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インタビュー

INTERVIEW(4)――誰以上でも誰以下でもない



誰以上でも誰以下でもない



――いい意味で、アルバム一枚で何かにケリがついた、解決したようには思わないんです。高橋優さん自身も、アルバムを作り終わっても、きっと〈まだ歌いたいことはたくさんある〉という感覚があるんじゃないかと。

「ありますね。こういう言い方が正しいかわからないけれど、それは例えば、人が死んだあとにどうなるかわからない以上、死ぬことを怖がったり、人生の意味を考えたりし続けることといっしょなんですよ。もし、〈死んたあとは不思議なバスに乗って次の世界に行きます〉とか明快な答えがあるんだったら、何も悩まなくていいと思うんですよね。でも、そこに答えがないから、一度きりの人生だと言う人もいるし、生まれ変わりを信じている人もいる。答えのない問題がすでに山積みなんですよね。それといっしょだと思います。歌を歌っていくことは、僕にとっては人生そのもの。悩むし、寂しい気持ちにもなるし、都合よく生きたい!と思うときもある。“雑踏の片隅で”みたいなことを思ったりもする。たった一人の人間のなかにこれだけの振り幅がある。だから、僕らの探している幸せって何だろうって考えたら、わからないと言うしかない。わかってしまったら歌う必要はないと思うんですよね」

――なるほど。そう言ってみたら、先程話していた〈みんなと同じ〉という話と繋がるかもしれないですよね。特にいまの社会だったら、みんなが悩んだり、考えたり、自分の見たものや思ったことをTwitterに書いたりしているけれど、高橋優という人は〈この声〉でそれを歌っている。それだけの違いでしかない、そのへんにいる人と変わらない、という。

「自分自身、そのへんにいますからね(笑)。もし誰かに〈高橋優という人は偉大な人間だ〉とか、〈唯一無二の声だ〉って言ってもらえるなら、そう言ってくれている人も唯一無二だと思うんですよね。同じ人間を探すほうが難しい。自分が特殊な人間だというつもりは一切ないですね。たまたま歌を歌いたかっただけで、建築家だってエンジニアだって、それぞれに才能がある。同じフィールドで生きてると思うんですよ。誰以上でも誰以下でもない。そういうことを歌っていきたいし、そこに何かしらの希望を持っていきたいと思います」


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掲載: 2012年03月14日 18:01

更新: 2012年03月14日 18:01

インタヴュー・文/柴 那典