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インタビュー

ハイスイノナサ 『想像と都市の子供』

 

視覚的な刺激を音に変換し、イマジネーション豊かなサウンドが生み出された——さて、これを聴いてどんな街が浮かぶ?

 

 

2004年に結成されて以来、ポスト・ロックやエレクトロニカを吸収しつつもそのどちらにもあてはまらないような独自のスタイルで注目を集めてきた5人組、ハイスイノナサ。彼らがセカンド・ミニ・アルバム『想像と都市の子供』を完成させた。昨年リリースされた初作『街について』の方向性を受け継ぎつつも、よりソングライティングや〈歌〉を意識したようなサウンドが印象的だ。

「最初は新作に向けていろんな実験をやっていたんですけど、なかなか思ったところに辿り着けずに時間がなくなってきて。だったら、前作でやり切れなかったところを出していこうと思ったんです。例えば電子音を採り入れたりだとか、ヴォーカルの鎌野(愛)の声に合ったメロディーを作るとか」(照井順政、ギター)。

「正直、もっとフレーズやサウンドを磨き上げる時間があれば……という気持ちもありますけど、ソングライティングは前作よりも全然進んでいるし、次の段階に上がったと思ってます」(中村圭祐、ドラムス)。

変拍子やミニマルなフレーズと電子音を織り交ぜたバンド・アンサンブルから、ふわりと浮かび上がる柔らかな女性ヴォーカル。これまでのスタイルの延長線上にありながらも、そこには彼らが新たに手に入れた淡い色彩感がある。

「フレーズとか楽曲に関しては、あまり音楽から引っ張ってきたくないんですよね。僕らの技量だったら、すぐに何に影響されたかわかってしまう。それよりも、僕は建築とか絵画とか視覚的な芸術が好きなんで、そういったものを見た時に受けた感覚を音楽で表現したいんです」(照井)。

「彼(照井)が曲を書いているんですけど、曲のイメージを説明される時も、ヒントになる絵を見せてもらうほうがわかりやすいんですよ。例えば〈キラキラした感じで〉って言われるより、彼が持ってきた絵を見たほうがすぐ理解できる」(中村)。

「好きな建築や絵を見て、〈これをどうやったら音にできるのか?〉と思ってやっているうちに」(照井)、いまのスタイルに辿り着いたという彼ら。ヴィジュアルからインスパイアされた感覚をサウンドに変換し、その過程で膨らむイマジネーションが彼らのサウンドに奥行きを与える。そして、それを聴いたリスナーの頭のなかで曲のイメージはさらに広がっていく。

「曲のなかに無限の情報があってほしいと思うんです。例えば〈鬱〉をテーマにした曲があったとしても、その面しか見えてこない曲では意味がない。現実の世界って無限の情報があるじゃないですか。そういう奥行きのある曲を作っていきたいと思うし、そういったいろんな情報が投影されているのが、前作からテーマにしてきた〈街〉なんです」(照井)。

建築のように音を組み立て、絵を描くように音楽を奏でるハイスイノナサ。まさに彼らこそ〈想像と都市の子供たち〉だ。

 

▼関連盤を紹介。

ハイスイノナサの2009年のミニ・アルバム『街について』(残響)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年12月07日 20:05

更新: 2010年12月07日 20:05

ソース: bounce 327号 (2010年11月25日発行)

インタヴュー・文/村尾泰郎