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インタビュー

嘘つきバービー 『ニニニニ』

 

嘘つきバービー_特集カバー

 

[ interview ]

まずは〈物語〉ありき。ソングライター・岩下優介(ベース/ヴォーカル)の頭のなかに広がるシュールな妄想を言語化し、さらには音像化するという手法で独自のサイケデリック・ガレージな音世界を構築する3ピース・バンド、嘘つきバービーが、メジャー・デビュー・アルバム『ニニニニ』を完成させた。

制作は〈音楽というカテゴリで何か表現しなさい〉というお題にみずから答えていく作業だとする岩下だが、昨年10月に落語家をオープニング・アクトに迎えたワンマン・ライヴを開催する際には、〈そもそも嘘つきバービーはバンドなのか?〉とすら考えるところから始めたと言う。

演奏スキルの向上に伴い、これまで言葉が担っていた表現の比重が音にやや移行。また、プロデューサー/エンジニアにヨシオカトシカズを迎えることで、過去最高のライヴ感とドライヴ感が付加された本作について、バンドのブレーン=岩下に訊いた。

 

 

起承転結の一部を音に任せた

 

――2008年11月のファースト・フル・アルバム『問題のセカンド』から今回の2作目『ニニニニ』までの間に2枚のシングル『バビブベ以外人間/ねこ子』『化学の新作』を挟んでいて。本作に収録ということもありますし、まずはそのシングルを振り返りたいのですが、“バビブベ以外人間”とは、確か嘘つきバービーの前身バンドの名称でしたよね?

「そうですね。なんか(歌詞のなかに)犬が出てきたんで、ここでタイトルに“バビブベ以外人間”って出したろかい、バービー(当時の岩下の飼い犬)のためにも……みたいなところですかね。あんまりストーリーとは関係ないかもしれないです」

――いつも先にストーリーを考えて、そこから曲を膨らませるということでしたよね?

「そうですね」

――あと、『問題のセカンド』のテーマは〈切なさのなかに可笑しみがある〉だったかと。

「はい。そこらへんは今回も変わってないです。〈切ない可笑しみ〉っていうのは、『問題のセカンド』からずっと意識してますね」

――そこから今回の作品までは、そのテーマの元に言葉と音を研ぎ澄ます、という作業だったんですか?

「どうですかねえ……『問題のセカンド』の頃って僕、けっこうワンマンだったんですよね。僕が他のメンバーに〈こういう世界〉って言って、音を入れてもらって。それで僕が思い描いてるイメージにピッタリだったらオッケーっていう、そういう世界だったんですけど、“バビブベ以外人間”の次ですかね? 『化学の新作』の時ぐらいから、僕が書くストーリーに起承転結があるとしたら、〈起〉の部分だったりを音に任せてもいいかなーっていうところがありまして。それから、〈起〉とか〈転〉っぽいのをギターに任せたりするようになりましたね」

――それは例えば音だけで〈起〉を描いて、〈承〉から言葉が始まるとか?

「そういうことです。だから言葉としては、説明する部分が少なくなりましたね」

――それはどういう変化だったんですか?

「僕、別に音楽が好きだったわけでもなく、音楽を始めたきっかけも、自分の表現方法のひとつとして選んだというだけで。ただまあ、バンドをやってるんで、バンド的な部分もちょっと見せたいなっていう。みんなも技術的な部分が上がっていってると思うんで、そういうところも見せたほうがいいな、っていう単純な理由ですね」

――とすると、岩下さんが頭に思い描いた絵やストーリーをアウトプットする手段として音楽を選んでいるのは、どういう理由からなんですか?

「うーん、僕が何か単語を言った時に、千布(寿也、ギター)が、僕のイメージを超えてくることがあって。その時に、〈ああ、なるほど〉っていうのがありましたね。僕のイメージよりも格好良いな、それ、って」

――『化学の新作』以降はプロデューサー/エンジニアとしてヨシオカトシカズさんを迎えてますが、これはどういうきっかけだったんですか?

「この〈化学〉をライヴでやった時に、ヨシオカさんが観に来てたんですよ。で、〈イワがやりたいことはわかった〉って言われて。それまでは1回か2回飲んだことがあるぐらいだったんです。ただ、その後スタッフにも〈嘘つきバービーのプロデュースをやってみたい〉って言ってくれたみたいで、その話を電話で聞きながら歩いてる時に、吉祥寺だったんですけど、ちょうど前からヨシオカさんが歩いてきたんですよ。それで、〈あ、これはヨシオカさんとやれ〉ってことかなと思って。僕がプロデューサーを立てるという時は、とりあえず嘘つきバービーを愛してくれている人じゃないとやりたくない、っていうのがもちろんあるんですけど、ヨシオカさんといろいろ話してみたらものすごく愛を感じたし、〈イワは、メンバーに伝えるのが下手だ。メンバーに伝わってない部分の通訳を、俺がやりたい〉って言ってくれて。だからホントにチームとしてやれる人でしたね」

――ヨシオカさんの言う〈通訳〉とは、具体的にどういう作業だったんですか?

「例えば僕が〈こういう色〉とか言うじゃないですか。それをヨシオカさんはもっと音楽的な言葉で千布や(ドラムスの豊田)茂に渡してくれる、みたいな。あと録音する時に、なんて言うんですかね? 監視役、みたいなところもあって。〈そこ、気持ちが入ってない〉とか(笑)」

――(笑)ノリが体育会系な方だと伺ったことがあります。

「そうですね(笑)。でも僕のセンスにはなんも口出ししてこないんですよ。僕が〈こうしたい〉って言うと〈なるほど、じゃあこうしてみようか〉みたいな感じなんで、すごくやりやすくはありました。ヨシオカさんには、プレイとしてというか、もっときっちり演奏していけば音楽的にも良くなるし、っていうところで助けてもらって。僕は感性でしか喋れないんで」

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2011年04月06日 18:00

更新: 2011年04月06日 18:23

インタヴュー・文/土田真弓