高橋 優　『この声』

高橋 優が音楽シーンに登場したときは、しゃべるように唄う独特の音楽スタイルに驚かされた。
2ndアルバム『この声』では、そんな彼の世界に更に踏み込むことが出来る。
世間をシニカルに俯瞰しつつ自らもその一員であると肯定する楽曲、人柄がにじみ出るような温かな楽曲……
13曲に高橋の人間臭さが詰まっている。

｢僕が作り出している音楽の世界を心地よいと思ってもらえたら幸せ。
最終的にそれをライヴで共有出来たら｣

―アルバムタイトルと楽曲の“この声”との関係性は?

｢2ndアルバムとはいえ、自分っていうシンガーを

世間一般の皆さんに紹介するというニュアンスは、まだ強いと思うんですね。

<この声が高橋 優です>とか、<こういうことを唄ってて、こういう曲が高橋優です>

というニュアンスを強くしたかった。

あと、“この声”という曲は、今までずっと歌ってきた曲なんですね。

自分にとってすごく縁の深い曲なんです。

歌詞にしろ、自己紹介のような意味もこもっているから、タイトルに相応しいなと思ったんです｣

―前作は音楽をはじめてからアルバムが出るまでの高橋優という感じでしたが、

今作は東京に出てからの高橋 優という印象ですね。

｢はい。昔からある曲は3曲くらいで、他は出来立てホヤホヤの新曲ばっかりですもん(笑)｣

―昔からあるのは“この声”とシングルの“誰もいない台所”?

｢最後の“セピア”もそうですよ。前作で言うと“メロディ”のような感じで、

ずっとあった曲にストリングスアレンジを加えて改めてレコーディングさせてもらったという曲なんですね。

そのほかはライヴでも披露したことのない新曲ばかりです｣

―オープニングの“序曲”はいきなりノイジーなギターからスタートするから、

“福笑い”のイメージでアルバムを手にした人は、再生したら<間違えた?>って思うかもしれませんね(笑)。

｢視聴コーナーで聞いたとしたら、ディスク、違うんじゃないかってね(笑)。

戸惑っちゃうかもしれないけど、それが狙いです｣

―今作は、そういうアレンジ面でもかなり優くんのアイデアがふんだんに盛り込まれているとか。

｢はい。ミックスからマスタリングから、バンドのプレイ……細部に渡るまで、

すべて自分の理想どおりの音に近づけたくて、頭の中で鳴っている音を <こうしたい>って

細かく言いました。楽器にしても弾き方にしても。あまり専門用語を知らないから漠然としか伝えられなくて、

試行錯誤ですけど、かなりガツガツと(笑)。特に、メッセージ性も強くてアルバムの中でも

肝になると思った“蛍”とか“雑踏の片隅で”は、細かく言いましたね｣

―そのときの現場の雰囲気は?(笑)

｢最初は滞りますよね(笑)。相変わらず、せーの!でドンッと録っているので、

その時に<こうじゃない!>って僕が言い始めたら、みんなが<じゃ、どうなの?>ってなりますよね。

<待てよ? 高橋が言ってることは一体どういうことなんだ?>っていうのをみんなが考えてくれる。

そこで光が見えてくる瞬間があって、それをみんなでこじあけるというか。だから時間もかかりました｣

―一番大変だったのは?

｢“蛍”ですね。あと“序曲”も自分でギターリフを考えたので時間がかかりましたね。

この作品で初めて高橋優を聞いてくれる人にも、一枚目を聴いてこの作品をきいてくれる人にも、

あぁ、もういいって思われるような作品にはしたくないじゃないですか。

だから、“序曲”から“蛍”の流れをアルバムのイントロダクションとして成立させて、

<なんだこりゃ!>ってビックリするような作品にしたかった。

丸くなるにはまだ早いし、<次は高橋、何やってくれんの?>って

ワクワクしてほしかった。変なことをやったり、新しいことにチャレンジしていきたいという思いが強かったので、

自分のアイデアはふんだんに盛り込みたかった。だからこそ苦労したし、頭痛くなるまで悩んだし、

みんなと話したんです｣

―サウンドでは裏切りつつ、やっぱりこの声があるから筋が通って高橋 優の作品になりますね。

｢最終的に自分の声が一本の筋になるといいなぁというのはありました。

結構いろんなことを唄っていても、最終的に人間･高橋に帰ってこれたらいいなぁっていう気持ちは、

どの曲を唄っててもあるんですけど。社会のことを歌ったあとで、“気ままラブソング”のように、

正直今の話に興味ないって唄いだすとか(笑)。<ちゃらいじゃん>って思われるかもしれないけど、

それも高橋 優。寂しがっているのも高橋 優だし。そういうところも含め、僕が作り出している音楽の世界を

心地よいと思ってもらえたら幸せ。最終的にそれをライヴで共有出来たらいいなって思いがすごく強いですね｣

 

■New Album……『この声』 3/14 on sale!

■SONG LIST……

01.序曲

02.蛍

03.誰がために鐘は鳴る　(NHKドラマ10｢下流の宴｣主題歌)

04.雑踏の片隅で

05.気ままラブソング

06.あなたとだから歩める道

07.卒業　(TBS系テレビ全国ネット｢CDTV｣1月度オープニングテーマ)

08.この声

09.一人暮らし

10.誰もいない台所　(CBC･TBS系｢ホンネ日和｣エンディングテーマ)

11.蓋

12.絶頂は今

13.セピア　(読売テレビ･日本テレビ系ドラマ｢たぶらかし～代行女優業･マキ～｣主題歌)

■LIVE……｢高橋 優 全国ツアー～この声って誰?高橋優じゃなぁい?2012｣

5/25(金)札幌市教育文化会館 大ホール

5/30(水)神奈川県民ホール

6/3(日)福岡国際会議場メインホール

6/8(金)大阪 オリックス劇場

6/9(土)広島アステールプラザ 大ホール

6/16(土)仙台市民会館　大ホール

6/17(日)横手市民会館

6/24(日)名古屋市公会堂 大ホール

7/1(日)渋谷公会堂

※詳しくはHPにて。

■ PROFILE…高橋 優(タカハシ ユウ)

 83年12/26、秋田県生まれ。

札幌の大学へ進学を機に、路上での弾き語りを始める。

10年7/21にシングル“素晴らしき日常”でメジャーデビュー。

昨年発表の“福笑い”がラジオチャート上半期邦楽1位に。

 
記事内容：TOWER 2012/3/5号より掲載