インタビュー

Cocco 『ザ・ベスト盤』

 

 

 

メジャーデビュー15周年を迎えるCoccoがベスト盤をリリースする。
『ザ・ベスト盤』というこの上なく潔いタイトルが冠されたこの作品は、
アーティストCoccoの偉大なる才能を余す事なく示している。
決して平坦ではなかった15年を経て、なおもシーンの中で強烈な存在感を放ち続ける
Coccoは今、何を思うのだろうか? 

 

「この時代に、滅茶苦茶わがままなCoccoっていう人が、 
                                                                    歌うことを許されているってことがありがたいなって思う」

その才能の偉大さを感じられずにはいられない作品だ。
もはや、いい曲が並んでいる、などというレベルではない。
Coccoのメジャー・デビュー15周年に向け、
8/15に2枚組のベストアルバムがリリースされる。
70万枚以上を出荷した前作から実に10年振りとなるベスト盤だ。

 

大ヒットを記録した“強く儚い者たち”、デビュー曲であるロック・ナンバー“カウントダウン”、
歌詞の文学性が極まった“樹海の糸”など、メジャーデビューからの全シングルを
基本として、アルバム未収録曲やくるりの岸田繁、佐藤征史らと結成した
スペシャルバンドSINGER SONGERとしてライヴで一度だけ披露された“花柄”、
alanに提供した“群青の谷”のセルフカヴァーなどを新たにレコーディングして収録した、
名実共にコンプリート・ベストという内容だ。

 

 音楽性の豊かさ、歌詞世界の深遠さという言葉だけでは語り切ることのできない凄み。
人間の営みの中にある哀切と輝きのすべてを一曲の中に封じ込めるいう離れ業。
そして、素晴しい歌がこんなにも沢山存在するという事実に驚きを禁じ得ない。
 リリースを目前としたCoccoに収録曲リストを見てどんな感慨があるかを訊いた。
それは彼女の決して単調ではなかった15年の歩みを振り返ることにもなるはずだが……。

 

「収録曲は今までにリリースした楽曲リストをベースにして、順番はほぼ時系列。
そもそも「ベスト盤出そうよ」っていう提案をもらった時も、私としては「この前出したじゃん」という感じだった。
でも「10年前だよ」って言われて、「えっ、10年も?」って感じだった。
以前にも増して日々のことで一杯いっぱいだから、言われなければ15周年とかにも気が付かなかったと思う。
10周年の時は30歳になったということもあって、考えることもあったかもしれないけど、
30過ぎたらいろんなことがどうでもよくなってきたというか……(笑)」。

 

確かにCoccoには立ち止まって後ろを振り返るようなタイミングなどなかったのかもしれない。
日々、生まれ来る歌を形にし、それをさまざまな場所で歌うことのみならず、「ゴミゼロ大作戦」や
絵本や料理本、エッセイ、小説の執筆など、まるで何かに追い立てられているかのようなスピード感で
次々と活動を展開してきている。しかもいつもその様子は<全身全霊>という言葉で形容される。

 

「生き急いでいる(笑)。地球の歴史に比べれば人類なんて鼻くそと言ってる割に、焦っていて、
いつも時間がないと思っている……。なんかでも歌のことで言えば、70歳まで生きたとしても、
1年に1回アルバム作ってツアーをやるのが、最短のサイクルでしょ。
そうするとあと何枚アルバム作れるだろう? とか思ったときに、Coccoから出てくるものが
でかすぎて追いつかないから、いつも足りないって思ってしまう」 

 

たとえ振り返る余裕がないとしても、誰にも似ていない、オリジナルな存在として走り続けてきた15年は
自ずと意味や意義を産み落とすことになった。耳障りのよさや、理解されやすいところに決して流れることはなく、
自らの暗部に向き合いながら、世界のきらめきを人一倍美しいものとして捉え、それらすべてを作品に昇華するような
創作姿勢。それは結果的に、この時代における音楽をはじめとするカルチャー/エンターテインメント全般が持つ
可能性との戦いのように見受けられる。

 

 

 

 

「<大衆受け>はしないねえ(笑)。それについては諦めの境地に達しつつあるというか。
でもここのところ思うのは、いわゆるJ-POPシーンで、それでもCoccoっていう立ち位置が認められていて、
リリースもできるし、ツアーもできるっていうのは、ありがたいなってことで。
私が今の時代のアイドルになりたい、って思ってもなれないだろうし、そもそも向いてないだろうし。
そうじゃない場所を見つけないと自分の存在価値を見いだせないと思っていたところはあるから。
そういう意味では、この滅茶苦茶わがままなCoccoっていう人が、あるところでは受け入れられて、
15年もの間、歌い続けられているってことに感謝していますね」 

 

常に時代に敏感に反応しながらも、時代におもねることなく表現し続けてきたアーティストCocco。
一人の人間が全力で生き、愛し、歌う姿が、今日もどこかで誰かの胸を静かに熱くさせている。
その感動を体験するために、何の技術も資格もいらないことは、このベスト盤を聴けばすぐにわかるはずだ。 

 

  

 

■NEW ALBUM 『ザ・ベスト盤』……8/15 on sale!

■SONG LIST…

DISC-1
01.カウントダウン
02.強く儚い者たち
03.Raining
04.雲路の果て
05.樹海の糸
06.ポロメリア
07.水鏡
08.けもの道
09.星に願いを
10.羽根 ~lay down my arms ~
11.風化風葬
12.焼け野が原
13.Rainbow
14.ガーネット

 

DISC-2
01.音速パンチ
02.流星群
03.blue bird
04.陽の照りながら雨の降る
05.甘い香り
06.燦
07.ジュゴンの見える丘
08.絹ずれ
09.ニライカナイ
10.玻璃の花
11.群青の谷 ※新録
12.花柄 ※新録
13.鳥の歌
ボーナストラック
14.Heaven’s hell
(2003.8.15 Okinawa live version)
※初回限定盤のみ収録

 

■LIVE……「Cocco ザ・ベスト盤ライブ5本〆(ジメ)」

9/26(月) Zepp Tokyo
9/28(水) Zepp Osaka
10/3(月) Zepp Nagoya
10/7(金) TOKYO DOME CITY HALL
(旧・JCB HALL)
10/11(火) Zepp Osaka
※その他詳細はHPにて

 

 

■PROFILE… Cocco(コッコ)

女性シンガーソングライターであり、絵本作家としても活躍。
独特の感性によって産み出される作品に感動し多数の音楽ファンから絶大な支持を受け続けている。
来年デビュー15周年という祝年を迎え、自身2作目となるベスト盤をリリース!

 

   
記事内容:TOWER 2011/8/5&20合併号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2011年08月05日 12:00

更新: 2011年08月05日 13:23

ソース: 2011/8/5&20合併号

TEXT:日野淳