテリそのもの、みたいな」(千住)

そう、2006年リリースの渡邊のソロ『冷たい夢、明るい休息』あたりから彼の音楽はどんどんハードコア化してきている。それは、そんなインテリジェントなイメージをぶち壊すための試みだったのだろうか?

「全然そういうのはなかったんだけど……逆にパブリックイメージみたいなものが出来なくなってきて(笑)。で、勢いでいろいろやるようになったんです」(渡邊)

「ほぼスコア通りにがっちりやりながらも、〈ギャー〉とか〈ファーーック〉とか、譜面を必死に見ながら演奏しているすごく変な状態」(渡邊)という楽曲は、テレビのチャンネルをガチャガチャ変えたような人力カットアップの応酬が印象的だ。また3人が共通でもっている、という〈ずれるおもしろさ〉〈ずれるけどどこまで保てるか〉というグルーヴの妙もインパクト大である。

「昔は、〈どうだ、俺って複雑だろ〉みたいな感じでやっていたところがあるんですけど、今はでっかいグルーヴを作るための要素としてやっていますね」(渡邊)

いまやPARA、ウリチパン郡のほか、気鋭の音楽家たちとの多くの交流で大忙しの千住だが、彼にとってコンボピアノとはどういう場所なのだろう。

「うーん。楽かなー。その軸から外れれば外れるだけその振り幅が曲に生かされるっていうか。スコアはありますけど、適当さとか荒々しさがグルーヴになっていくユニットなんで、そこは楽しいですね」(千住)

「……このプロジェクトもがっちり決めているつもりなんですけど」(渡邊)

今回、新作と同タイミングで2007年に限定販売されていたベスト盤『Collected Works 2000-2007』が復刻された。改めてそのサウンドの変貌には驚くばかり。

「この辺ですごく渋いピアノ・ソロのアルバムとか出しておかないと、もう戻れなくなるんじゃないかなー。1音しか弾かない……みたいな(笑)」(渡邊)

『リリース・パーティ』
10/19(火)東京・新代田 FEVER
出演:COMBOPIANO他
http://www.takumawatanabe.com/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年10月15日 12:09

更新: 2010年10月15日 12:21

ソース: intoxicate vol.87 (2010年8月20日発行)

interview & text : 久保正樹