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インタビュー

killing Boy 『killing Boy』

 

一度は袂を分かった2人が、7年の歳月を経てふたたび手を組んだ。かつての焼き直しではない新たな表現の創造へ、いま動き出す!

 

 

ART-SCHOOLの木下理樹と、ストレイテナーやNothing's Carved In Stoneなど数多くのバンドで活躍する日向秀和が、新プロジェクトのkilling Boyを始動させた。この2人の組み合わせに、ある種の感慨を覚えるファンは少なくないだろう。そう、彼らはかつて共にART-SCHOOLのメンバーとして活動しており、2003年に日向が脱退して以来、実に7年ぶりのタッグとなるのだ。そのきっかけは、木下がソロ・アルバムの制作を思い立ったことだという。

「ART-SCHOOLは自分の内面の深いところに潜っていく作業で、特に前作『Anesthesia』のレコーディングはホントにボロボロの状態だったんですよ。それで一回フラットに音楽を楽しみたい、〈もともと俺は音楽が好きで始めたんだよな〉っていう、そこに立ち返りたいと思って。それでいちばん好きなベーシストに連絡したんです」(木下理樹、ヴォーカル/ギター/シンセサイザー)。

「なんか懐かしかったですね。当時のART-SCHOOLはがむしゃらな感じだったけど、(今回は)お互いにいろいろ経験して大人になってっていうなかでのセッションだったんで、すごく居心地は良かったです。理樹の世界観は僕大好きなんで」(日向秀和、ベース/シンセサイザー)。

この2人に、Nothing's Carved In StoneやFULLARMORで日向と鉄壁のリズム隊を組んでいる大喜多崇規(ドラムス)と、木下とは盟友とも言えるHINTOの伊東真一(ギター)がサポートとして加わり、自然にバンドへと発展。また、木下が新しいプロジェクトをスタートさせたもうひとつの理由には、plentyやTHE NOVEMBERSといったART-SCHOOLに影響を受けた後続のバンドの存在も大きかったという。

「売れてる云々じゃなくて、ちゃんと影響を与えられたってことが嬉しかったんです。だから、そのぶん次のヴィジョンをちゃんと提示したいって思って。まだ日本で他の人がやってないような音、聴いたことがないようなものを作りたいなって」(木下)。

そんな彼らが鳴らすのは、キュアーやトーキング・ヘッズといったオリジナルのポスト・パンクのストラクチャーと、ニューゲイザーやチルウェイヴといった近年のUSインディー・シーンとの同時代性を感じさせる音色が融合したグルーヴィーなダンス・ミュージック。根っからの音楽ファンである木下の趣向がはっきりと反映されている。

「なるべく音をスカスカにしたかったんです。J-Rockとかは派手なんで、そういうのは一切やめてくれって。コンプもかけないで、デッドな音作りっていうのは強調しましたね。スカスカでダークなんだけど昂揚するみたいな音楽がやりたくて」(木下)。

「リズムがこれだけ赤裸々なプロジェクトはZAZEN BOYS以来なんで、それは楽しいですね。ドラムとベースで立体感を出したくて、点というか、無駄に弾かないけどグルーヴィー、殺伐としてるんだけど踊れるっていうのをめざしました」(日向)。

木下もファンだというOGRE YOU ASSHOLEを筆頭に、近年のUSインディー・シーンとリンクした音を鳴らす若手のバンドは少しずつ増えてきてはいるものの、木下や日向のように、すでに十分なキャリアのあるミュージシャンがそこに踏み込んでいくのはいまの日本ではまだ例がなく、それは実に重要なことのように思う。

「そういう意味でトム・ヨークってすごい尊敬してるんです。常に冒険心を忘れないこととか、自分のスタイルを崩す勇気がある人だと思うから。僕も表現者として、常にそういう姿勢でありたいですね」(木下)。

 

▼関連盤を紹介。

『killing Boy』に参加したアヒトイナザワを擁するVOLA & THE ORIENTAL MACHINEの2010年作『PRINCIPLE』(ユニバーサル)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年04月15日 15:04

更新: 2011年04月15日 15:05

ソース: bounce 329号 (2011年2月25日発行)

インタヴュー・文/金子厚武

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