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インタビュー

モーモールルギャバン 『BeVeci Calopueno』

 

 

京都の大学の仲間で結成されたものの、〈関西ゼロ世代〉以降のシーンのどこにも属さずに活動をしてきた。地元関西ではなかなか火が点かずに苦しんだ時期もあったという。あるいは徐々に話題になってはきたものの、履いているパンツを投げるライヴ・パフォーマンスにばかり言及されて悩んだこともあっただろう。だが、この内容ならもはや誰も文句を言うまい。モーモールルギャバン、メジャーからのファースト・アルバム『BeVeci Calopueno』で堂々見参である。

「大学の時にこの3人でEGO-WRAPPIN'みたいなことからキング・クリムゾンみたいなことまで、とにかくやりたいことをやっていたんですよ。だからここにきて〈音楽的な幅が広がった〉とかって言われてもピンとこないんです。むしろ、もともとの経験が何となく血となり肉となってきたのかな、という気がしますね」(ゲイリー・ビッチェ)。

「自分たちではわからないですけど、1年前よりは恥ずかしくない……というか、堂々とやれてる感じはありますね。そういう意味では過去のやってきたことが活きているのかもしれない」(T-マルガリータ)。

かなりパンキッシュで破天荒なイメージのあるトリオではある。だが実際は、パンクやファンク、ソウルなどさまざまな要素を取り込みながら、ポップであらんとする美学に貫かれた連中。一見、そのスタイルがあまりに攻撃的であるがゆえに、あるいはそのリリックがあまりに赤裸々であるがゆえに珍獣と思われているフシもあるが、彼らがめざしているのはあくまでJ-Popのど真ん中だ。

「ここ1年くらい結構なスピードでアウトプットを求められるようにもなったんですけど、恥ずかしくないものを作りたかったからかなり音楽制作に集中したんです。だからプレッシャーでもあったけど、同時に〈水を得た魚〉のようでもありました。というのも、しっかり曲を作ってレコーディングしてからライヴで披露……というスタイルでやってみたかったからなんです」(ゲイリー)。

「ライヴはライヴでいいんですけど、今回はまず音楽を、という思いがありました。だから分担作業をしたんです。歌モノはゲイリーが書いて、インストはほぼ私が書きました」(ユコ・カティ)。

「最初は不安だったんです、(ユコは)グダグダな人なんで(笑)。でも、今回は本当に頼んで良かったなあと。というのも、いままでのモーモーって訳のわからないものをごちゃ混ぜにした得体の知れない破壊力で勝負してきたようなところがあったと思うんですよ。だから今回は、歌モノはちゃんと歌モノとして作りたかったし、茶化したものは徹底的にいく、みたいにしたかったんです」(ゲイリー)。

制作期間中は、ライヴ活動をしなくなった中〜後期のビートルズ作品を聴いていたという彼ら。その結果、アグレッシヴな曲は徹底的にアグレッシヴに、甘美な曲は徹底的に甘く……と曲ごとの〈距離〉がこれまで以上に広がった。この距離こそがモーモールルギャバンなのだ、これでJ-Popのど真ん中をめざすのだ、とでも言わんばかりに一曲一曲のキャラは明確だ。とりわけ、メロディアスな曲に懸けるゲイリーの思いは半端なく、代表曲“パンティー泥棒の唄”や“美沙子に捧げるラブソング”に窺える〈自己主張=露出癖〉が、今作では情感たっぷりのメランコリックなナンバーに結集されていると話す。

「例えば“rendez-vous”とかはあまりに飾り気のない自分がありのままに出た曲で。自分の声で汚すのがイヤで、まだマシなユコに歌ってもらったんです(笑)。今回はレコーディングの前日くらいまで歌詞に悩んでいて。そのくらい魂を切り刻んで作った歌詞が今回は多いんですよ」(ゲイリー)。

 

PROFILE/モーモールルギャバン

ゲイリー・ビッチェ(ドラムス/ヴォーカル)、ユコ・カティ(キーボード/ヴォーカル)、T-マルガリータ(ベース)から成る3人組。2005年に京都で結成され、同年の『モーモールルギャバン』を皮切りに3枚の自主制作盤を発表する。幾度かのメンバー・チェンジを経て、2007年から現在の編成となり、2009年にFM802主催〈MUSIC CHALLENGE 2008〉でグランプリを受賞。同年、ミニ・アルバム『野口、久津川で爆死』をリリースし、〈CDショップ大賞〉の関西ブロック賞を受賞する。2010年にメジャーへ移籍し、2枚目のミニ・アルバム『クロなら結構です』を発表してさらに認知を広げるなか、ファースト・フル・アルバム『BeVeci Calopueno』(Getting Better)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年03月16日 17:59

更新: 2011年03月16日 18:08

ソース: bounce 330号 (2011年3月25日発行)

インタヴュー・文/岡村詩野