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インタビュー

cali≠gari 『# 娑婆乱打編』『# 東京、43時00分59秒編』

 

cali≠gari_特集カバー

 

[ interview ]

約1年間という消費期限付きで6年ぶりに活動を再開し、2010年3月以降はふたたび休眠していた異色ヴィジュアル系バンド、cali≠gariが、リーダーである桜井青(ギター)の30代最後のステージとして開催した東京・日比谷野外音楽堂での2デイズ・ライヴをもって再起動を果たしたのが今年の6月。その際に披露された2曲の新曲を含む2形態のニュー・シングル『# 娑婆乱打編』『# 東京、43時00分59秒編』がいよいよ到着した。桜井と石井秀仁(ヴォーカル)という2人のメイン・ソングライターを擁する彼ららしく、2ヴァージョンの新作はそれぞれ異なるカラーを纏った仕様だが、どこを取ってもcali≠gariらしいイビツなポップ感覚に満ちている。

そんな本作について、bounceでは石井へのソロ・インタヴューを実施。新曲に関する話題はもちろん、プレイヤーとしての各メンバーに対するコメントや、現在のバンド内の役割分担、彼がめざす〈cali≠gariのサウンド〉などのトピックを通じて、この4人の魅力に迫る。

 

やめる理由がない

 

――消費期限付きの活動再開も、2010年3月の『≠』をもってふたたび解体。今回のニュー・シングル『#』はそこから約1年5か月ぶりの新作となりますが……先日の野音ライヴといい、今回の再起動はバンドからすると予定通りなんでしょうか? cali≠gariは何かしらの形で続いていくという認識でいいですか?

「そういう話し合いはしないから、個人個人、思うところがあるとは思いますけど、俺は全然やめるつもりはなかったですね。まず、やめる意味がないっていうかね。やめるのって結構意味が必要ですよね」

――まあ、そうですね。〈音楽性の違い〉とか……意味といいますか、理由がありますよね、大体の場合は。

「うん。だから、やめる理由がないのになんでやめるんだ、みたいな(笑)」

――確か、電気グルーヴの石野卓球さんも活動休止明けに同じようなことをおっしゃってました。〈やめる理由がないから続けてる〉って。

「そうですよね、きっと。かと言って、ズルズル続けているような感じだと、どんどん目減りするじゃないですか。だから、いろいろ言ったりやったりするんじゃないですか? そのへんは(笑)」

 

カップリングもまともな曲

 

――(笑)では、『#』のお話に移りますが、これは2010年の復活第1弾シングル『9』と同じく、石井さんが書かれた“娑婆乱打”をタイトルに据えた『# 娑婆乱打編』と、青さんが書かれた“東京、43時00分59秒”をタイトルに据えた『# 東京、43時00分59秒編』の2形態ですよね。『9』はその後に続くフル・アルバム『10』を予告する内容であったと思うんですが、今回の『#』はどうなんでしょう?

「復活したときのシングルでは、昔のcali≠gariを知ってた人には〈cali≠gariっていうのは一体どんなものか〉を思い出してもらいたかったっていうのと、これからcali≠gariを知る人には〈cali≠gariはこういうものなんだ〉っていうのを理解してもらいたかったというかね、そういうものを提示しとこうと思ってて。これは俺の個人的な考え方ですけど、あのときは2曲しかなかったから、どちらかが表の曲でどちらかがカップリングって取られるのがすごく嫌だったんですよね。だから2枚に分けて、すっげえゴミみたいな曲も入れて。ゴミみたいなカップリングが入ってたでしょ? あれはゴミなんです。でも、あれってすごい重要なことなんですよ」

――ゴミゴミおっしゃってますが、まあ2形態ともにローファイと言いますか、まるでデモのようなと言いますか、そのようなカップリングが入って……。

「そんなことどうでもいいんですよ。気を遣わずにゴミと言ってもらいたい」

――そうですか(笑)。

「だから、cali≠gariっていうのはああいうことができるっていうことですよ。メジャーで、何年かぶりの復活でシングル出すんですよ。その2パターン、どっちにもゴミを入れられるわけですよ。すごいことじゃないですか」

――(気押される)はい……。

「客にも、そういうことを思い出してもらいたかったんですよね。どうしようもない、しょうもないものをくっつけて、あれで2パターンにするんですからね。それが格好良いっていうふうにね、思ってほしかったんだけど。〈うおぉ、こんなもんに金払ってしまった! この人たち、格好良すぎるでしょ!〉って思いますよね、俺だったら(笑)。若い子たちにはなんのこっちゃよく理解できなかったかもしれないけど、良かったと思いますよ。まあ、それを受けての『#』っていうのもあるんだけどね」

――今回は、カップリングもしっかりした曲で。

「まともな曲がちゃんと入ってるんですよ。またゴミ屑みたいなことやってんだろうと思いきや、同じことはやってないという」

 

いかに詰め込んで、シンプルに聴かせるか

 

石井秀仁_A

――では、4曲順に伺っていこうと思いますが、まずは“娑婆乱打”。この曲は6月の野音で初披露されましたが、そこまでは仕上げようというスケジュールで制作された?

