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インタビュー

ふくろうず 『砂漠の流刑地』

 

ふくろうず_A

トーキング・ヘッズ『Little Creatures』の裏ジャケを彷彿とさせる今回のヴィジュアルだが、リスナー遍歴を訊ねると、「ちゃんとCDを買って聴いてたのは、ビートルズぐらい」だと言う。しかも、曲を書きはじめた理由も「安西(卓丸)に誘われてバンドを組んで、まず最初に1曲ずつみんなで持ち寄ろうっていう話になったんですけど、私しか曲を作ってこなかったんですよ。それで、そのまま私が曲を作る係になって」——と、どこか受動的。そんな一風変わったソングライター・内田万里がすべての作詞/作曲を手掛ける4人組、ふくろうず。発音に独特のニュアンスを含ませた彼女の歌声と、ニューウェイヴやオルタナティヴ系のギター・サウンドがポップに弾ける音世界で着実なステップアップを重ねてきた彼らが、メジャー・デビュー・アルバム『砂漠の流刑地』を完成させた。冒頭からトップスピードで駆け抜ける“もんしろ”をはじめ、本作は内省的な言葉が多かったこれまでの作品に比べてより前向きな言葉が印象的だ。

「書きたいことは、生きていくこと……生き方みたいなことなんですけど、“ループする”とか“ごめんね”(昨年リリースされた初作と2作目の表題曲)はもう、懺悔のような歌詞なんで、そういうのに飽きたというか。自分がダメなやつだっていうのを人に押し付けるような歌詞は、自分でも気持ち悪いなと思って。それを踏まえたうえで、“砂漠の流刑地”では前向きな言葉を使って自分の悪いところも表現できた気がするし、メロディーとかアレンジも含めてわりと満足のいく曲になったんで、これをタイトル曲にしました」。

そうした言葉の変化と呼応するように、今作は楽曲も非常にカラフルな仕上がりだ。例えば、中期ビートルズの如きサイケ感を纏った“トワイライト人間”、80s風味のキッチュなシンセが愛らしい“心震わせて”——初作の時からの付き合いである益子樹の助力を得て、1曲1曲聴き進むほどに色鮮やかなサウンドスケープを描いている。

「80年代にすごく憧れがあって。シンセの音とか、頭がおかしい感じがするじゃないですか。辻褄が合わないっていうか、どこからそのアイデアが出てきたんだろうっていう感じで。今回、PVやジャケットを作るにあたって80年代の音楽を聴いたりしたんですけど、やっぱり好みでしたね。スパークスとか……そうですね、(上掲の写真を指して)このトーキング・へッズとか。両方とも格好良いなあって。〈キラキラ〉じゃなくて〈ギラギラ〉してるの、いいなあと思いました。“トワイライト人間”はだいぶ昔の曲で、ビートルズでは『Revol-ver』がいちばん好きなアルバムなんですけど、ああいう感じっていいよね、みたいなノリで作って。こういうモロにパロディーみたいな曲は、プロでやっていこうっていういまの気持ちじゃ絶対作れないと思いますね」。

さらには會田茂一がプロデュースした雄大なバラード“ユニコーン”やumineco-soundsこと古里おさむと作り上げたカントリー・ライクな“キャラウェイ”など、アレンジの幅も大きく広がった。だが、当人の評価はいたって冷静だ。それはオフィシャルのプロフィールにも表れているが、彼らの急成長は、そうした姿勢の賜物なのかもしれない。

「いままではスタッフが〈New J-Popバンド〉みたいに書いてたんですけど、どうしても嫌だったんで、話し合いの結果〈ただのJ-Popバンド〉という肩書に変更することになりました。そんなハードル上げられても困るなって。でも理想はきっとそこだと思うので、そうなれればいいなと思います」。

 

PROFILE/ふくろうず

内田万里(ヴォーカル/キーボード)、石井竜太(ギター)、安西卓丸(ベース/ヴォーカル)、高城琢郎(ドラムス)から成る4人組。2007年に東京で結成。ライヴを中心に活動するなか、MySpaceにアップした楽曲が口コミで話題となる。2009年にライヴ会場/店舗限定でミニ・アルバム『ループする』をリリース。2010年4月、同作に新曲を追加し、ファースト・アルバムとして全国流通。これが広く注目を集め、イヴェントへの出演も数多くこなすようになる。同年10月に2作目『ごめんね』を発表。直後に行われた代官山UNITでのワンマン公演がソールドアウトするなどライヴの動員を増やすなか、メジャー・デビュー作となるニュー・アルバム『砂漠の流刑地』(エピック)をリリースしたばかり。

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年06月29日 16:08

更新: 2011年07月13日 20:00

ソース: bounce 333号 (2011年6月25日発行)

インタヴュー・文/土田真弓