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インタビュー

David Reinhardt

イヴァン・リンス好きのラインハルト家三代目

今年2010年は、マヌーシュ・スウィングの歴史的存在であるギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの生誕100年にあたる。これを機に、ジャンゴの孫でやはりギターを自らの表現手段に選んだダヴィド・ラインハルトが、『東京JAZZ2010』に出演するために初来日を果たした。

1986年生まれのダヴィドは、1953年に他界した祖父と直接会う機会には恵まれなかったが、同じくギタリストの道を選んだ父バビクに幼い頃から手ほどきを受け、6歳の時には父との共演という形で初舞台を踏む早熟ぶりを見せた。その後は伝統的なマヌーシュ・スウィングのスタイルで演奏する機会が多かったようだが、ギター3人という編成による自身のグループで2004年に発表した初リーダー作『David Reinhardt Trio』では、マヌーシュ・スウィングばかりでなく、様々なスタイルの音楽が取り上げられていた。「6歳で父と共演した時にもギター3人という編成でしたが、当時の私はアメリカのファンクやヒップホップ、それにブラジル音楽などの影響も受けていましたし、父もいろいろな音楽を幅広く聴かせてくれていました」と彼は言う。

その後間もなく、ダヴィドはジャズ・ギターのもうひとつの伝統的フォーマットと言えるオルガン・トリオでの活動を始め、2枚目となる2008年の『The Way Of Heart』もそのトリオを中心に、曲によってゲストを迎える形でレコーディングした。「オルガン・トリオも小さい頃からよく耳にしていました。父もエマヌエル・ベックスとオルガン・トリオを組んで活動していましたし、ウェス・モンゴメリーのトリオや、ルネ・トーマスがエディ・ルイスと組んだトリオなども大好きでした」と語る彼にとっては、オルガン・トリオもごく自然なフォーマットだったことになる。

この2枚目も1枚目同様、幅広い分野に素材を求めており、ルネ・トーマスやケニー・バレルといったギタリストの作品からスティーヴィー・ワンダーのヒット曲、コッポラの映画『ドラキュラ』のサントラなど、内容は盛りだくさんだが、ダヴィドは斬新な手法やサウンドを模索するよりもむしろ、既存の語法で様々な気分や感情を豊かに表現していくことに重きを置いているように思える。

「来年の1月には新作をレコーディングする予定です。2枚目も自分の好きな曲だけを取り上げましたが、次は全曲オリジナルで、同じオルガン・トリオですがゲストは無しでいくつもりです」ということで、3枚目はより自信に満ちた作品になりそうだ。

ちなみに、好きな作曲家はイヴァン・リンスだそうだが、「曲のアイディアは、朝起きたばかりでまだ気分が新鮮な時に思い浮かぶことが多いですね。アイディアが思い浮かんだら、すぐにギターでレコーディングしておきます」と言う彼にとって、イヴァン・リンスの爽快な音楽は感覚的にぴったりなのかもしれない。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年11月02日 20:18

更新: 2010年11月02日 20:24

ソース: intoxicate vol.88 (2010年10月10日発行)

interview & text : 坂本信