「そう……です……ね。うん。野音のときはまだ上がっちゃいなかったと思いますね。トラックダウンが終わったのって、結構最近だったり。やり直したからかな? なんか違う、って。前のアルバムを作ってみて、制作過程での方法論は、ああいうの(各メンバーから上がってきたデータを最終的に石井がまとめる)がいまのcali≠gariには向いてるんだろうなって思うんですけど、なかなかね……音? 音質が難しいんですよね、cali≠gariは。俺が思うcali≠gariの魅力を、なかなかうまいことCDにパッケージできないな、と思ってて。いい音じゃ駄目なんで。ずいぶんきれいにまとまった感じの方向にいっててちょっと違和感があったんで、根本からやり直したんですよね。まあ、他の皆さんはそれでいいっていうか、どうでもいい感じだったんだけど(笑)」

――その、きれいすぎたっていうのは?

「あのね、cali≠gariっていうのは、基本的にデコボコしてるバンドなんですよね。それは観てる人もわかると思うんですけど、例えば上手いバンドっていうのは、メンバーが4人いたら大体4人とも上手いんですよ。cali≠gariは、ベーシストだけが異様に上手い。ただそれだと、バンドってむしろ下手くそになるんですよ。スキルがむちゃくちゃなんだけど、cali≠gariは、そのグチャッとした感じが魅力なわけじゃないですか」

――そうですね。

「うん、俺もそれが格好良いなと思ってて。だけどレコーディングとかだと、基本的に〈ここ、こういうふうに弾いてないんだけど〉とか〈叩いてないんだけど〉とかいうところをケアしたりしますよね? きれいに。その結果、グチャッとした感じがなくなっちゃってるなあと思って、研次郎君(村井研次郎、ベース)とも録りながらそういう話をしてたんだけど、なんかね、いろいろケアしていくと勢いとかが消えていくじゃないですか。ちゃんと聴けるレヴェルにしなきゃならないっていうのもありますけど、cali≠gariのイビツな感じ、デコボコした感じがもっと出たらいいなあと思って」

――それで野音後にもう1回やり直したと。

「そうですね」

――野音のときから思ってたんですけど、この曲、キャッチーなフックがたくさんありますが、構成は風変わりですよね。

「うん。これはインタヴューでしゃべっても、コード進行のことがわかんない人はおもしろくないと思うんだけど、俺、最近は中学生でも押さえられるコードしか使わないんですよ。それはあえてなんですけど。でまあ、例えばですね、いわゆるテンションと言われるような、7度とか9度とかのルート(註:コードの基となる音)じゃないところにヴォーカルラインとかシンセのパートがいくことによって少し不思議な響きにするっていう、うん。だからギターとかが押さえてるコードはすごい単純なもので、似たようなコードをずーっと弾いてるんだけども、そのなかでヴォーカルのメロディーはどこまでいくの?みたいな。たぶんあれ、Eメロとかそのぐらいまであると思うんですよね」

――はい。私、曲を聴きながら構成を書き出してみたんですけど、確かにそうでした。あと、どこか煙に巻かれるようなループ感もあって。

「そうですね。普通に聴いた感じではまったく複雑な曲には聴こえないと思うんですけど、よく聴くと〈なんだこれ? 一体どこがサビなのかな?〉って。レコーディングのときも、〈いまのDメロがさ〉って言うと、Dメロの解釈がみんな違うんで、〈どこ?〉みたいな話になるわけですよ(笑)。そのへんは、ちょっと狙って作ったところがありますね」

――その合間にギター、ベース、ドラムの短いソロのようなパートも含まれていて、さり気ない見せ場が細かく盛り込まれていますよね。

「うん。なんか賑やかな、お祭り的というとちょっと誤解を生みそうですけど、自分のなかではそういう感じがあったんですよね。いかに詰め込んで、シンプルに聴かせるか、みたいなことですよね。混沌としたポップスみたいな。混沌と、っていうのもね、ちょっと誤解を生みそうな単語ですけど。まあ今回に関しては、キャッチーであったりとか、勢いであったりとか、そういうところが全部グチャッと入ってくれたらいいかな、って。で、そのままグチャッとしててくれたらいいかな、って」

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2011年08月24日 18:01

更新: 2011年08月26日 15:35

インタヴュー・文/土田真弓