インタビュー

ヴィンス・メンドーサ


ジャズからポピュラーまで、現在最も注目される作・編曲家





現代ミュージック・シーンを代表する、作曲家・アレンジャーのヴィンス・メンドーサは、1961年コネチカット州ノーウォーク出身。80年代後半の南カリフォルニア大大学院に在籍時に、ピーター・アースキン(ds)に見いだされ、キャリアをスタートする。アースキン、ゲイリー・バートン(vib)、パット・メセニー(g)、ジョン・スコフィールド(g)らに楽曲、アレンジメントを提供し、その名を知られるようになった。90年代からは、ドイツのWDRビッグバンドや、オランダのメトロポール・オーケストラの音楽監督、指揮者を務めている。ポップス・フィールドでも、ジョニ・ミッチェル、ビヨーク、スティング らとのコラボーレーションを開始し、グラミー賞ノミネーション25回、受賞6回の実績を誇る。ボブ・ミンツァー(ts,arr)は、メンドーサを、フル・ストリングスのシンフォニー・オーケストラをスウィングさせることの出来る、希有な作曲家/アレンジャーと評している。ヴィンス・メンドーサに、その最新作『ナイト・オン・アース』について語ってもらった。

「制作が始まった時点では、『ナイト・オン・アース』は、明確なコンセプトが存在していなかった。私のデビュー当時からの友人のアースキンや、ジョン・アバクロンビー(g)、ジョー・ロヴァーノ(ts)らと、私のキャリアの中で知り合った、ブラジル出身のルシアナ・ソーザ(vo)、マリのトム・ディアキテ(kora/21弦ハープ)、アルゼンチン・バンドネオン奏者のヘクター・デル・クルトら、世界各国の素晴らしいミュージシャンとの共演の中で、コンセプトは固まっていったんだ。作曲面では、3年ほど前に両親が亡くなり、自分の家族の大切さを改めて認識した。フラメンコが大好きだった父、イタリア系のバックグラウンドを持っていた母、そして妻や、息子への愛情をモチーフに作曲した曲が多い。私の今の気持ちを誠実に映しだした、かなりパーソナルな色彩が強いアルバムになったと思う。私の作曲のアイディアは、メロディがまず浮かんだり、グルーヴから導き出されたりと様々だが、作曲とアレンジを別々に考えたことはなく、両方をほぼ同時に創り上げている。また、ソリストへのスペースを確保し、ソロを刺激するアレンジを考え、インプロヴィゼーションをするように作曲するというのは、私の音楽のエッセンスであり、ジャズ・コンポーザーとしての本質だと思う。いつもは、誰がソロをとり、どのようにオーケストレーションするかというアイディアを固めてから取りかかることが多い。しかしこの作品においては、明確なヴィジョンを決めずに、ソロを演奏してもらい、その後にアレンジを構成するという、ある意味、初めての実験的な試みを行った。私の現時点のキャリアの上では、最高の作品が出来たと自負している。日本の音楽ファンの皆さんとも、私の世界各国からの古い友人と、新しい友人と共に創り上げた、とてもパーソナルなプロジェクト『ナイト・オン・アース』をシェア出来ることを、とても嬉しく思っています」





カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年11月17日 11:00

ソース: intoxicate vol.94(2011年10月10日)

interview & text : 常盤武彦