[Champagne]『Schwarzenegger』
[ interview ]
まさに〈革新的な王道〉と呼ぶに相応しい、サード・アルバムにして最高傑作『Scwarzenegger』を完成させた[Champagne]。まず何よりバンド・アンサンブルの強化が目覚ましく、時にプログレッシヴとも言うべき楽曲はクォリティーが実に高い。そして、それが川上洋平(ヴォーカル/ギター)の作り出すメロディーを打ち消すことなくしっかりと引き立てることにより、これまでにないスケール感をも手にしているのだ。
果たして、彼らはいかにしてこの傑作へと辿り着いたのか? 常に〈世界一になりたい〉と語るメンバーらしく、オアシスやU2、プライマル・スクリームといった世界のトップ・バンドの話も交えながら、じっくりと語ってもらった。
俺、ミュージシャンなんだな
——『Schwarzenegger』はまさにブレイクスルー作品と呼ぶに相応しい、素晴らしいアルバムだと思います。もちろんバンドの歴史はこれからも続くし、むしろここが始まりだと言ってもいいのかもしれないという一方で、純粋に、本作に対する手応えや満足感はかなりあると思うのですがいかがですか?
川上「作品に対する満足感はあるんですけど、バンドのこれからっていう意味では全然満足してないですね。これで3作目ですが、〈まだ認知度これだけなんだ〉とか〈まだこれだけしか売れないのか〉とか〈まだ日本でしか演奏できないのか〉と思うと、逆に悔しくなってくるんです。ひとつ成長するたびに視野が広がって、自分たちのポジションがよくわかるというか。だから、 [Champagne]としては始まりというか、いまも初期衝動の塊みたいな感じですね」
——昔は、3作目を出す頃にはもっとすごいことになってると思っていた?
川上「僕、ファースト・アルバムから自家用ジェット機が買えるって思ってたんですけど、自転車がやっと買えるぐらいで(笑)。でも、夢とか目的っていうのは昔から変わってなくて、近付けば近付くほど喉が乾いてくるというか、早くしなきゃって焦りも出てきて、それはファーストやセカンドよりも感じられると思います」
——磯部さんは手応え、満足感ということに関していかがですか?
磯部寛之(ベース)「もちろんアルバムを作るたびに手応えがあるんですけど、今回作り方はあんまり変わってなくて、どっちかっていうと内面の部分で新しいことがいろいろあった作品なんですよね。ベースっていう楽器が故なんですけど、やっぱりドラムに対する意識がまったく変わったし、そういうのって連鎖反応で、一個気になり出すといろいろ変わっていったりするんです。機材もだいぶ変わりましたし、前回のレコーディングとはホントに違う状態でやった感じですね」
——川上さんも作り方より内面の変化が大きかったですか?
川上「僕は逆に作り方が変わりましたね。言い方悪いんですけど、いままででいちばん〈適当に〉作った作品なんですよ」
——資料にも〈感覚に頼った〉ってありましたね。
川上「はい。“Kids”みたいにシンプルなアルペジオから始まる曲ってスタジオの合間とか、部屋に一人で籠ってる時、何気なく弾いたのをきっかけに、そこから鼻歌レヴェルでメロディーを作ったりとか、そういうのが多いんです。これまではバイトをやりながら音楽をやっていたのでそういう葛藤をぶつけてたんです。でも今回はミュージシャンとしての生活が基盤にあったうえで作ってたんで、〈どういうところから音楽が出てくるかな?〉っていう不安もあったんですけど、自然に出てきたんですよね。それに安心したというか、〈俺、ミュージシャンなんだな〉って」
——改めて確認できた?
川上「そうですね。歌詞もそうで、昔はカッコつけたりとか……いまもそうなんですけど(笑)、もう少しさらけ出すほうのカッコ良さを習得できた気がするんです。作り込まれた完成度じゃなくて、粗削りでもいいからとりあえず脳みそを見せる、みたいな(笑)。脳みそと直結してるような歌詞や曲を作りたくて、それが今回できたのかなって思いますね」
いまの音をキャッチしよう
——でも、それって意外と言えば意外で、今回かなり凝ったアンサンブルの曲も多いじゃないですか? だから作り込んでるイメージもあったんですけど、そうではないんですね。〈感覚的=シンプル、ダイレクト〉ではなかったっていう。
川上「4人でスタジオワークしてる時は何も考えないというか、まったく周りは関係ないんですよね。スタジオに入って最初の10〜20分ジャムると、ホントはセットリストの練習する予定だったのに、その音合わせが2時間になって、2曲出来てたりとかするんですよね」
——例えば、今回で言うとどの曲がそういう感じですか?
川上「“Waitress, Waitress!”なんかそうですね。その時はバトルスにハマってたから、〈“Race:In”のリズム叩いてみて〉ってやったんですけど、あんまり上手くいかなくて。でも、その後にまったく別でドラムループを作ってたらこの曲のリズムが出来て、ギターもラテン風のフレーズが自然と乗って……そこから一瞬で出来ましたね。こんなふうに、感覚的に〈いまの音をキャッチしよう〉って感じでやったから、〈よし、3作目だからこういう感じで、こういう流れで〉っていう会議を設けたりもしていなくて」
——逆に言うと、いままでは設計図を立てて作ってた?
川上「そうじゃないと言いたいんですけど、どっかにあったかもしれないです。ファーストだからこその粗削りな面もあったけど、ない脳みそを使ってプロっぽく考えようとしてたというか」
——それこそ、ちょっとカッコつけてた?
川上「かもしれない。でもアルバムを重ねると演奏はちょっと上手くなったりするんですけど、精神面は逆に若返ってくるんですよね。〈やっぱり自然に出来るものがいいんじゃない?〉って。だから、ファーストとかセカンドではミキシングやマスタリングのすっごい細かいことで2〜3時間喧嘩して、次の日になったらその差に気付かないとかあったんですけど(笑)、今回はそういうのが一切なくて、4人のなかで〈これでしょ〉っていうのが決まってたんで、そういう意味では楽でしたね」
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