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インタビュー

ACIDMAN 『ALMA』

 

脇目も振らずに理想の音楽を追求してきた彼らの集大成的な新作。アルマの星空に思いを馳せながら、〈心〉の歌に耳を傾けて……

 

 

いまだかつて鳴らされたことのない理想の音をめざして進む、壮大なるACIDMANサーガの第8章——通算8枚目のニュー・アルバム『ALMA』は、これまでよりも徹底的に音の一粒、言葉の一音に磨きをかけた細密なサウンドでありつつ、キャッチーなロックとして大きく開放された、とてつもない作品に仕上がっている。

「いままでは俺が作った曲を3人でスタジオに入って、揉んで揉んで形にしていたんだけど、今回はそういう時間をほとんどなくして、自分でやって2人に聴かせるっていう形にしました。無駄な時間がなくなったおかげで、曲作りはいままで以上にすごく集中できたと思います」(オオキノブオ、ヴォーカル/ギター)。

「オオキが自分ひとりでこもってエネルギーを詰め込む段階があって、それから聴かせてもらった時に、〈この感覚は初めてだな〉というのがありましたね。言葉にするのは難しいんですけど、より深いところに行ったと思うし、同時にACIDMANでしかないものが味わえるものになったと思います」(サトウマサトシ、ベース)。

「曲は本当にいい曲ばかり。演奏はすべてが難しかったけど、とにかく曲が映えているアルバムになったと思います」(ウラヤマイチゴ、ドラムス)。

楽曲はこれまでのACIDMANの集大成と言える、さまざまなタイプがすべて揃った。エモーショナルなメロディーとビートが全力疾走する“風が吹く時”、静と動とが劇的に交錯するグランジ・ロック的な“DEAR FREEDOM”“ONE DAY”、クラシカルなバラード“ノエル”、ラテン調の“レガートの森”、攻撃的なファンク・ロック“Final Dance Scene”……そしてすべてを包み込むドラマティック・バラード“ワンダーランド”による壮大なエンディングへ。すべてが重要な曲だが、特にタイトル曲“ALMA”の神々しい輝きは、現時点での彼らの最高到達点と言い切って良い。

「“ALMA”の仮歌を入れた時に、いままでで初めて満たされた気がしたんですよ。その時は自分でも怖くて、これ以上曲を作る必要はないかもしれないって思ったんだけど、3時間後に家に帰って聴いたら全然感動しなかった(苦笑)。また落ち込んで、こんなんじゃ俺は明日死んじゃう、とか思ったり……それはすごい振り幅だったんですよ。でもその経験ができただけでも続けてきて良かったと思ったし、初めてそんな感覚になったから嬉しかったですけどね」(オオキ)。

タイトルの『ALMA』はスペイン語で〈心〉を意味し、同時にチリのアタカマ砂漠で建設中の〈アルマ望遠鏡計画〉のことも指すダブル・ミーニング。宇宙の果てと生命の起源を探る壮大な計画と、人間の心と命の不思議について歌い続けてきたACIDMANの世界観には、通じ合うものが確かにある。

「物質ではないものを手に入れれば入れるほど心は疲弊していって、物を捨てれば捨てるほど心が満たされる。人間の心のバランスはとても難しいけど、それをうまく保つことがこれからとても大事になってくる時代だ、というテーマがあったので、ほとんどの曲に〈心〉という言葉を入れてます。タイトルは、実際にチリのアルマを見に行った時に決めたんですよ。そこには本当に自分が思い描いていた星空があって、ずっと想像の産物のなかで書いていた言葉やメロディーが、あの場所に行って〈合ってるな〉と思ったから。自分が思い描いていた世界は正しかったんだと思って、このタイトルにしました」(オオキ)。

こういう作品が作れたからこそ次が大事だと、オオキの視線はすでに次回作へと向いている。至高の音を探す旅に、きっと終わりはないのだろう。

 

▼ACIDMANの作品を紹介。

左から、2002年作『創』、2003年作『Loop』、2004年作『equal』、2005年作『and world』、2007年作『green chord』、2008年作『LIFE』(すべてEMI Music Japan)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年12月17日 15:44

更新: 2010年12月17日 15:44

ソース: bounce 327号 (2010年11月25日発行)

インタヴュー・文/宮本英夫

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