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インタビュー

さよならポニーテール 『魔法のメロディ』



MySpaceから飛び出したファンタジー。何だかとても心が柔らかくなるゆるふわな〈魔法のメロディ〉は、〈さよポニワールド〉の入り口だニャー





バンドでもなければ、ユニットでもない。それはMySpaceから始まった〈さよならポニーテール〉という不思議な物語。マイペースで天然な〈みいな〉、明るくてちょっと見栄っ張りな〈なっちゃん〉、優等生でまとめ役の〈あゆみん〉――そんな3人の女の子たちを中心に、9人のキャラクターと一匹のクロネコが織り成す歌の世界、それが、さよならポニーテールだ。まずネット上で話題を呼んだ彼女たちは、ライヴを一度も行うことなく人気を集め、ニュー・アルバム『魔法のメロディ』でついにメジャー・デビューを飾ることに。といっても、そんなことで〈さよポニワールド〉は揺らいだりしないのだ。

「ネットで活動している時からやりたいことは一貫しているので、メジャー・デビューしたからといって特に何も変わらないですね。でも、可能な限りチャレンジャーではありたいな、と思いますけど」。

と、いまの心境について語ってくれたのは、さよポニの世界観を作り上げ、キャラクターのイラストも手掛けている〈さよポニワールドの神さま〉こと〈ゆりたん〉。プロフィールによると、彼女の趣味はお絵描きと妄想で、いつも箱を被っているミステリアスな存在だったりする。そのゆりたんによると、メンバーの役割分担はこんな感じだ。

「いまのところ、メンバーは私を入れて10人いて、それぞれ役割がありつつも手伝えるところは手伝うみたいな感じで。サークルみたいに緩やかな繋がりをイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれないです。今回のアルバムでは、作詞や作曲の担当は〈ふっくん〉というモジャモジャの人と、〈324P〉っていう白衣の博士っぽい人がやってます。でも、私以外のメンバーは全員、曲も詞も書けるから、今後は曲の雰囲気ももっとヴァラエティーのある感じになっていくんじゃないかな。楽器の演奏は〈マウマウ〉という、これまたモジャモジャでいつもキャップを被ってる人が何でも弾けるけど、他の人が弾けるものは分担したりもするし、とても自由な感じです」。

そして、ゆりたんは「わたしとクロネコの妄想をみんなに伝染させて」アルバムのイメージを共有していった。「魔法のようにキラキラ!と」レコーディングが進むなか、ゆりたんは「神さまらしく、みんなにお菓子を配ったり、その様子を記録したり、いっしょに泣いたり笑ったり」して新作を作り上げたという。アルバムから聴こえてくるのは、ギター・ポップやフレンチ・ポップ、ニューミュージックなどの甘味成分をさよポニ風にブレンドしたようなポップソングと、まったりふんわりした3人の少女たちのウィスパー・ヴォイス。例えば、ゆるふわヒップホップ・ソング“無気力スイッチ”なんて、一度聴いたらこちらのスイッチも入ってしまうこと間違いなし。

「みぃなは舌足らずなので、早口っぽいラップは結構難しそうでした。なっちゃんはアルバムでこの曲がいちばん好きみたいですごく楽しんでたし、あゆみんは恥ずかしがりながらも、とても上手にいろんな歌い方を試してたよ」。

ちなみに、ゆりたんのお気に入りは “きみはともだち”で、理由は「宇宙を感じるから。あと百合っぽいところ」だとか。そういえば“甘い感傷”なんていう曲もあるけれど、さよポニワールドには少女マンガやライトノヴェルを思わせる放課後ロマンが息づいている。「1曲目から最後まで、ひとつの物語みたいだなあって思います。最後まで聴き終わったら、魔法にかけられたみたいなふわふわした気持ちになったよ」。

そんなゆりたんの感想は、『魔法のメロディ』の世界を表現するにはぴったりの言葉だ。流石、神さま! そして最後にグループ名の由来について訊ねると、こんな答えが返ってきた。

「そのままだよ。ポニーテールにさよならするんだよ」。

だからこそ、さよならポニーテールの歌は、こんなにも甘くて切ないのかもしれないニャー。


▼さよならポニーテールの2011年作『モミュの木の向こう側』(felicity)

さよならポニーテール_4コマ



カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年10月28日 19:00

更新: 2011年10月28日 19:00

ソース: bounce 337号(2011年10月25日発行号)

インタヴュー・文/村尾泰郎