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インタビュー

窪田ミナ

映像・色彩・融合 〜『Crystal Tales』に聴く“クボトロニカ”〜

NHK『ゲゲゲの女房』の音楽を担当し幅広い注目を集めた作曲家・ピアニスト、窪田ミナ。メシアンをはじめとする近・現代フランス、イギリスの作曲家に魅せられ、一方では在英時代にジ・オーヴ、マッシブ・アタックらの音も浴び、独自の色彩的音空間を構築する作曲家だ。主にサスペンス系のドラマのために書かれたトラックで構成した彼女のニュー・アルバム『Crystal Tales』は、そんな音世界を堪能できる一枚となっている。

「打ち込みが入っていて、なおかつ生楽器も入っているというトラックをまとめようという発想があり、そうしたものでサスペンス系の映像のために書いたものが多く、いい機会ですからコンセプトとして打ち出したのです。アルバムをまとめる核になった楽曲は、トラック2の《ヴォケーション》。監督からは細かい要望はなく、硬質で、でもどこかから光が見えるようなという漠然とした指定で、長さも4分以上という程度。それで脚本を読んで自由に作ったんです。だからこれは劇伴だけどすごく好きに作った曲。これを中心にし、これに付随するような曲でまとめようと構成しました。思い入れということで言えば『使命と魂のリミット』で作ったアルバム最後の《フェノメナ》。これは結構試行錯誤して、1回お出ししたところこれはちょっと違うと言われたり、切って使うのでとにかく長くという指定もありまして。全体の構成というものも考えつつ、作品の世界観を貫きつつ、とにかく難しかった。そういう制作過程があったこと、また一番最近の仕事だという意味でも思い入れはありますね」

アルバムに収められたトラックは、映像音楽ファンはもちろん、ニューエイジ、さらにエレクトロニカのリスナーまで届きそうなベクトルを持つ楽曲ばかりだ。

「曲を書くときに気をつけているのは、人間の気持ちの上での葛藤。生きていく強さとかくじける弱さとか、全部内包して何かしら伝えたい。どん底に行って、でも救済がある。そういうのって微妙なバランスだと思うのです。成功している人も堕落してる人も、紙一重というところがあると思う。そうしたことを感じているということを、曲に含ませたい。わたしの作品はいろいろな聴かれ方、感じ方があると思います。ただもし曲に接し、それをきっかけとして自分に置き換えて何かを考えていただければ嬉しいなあと思います。作曲家としてすごく光栄なことです」

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年01月12日 20:01

ソース: intoxicate vol.95(2011年12月10日発行)

取材・文 磯田健一郎

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