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インタビュー

SHANTI

「いろんな言語で歌うことで世界に知ってもらいたい」
──夏っぽいサウンドのアルバムをJ-POPのカヴァーで

今年1月に2ndアルバム『Romance With Me』を発表したばかりのSHANTIが早くもミニ・アルバム『Sunny and Blue~J-pop’n Jazz~』をリリースする。今回は、初めてのカヴァー集だ。

「夏に聴きたいアルバムを作りたいね、というのは最初のアイディアでした。夏は海に行くとか遊ぶ機会が多く、しかもそこに音楽が欲しくなる季節じゃないですか。それを意識した夏っぽいサウンドのアルバムをJ-POPのカヴァーで、というのがコンセプトです」

収録曲は、オリジナルが1曲あり、それ以外はカヴァーだが、サザンオールスターズの《真夏の果実~Summer Blue~》とRCサクセションの《スローバラード~Our Ballad》は、過去2枚のアルバムで取り組んだもので、それ以外の選曲が興味深い。1981年生まれの彼女からは想像できなかった4曲。オリジナルラヴの《接吻-kiss-》、大沢誉志幸の《そして僕は途方に暮れる》、フリッパーズギターの《恋とマシンガン》、ビギンの《恋しくて》で、いずれも男性アーティストの歌だ。

「最初にあった候補曲は100曲くらい。その中には当然知らない曲もありました。私の場合、日本語でそのままカヴァーするのではなく、自分で英語に訳して歌うので、直感でこれがいいと思っても、日本語のニュアンスをどうしても訳せなかったり、反対に訳せてもうまくメロディに乗せきれなかったりするので、英語に置き換えてみないとわからない。翻訳の作業は、試行錯誤の連続で、途中で諦めた曲もいっぱい。そのなかで選んだ4曲です。男性アーティストの曲になったのは結果的にですが、でも、男性の歌を女性がカヴァーすると、切なさが増すと思います。そこは好きですね」

SHANTIは、日本人とアメリカ人のミックス。日本に住み、英語で教育を受けた、いわゆるバイリンガルだが、歌に関してはオリジナルでもそうだが、英語で歌っている。

「ライヴ活動を始めた頃は、日本語で歌っていたのですが、だんだん違和感を抱くようになって。私の場合、英語と日本語では全く別人のようになってしまう。その悩みもあって、より感情が表現しやすい英語で歌うようになりました。なので、今回のカヴァーも英語で歌うのが自然でした」

SHANTIが翻訳する際に大切にしているのがソングライターへのリスペクト。出来るだけ歌の設定、物語、感情を変えずに訳している。また、サウンドのアレンジでもオリジナルのイメージを壊さず、その中でいかに自分らしさを投影させることが出来るか。それが課題だったという。その中で例外が1曲。フリッパーズギターの《恋とマシンガン》で、英語ではなく、フランス語で歌っている。


「早口の歌なので、英語でやっても絶対にカッコよくならない。だったらフランス語がいいかと。この曲だけは他の方に依頼して、翻訳ではなく、オリジナルとは違う歌詞を書いてもらいました。それから〈ダバダバ~♪〉というコーラスが入るじゃないですか、それは遊びに来てくれた人達に参加してもらいました。楽しかったですね」

カヴァー以外のオリジナルは、俵山昌之が曲を書き、SHANTIが作詞した《Morning in Rio》。ボサノヴァ調の爽やかな曲で、美しいビーチが閉じた瞼に広がり、涼やかな風が感じられるような曲だ。

「一時Azooというジャズのトリオで活動していたことがあって、その時にベーシストの俵山さんから『僕が作った曲に歌詞を書いてもらえないか』と言われて書いた曲。最初からタイトルがついていたので、リオには行ったことがないけれど、そこから想像を膨らませて、旅先で知り合った男女が一緒に過ごした後、どうしようかと迷っているというストーリーから書きました。現実にはあまりないけれど、見知らぬ街に期待してしまうようなことってあるじゃないですか(笑)」

曲のアレンジは、いつも組んでいる2人のギタリスト、西山“ハンク”史翁と木原良輔が担当。SHANTIはヴォーカル・アレンジを手懸けている。

「ヴォーカル・アレンジも模索の連続でした。基本的にレコーディングはライヴ方式で、コーラスに関しては後から自分の声を重ねていきます。その時にちょっとした息遣いでもニュアンスが変わってくる。声をピッタリ合わせすぎて、機械的になるのは嫌だし、夏らしい緩さみたいなものも出したかった。フワ~ンとした緩さから伝わる夏特有の開放感が欲しくて、何度も何度も試しましたね(笑)」

SHANTIがJ-POPを英語で歌う理由がもうひとつある。日本の歌を海外でも聴いてもらいたいと思っているのだ。

「サザンオールスターズにしても本当にいい歌が多いですよね。海外のアーティストがJ-POPをカヴァーするケースが増えていますが、アルバムをリリースするのが日本だけ、ということが多く、海外で聴いてもらうチャンスがなかなかない。英語に限らず、いろいろな言語で歌うことで世界に知ってもらうことが出来ると思うんですよね」

海外と言えば、6月21日から初めてのヨーロッパツアーを行う。フランス、ドイツ、スペイン、ポルトガルの4カ国を回る。そこでどんな反響を得られるのか。次に会う機会があったら、ぜひ聞いてみたい。


 

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年07月25日 18:53

更新: 2011年07月25日 22:54

ソース: intoxicate vol.92 (2011年6月20日発行)

interview & text : 服部のり子