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インタビュー

LONG REVIEW――DJ KAWASAKI『BLACK & GOLD』



ハウス・マイスターの真っ当な前進



DJ KAWASAKIのニュー・アルバムが〈ディスコのカヴァー集〉と聞くと、番外編的な企画盤と受け止める人が少なくないかもしれない。しかし、最新のオリジナル作品『PARADISE』がアンダーグラウンド・レジスタンスなどのデトロイト・テクノの要素を色濃く反映させたアルバムだったことを考えれば、この2枚が一貫したスタンスによって紡がれたものであることがわかる。彼が目下のところ追及しているのはダンス・ミュージックにおけるブラックネスであり、それがディスコの再解釈という形で結実したのが本作、ということなのだろう。

ここでピックアップされているのは、主に定番のダンス・クラシックスや80年前後のブギーなのだが、ほとんどの楽曲においてオリジナルから大胆に飛躍したアレンジが施されているのがおもしろい。マーヴィン・ゲイやジョセリン・ブラウンが歌った“Ain't No Mountain High Enough”にしても、アシュフォード&シンプソンの“Bourgie' Bourgie'”にしても、ギル・スコット・ヘロンの“It's Your World”にしても、それと知らずに聴いたらカヴァーとは気付かないかもしれない。力強いイーヴン・キックと、ピアノやストリングスによる流麗なハーモニー——いずれの曲もハウスのハウスたる快楽に満ちたサウンドへとモデル・チェンジされているのだ。

近年のDJ KAWASAKIはディスコのリエディット・ムーヴメントにも多大な影響を受けているという。しかしここでの彼の手法は、原曲のグルーヴを引き伸ばしていくリエディットもののそれとは大きく異なる。本作においてKAWASAKIは、ディスコのエッセンスを拝借することで王道のハウスをフレッシュに蘇生させているように思える。新たな要素を貪欲に吸収しつつ、己の血肉たるサウンドに還元する——『BLACK & GOLD』は、国内指折りのハウス・マイスターが、至極真っ当に前進を試みた一枚だ。


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掲載: 2012年03月07日 18:00

更新: 2012年03月07日 18:00

文/澤田大輔