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インタビュー

LONG REVIEW――THEラブ人間 『これはもう青春じゃないか』

 

THEラヴ人間_J170

どれだけスマートじゃなくても、どれだけ青臭くても、自分たちが信じる〈熱〉にヘッドスライディングで突っ込んでいくようなバンド。賢いフリをした〈それって○○でしょ?〉というツッコミが先回りして待ち構えていようとも、知ったものかとそれに殉じようとするバンド。『これはもう青春じゃないか』という5曲入りのミニ・アルバムから伝わってくるのは、そういう〈無謀さゆえの美しさ〉だ。

活動拠点は下北沢。結成は2009年。自主流通のファーストEP(現在は絶版)のタイトルが『恋街のすたるじい』。はっぴいえんどからサニーデイ・サービス、もしくは銀杏BOYZ を経由する〈日本語ロックの叙情性〉の系譜に連なる5人組。と、これだけの情報だけだったら、彼らの音楽を半分くらいしか説明したことにならない。THEラブ人間の音楽がまったくのゼロから口コミで支持の輪を広げてきたのは、その音楽の醸し出す〈本気〉が、まるで感染するかのように聴き手に伝わってきたからではないだろうか。例えば“抱きしめて”における、金田康平の嗄れた歌声と、ヴァイオリンを含む5人が奏でる曲後半の激情。そこには、聴き流すことを許さないフックと、思わず胸の疼くような感触がある。

MCとアコースティック・ギターによる異色ラップ・ユニットのMOROHA、天野ジョージ率いる〈肉体派パンク集団〉の撃鉄などとも親交が深いというTHEラブ人間。恐らく、音楽のジャンルやスタイルじゃなくて、照れや衒いを突き抜けた〈熱〉を共振し合えるという感覚があるのだろう。聴く側もやっぱり、そこに心を揺らされるわけだから。

 

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掲載: 2011年08月17日 18:00

文/柴 那典