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インタビュー

村治佳織

多ジャンルの名曲を詰め込んだ太陽の香りのする贈り物


写真:橋本直己

前作『ポートレイツ』ではショパンの《夜想曲》(タルレガ編曲)、 シューマンの《トロイメライ》(セゴビア編曲)からビートルズ、坂本龍一、ディアンスまで、実に多彩な選曲で我々を驚かせてくれた村治佳織。その第2弾となる新作『ソレイユ』では、さらに新たな世界へ飛び出した。例えばブラジル音楽の巨匠ルイス・ボンファの作品や、佐藤弘和の編作による《ギターのためのカルメン組曲》、それにあのキース・ ジャレットの《ケルン・コンサート》(バルエコによるトランスクリプション)など、クラシカル・ギターで可能な音楽表現の果てを目指す旅人のような、幅広さだ。

「これまでの【DECCA】での録音はいつもコンセプトを変えて行なってきました。同じコンセプトでアルバムを作るのは初めての試みなんです。今回は自分で発見した過去の名曲も入れたり、これまで弾きたいなと思っていたけれど、出来なかった作品を入れたりと、とても充実したアルバムになりました」

ある時、店頭で見かけたCDをジャケ買いした。それがバーブラ・ストレイザンドのアルバムで、その中に収録されていた《ザ・ウェイ・ ウィー・ワー(追憶)》を今回のアルバムに収録した。

「バーブラの存在は知っていましたが、実はこの名曲はCDを聴くまで知らなかったんです。でも、とても素晴らしい曲でぜひ演奏したいということで、佐藤弘和さんに編曲をお願いしました」

オリヴィア・ニュートン=ジョンの名唱で知られる《そよ風の誘惑》(1975年)、ギルバート・オサリヴァンの大ヒット曲《アローン・アゲイン》(1972年)など、往年のヒット曲も。村治の生まれる前の傑作だ。

「基本的にこうした作品は今回アルバムを作るまで知らなかったんです。でも、過去にこんな素敵な曲があるということを再認識しました。クラシックだけじゃなく、ポピュラーにももっと再発見が必要ですよね」

今回のアルバムの目玉とも言えるのが、ビゼーのオペラ『カルメン』を元にした《ギターのためのカルメン組曲》。

「プロデューサーの篠原(良)さんが、ヴァイオリンにはサラサーテなど名曲があるのに、どうしてギターにはないんだろうと以前から仰っていて、その言葉がきっかけで、今回佐藤さんに新たにギター版のカルメン組曲を作って頂きました。オペラの良い所取り。名シーンは全部入っているし、冒頭の打楽器的な音色を取り入れた部分から最後まで楽しんで聴いて頂ける自信作です」

この作品を実際に演奏している姿が、初回限定盤の特典DVDに収録されているので、村治ファンのみならずギターファンはチェックして欲しい。

「セルシェル編のビートルズ作品は例によって彼の手書きの楽譜を見ながらの録音。ブラジル音楽やバリオス作品など、これまであまり取り上げてこなかった作品も楽しんで欲しいです」

村治の音楽の旅はまだまだ続く。

『村治佳織コンサート・スケジュール』

10/21(木)京都コンサートホール大ホール(指揮:マティアス・パーメルト/京都市交響楽団)
10/27(水)仙台市青年文化センターコンサートホール
11/10(水)ふくやま芸術文化ホールリーデンローズ(指揮:秋山和慶/広島交響楽団)
11/13(土)常陽藝文ホール
11/14(日)サンケイホールブリーゼ
11/27(土)野木町文化会館エニスホール、他
http://www.musicachiara.com/dulcinea/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年10月19日 18:05

更新: 2010年10月20日 11:31

ソース: intoxicate vol.88 (2010年10月10日発行)

interview & text : 片桐卓也