INTERVIEW（3）――ノイズへのこだわり

ノイズへのこだわり

RUKI

——いま聴いている音がダイレクトに出る、ということをおっしゃってましたけど、麗さんは最近どういうものを?

麗「なんだろうなあ……RUKIの影響でエレクトロとかちょいちょい聴いたりっていうのはありますけど、基本はハードなバンド・サウンドばっかり聴いてますね」

——ラウド・ロックやヘヴィー・メタルがベースにあるミクスチャー感覚は受け継ぎつつ、本作はギターやベースのディストーションですとか、あと打ち込みでも音の汚し方がより洗練されたように思うんですが。

RUKI「そうですよね。ノイズの部分は、特に意識的かもしれないですね。俺のなかでは、（ディストーショナルな）エレクトロにも通じるデジタル・ノイズだったり、あとヘッドフォンで聴いていちばん気持ち良いところを狙った感はありましたけどね」

——そうですよね。生の音もそういう加工がしてあったり。

RUKI「うん、そうですね。だから2曲目“VENOMOUS SPIDER'S WEB”のエンディングでギターがブーッて伸びてるところとかは……あれは加工してないんだっけ?　してないのか」

麗「してない」

——ホントに、どっちなんだろう?って。打ち込みなのか、生音なのか、どちらかわからない。全体的にそういう作りなので、楽曲はやりたい放題でも統一感が出ている。

麗「打ち込みの音はデジタルで、でも、バンドの音は全部アナログで。それが、そこまでハイファイに聴こえるっていうのはひとつめざしてるところなんで、そう言っていただけるのは、かなり嬉しい部分ではありますね」

——そこはこれまでもめざしていたところなんですね。

麗「そうですね。そこってホントに、やり方を知らないと無理な部分だったりするので。ただ歪ませればいいってものでもなくて、いろんな部分でいろんな歪み方があって、いい悪いとか、あと録り方も全部繋がったうえでの一個の歪みなんで。そこはホントに、エンジニアさんといっしょになって研究してって。迫力が出ないですからね、悪いノイズは」

〈有毒〉と〈中毒性〉

——あと、先ほど〈攻撃性〉というキーワードが出てきましたが、そうした本作に『TOXIC』というイメージをあてはめたのはどなたですか?

麗「RUKIですね。選曲会で挙がってきた曲を1回バーッって聴いて、選曲が始まる前に〈TOXIC〉と」

RUKI「有毒っていうイメージ。あと、中毒性っていうイメージ。『DIM』のときにあった〈薄暗い、仄暗い〉っていう具体的なものじゃなくて、もうちょっと精神論に近いようなもの。あと、自分が作ってた“THE SUICIDE CIRCUS”“VENOMOUS SPIDER'S WEB”が先にあったっていうのもあるんですけど。俺、曲を作るときは自分ひとりでアルバムを作っちゃうぐらいの勢いなんですね。まあ、それで限界まで作ったところで、じゃあ『TOXIC』っていうアルバムにしようと。なので、みんなに言うときは若干抵抗ありますよね。『TOXIC』っていうのは、完全に俺だけのイメージなんで。だから『TOXIC』って言ったら〈えっ?〉って。〈ブリトニー（・スピアーズ）が〉っていう話にはなるだろうな、って思いつつ（笑）」

麗「古っ（笑）」

——（笑）では、RUKIさんが原曲を持ってきた曲に関しては、曲作りの段階で『TOXIC』というイメージがあったわけですね。

RUKI「まあ言わないですけど、〈絶対こういうアルバムだ〉っていうのは頭のなかにあって。それで選曲会で挙がってきた曲を聴いてみて〈あっ、これ合いそう〉とか、逆に〈こういう曲はあるから今回はいらないな〉っていうふうにみんなで選んでったときに、〈じゃあ有毒っていうのが合うんじゃないかな〉って」

——その有毒、という部分は、サウンドだけでなくRUKIさんが書く詞の面にも含みがありますよね。これはRUKIさんのパーソナリティーにもよるのかもしれませんが、どこか懐疑的というか、物事の二面性を冷静に見て、両方をフラットに描いている。

RUKI「ああ、第三者的に見ますね、いろんなことを。今回のアルバムのなかには、全体的にいまの日本のイメージがあって。そんな難しく考えるようなことじゃないことが、グチャグチャになってるイメージというか」

——例えば、RUKIさんのなかで早い段階で出来ていた“THE SUICIDE CIRCUS”では〈Justice died〉とか。その言葉には、震災後に露わになってきている国家規模の矛盾を斬って捨てるような厳しさがありますね。

RUKI「でも、それってすごく現実的なことで。TVの隠蔽具合とかはけっこう昔から書いてるようなことなんですけど、震災が起きてからはすごくあからさまになってきている。特にいまだから意識的に書いたっていうよりは、こんなときに違うことを歌おうとは思わないかなっていう。いま、これ以上に言いたいことは別にないっていうか」