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インタビュー

SHANTI

「シンガーとして、声のニュアンスや深みで表現できる曲を選びました」

──『BORN TO SING』のリリースが6月。そこから間を空けずにこの『ROMANCE WITH ME』が制作されて。2010年は忘れられない一年になったんじゃないですか?

「そうですね、まだ走りっぱなしの状態で、振り返る余裕はまったくないんですけど。『BORN TO SING』をレコーディングしたとき、その時点での自分のありのままを背伸びせず素直に表現したかったんですね。それをやり遂げて、いままで私の歌を届けられなかった人たちに手渡すことができました。それまで表舞台にはあまり出ていなかったけれど、歌だけでやってきたという自信だけはあって。それに加えてアルバムを届けることで、認めてもらったという自信が芽生えました。いままで行ったことがなかった街でライヴをやって、歌うたびに曲が成長していく感覚を得たりして、場数を踏んだだけの自信がついた感触があります」

──ここ最近の出来事で特に印象的だったことは?

「10月に〈デヴィッド・フォスター・アンド・フレンズ〉を観させてもらったんです。そこにナタリー・コールが出演していて、そのまんまですごく自然だった彼女がいちばん輝いて見えたんです。その後、彼女と会うチャンスがあって、『私、今度レコーディングしなきゃいけないんです』とか自分の相談をしちゃって(笑)。そしたら『ただ楽しんで歌えばいいのよ』って言ってくださって。シンプルなひと言だけど、深く響いた。その言葉のおかげで、アーティストとしてどう成長していきたいのか確認できたというか」

──自分の歌がリスナーたちに確実に届いているって実感から得たのであろう自信が、このメジャー2作目にしっかりと反映されていますね。

「場数を踏んだ力を込めつつ、もうちょっとステップアップした自分を表現しようと臨みました。私のなかで『BORN TO SING』って風景画っぽい印象があるんです。だけど、今回はもっと 人の心を掴みにいくような表現の仕方をしたかったというか、エモーショナルな面が出たと思います。まず〈ロマンティック〉というテーマがあったんです。プロデューサーからその提案があったとき、パッとエモーショナルな感じがいいなと閃いて、それに沿って選曲を進めていった。もっとオリジナル曲を入れても良かったんですけど、ソングライターというよりもシンガーとして、声のニュアンスや、深みを表現できる曲を選びました」

──前作と比べると、格段に歌が濃ゆくなっているし。

「その曲自体がいつだって私に歌い方を教えてくれるんです。歌詞の内容やメロディによって引き出された感情や歌のカラーが、前作よりも大人な感じだと思います。自分のなかにいるいちばん妖艶な私を出してみたり。『BORN TO SING』って私の柔らかい部分が出たって感じがします。でもそれだけじゃなくて、もっと人間っぽさを出してみたいと思ったんですよね」

──小松亮太さんと共演した《How insensitive》なんて年齢不祥なSHANTIが出ていて、すごくおもしろい。それと今回も邦楽のカヴァーをやられていますよね。ディストーションを効かせたギターをバックに歌うRCサクセションの《スローバラード》。

「最初は、どうやって歌えば……ってすごく迷いました。でも実際に歌ってみて、しっくりきたんです。忌野(清志郎)さんはもともと素敵な人だと思っていたけど、この曲を歌ってみてより納得したっていうか。《アヴェ・マリア》の要素を採り込んで彼へのリスペクトを込めました。賛美歌的な要素にディストーション・ギターでロックな要素もミックスさせました。ひとつひとつの曲をピックアップしてみたら、ロマンティックな要素が強いって言えないかもしれないけれど(笑)、通して聴いてもらえれば、ロマンティックなアルバムだと感じてもらえると思います。そうそう、録音当日に知ったんですけど、この曲をレコーディングしたスタジオは、忌野さんもよくレコーディングしていた場所だったんですって」

──それはすごい偶然ですね。さて、新作が出来たばかりだけど、今後の作品作りでめざしていることは?

「次作るとしたら、バンドでツアーをして、録音する全曲を演奏してみる。それで、みんなが持ってるものを全部出し切って、これがベスト・ポイントだよね、ってところでレコーディング・スタジオに入れたらまたスムーズかなと。バンドのみんなとモノ作りをしていくなかで、全員がベストなコンディションに合わせていければいいのですが。前にそのことで悩んで、ジョー・サンプルにメールを打ったんですよ。そしたら、クルセイダーズはライヴのあとがいちばん良かったから、ツアー後にレコーディングしていたらしいんです。そういうふうにレコーディングするポイントを決めることも今後の重要な課題だと思っています」

──ということは、この次はかなりアグレッシヴな面が表れた作品が登場するなんて可能性もあるのかな?

「そうですね。あるかもしれませんね」

SHANTI:神奈川県逗子生まれ。「ゴダイゴ」のドラマー、トミー・スナイダーを父に持つ。ソングライティングのセンスや歌唱力が多くのアーティストを魅了し、桑田佳祐、サディスティックミカバンド、CHAR、小林桂、TOKU、マリーン、TAKE6、小沼ようすけなど、名だたるミュージシャンたちと、様々な形でコラボレーションしてきた。2010年6月、コロムビアよりメジャーデビューアルバム『BORN TO SING』をリリース。
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カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年01月26日 13:35

更新: 2011年01月26日 15:16

ソース: intoxicate vol.89 (2010年12月20日発行)

interview & text:桑原シロー