OZROSAURUS
掲載: 2012年03月21日 18:00
更新: 2012年03月21日 18:00
強力な新作を携えてハマの大怪獣が5年ぶりに帰ってきた。胸を高鳴らせるビートは、濃密な感情を封じ込めた剥き身の言葉は、もうすぐオマエの耳元だぜ!

止まってる感覚はなかった
「広辞苑」で〈阿吽〉の意味を調べてみると、そのうちのひとつに〈万物の最初と最後〉という表現があった。つまり〈阿吽〉とは相反するものであると同時に、一括してすべてを表わす言葉なのだ。オリジナル・アルバムとしては約5年ぶりとなるOZROSAURUS(以下OS)の新作タイトルは『OZBUM 〜A:UN〜』。以前からMACCHOが使っていた〈オジバム〉という言葉が、即ち〈OZROSAURUSのアルバム〉を指しているのだから、この5枚目は多角的に(いま現在の)OSを凝縮、そして象徴している一枚になったと考えるのが自然かもしれない。
約8年に渡ってバックDJを務めていたDJ SN-Zが正式加入し、このタイミングで二枚看板となったOSは、今作に先駆けて昨年ミックスCD『Hard Pack』をDJ SN-Z名義でリリースしている。「参加メンツや曲の並びは2人で結構話し合った。あとは大体俺に任せてくれたけど、俺もOZROSAURUSのDJとして何が提示できるかを考えた」というSN-Zの言葉通り、いい意味で同作は実質的にOSの作品だったといっても過言ではない。何より、そこに収録された新曲“Profile”は彼らにとって大きな意味を持つ一曲だったのだから。
「ひたすらライヴをやってたから、止まってる感覚はまるでなかった。でも、現場に行ってるなかで〈何か足りない〉っていう感覚はあって」(MACCHO)。
この5年間を振り返ってみれば彼らは数多くのライヴをこなしており、MACCHOはかなりの数の客演曲や企画曲に参加している。止まってる感覚がなかったのも理解できるが、一方でリスナーとしてはやはりOS名義の新作を聴きたいという気持ちは常にあったし、なかなかその形が見えてこない5枚目にやきもきさせられていたのもまた事実だったはずだ。そこで先述の“Profile”である。アイス・キューブの“Ghetto Bird”をDJ PMXが大胆に弾き直したビートに乗るMACCHOのライムは、曲名が物語るように改めてOSの歴史をなぞったパンチのあるもの。この一撃だけでOSは待ちわびるファンたちを狂喜乱舞させ、全員を黙らせたのだ。先行シングルのなかった前作『Hysterical』を除くと、過去のアルバムを代表する楽曲(同時に後のクラシック)——“Area Area”“Hey Girl”“The Phoenix(Will Rise)”——は、どれもDJ PMXが手掛けたものだった。つまり“Profile”が公開されたその時は、俄に待望の5作目が現実味を帯びてきた瞬間でもあったというワケだ。
「何年も前から、〈次はPMXにがっちり頼みたい〉って言ってた気がする。誰にも聴いてもらえなかった時代からずっといっしょにやってた人といまでもいっしょにやれてるのはすごく俺の自信と誇りになってるし、俺らにとって(PMXの起用は)すごくシンプルなことなんですよ」(MACCHO)。
自分の人間味を歌う
プロデューサーとして全幅の信頼を寄せられたPMXは、結果、今作の半数となる6曲を手掛けているが、過去にも同じ化学反応式で相性の良さを実証してきた関係とあって、事前に出回ったそのインフォメーションは5枚目の圧倒的な出来を約束するものと同意であった。しかし、OSはやはり一筋縄ではいかない。蓋を開けてみれば、そこかしこに仕掛けが用意されていた。例えば表題曲“阿吽”は、なんとアカペラで収録されているのだ。
「やっぱり突き詰めて刺しにいくような芸風が自分の性格的にも合う。余裕が出たって言ったら偉そうですけど、すべてをやりきらずに8割くらいで止めておいてもそれを人に公表できるのは強さだと思う。(他の曲に関しては)最高のトラックメイカーを起用するのが大前提だけど、この曲はアカペラでやりたくて。ライヴでもやる時もそうだけど、みんなが静かに俺の言葉に耳を傾けてる時間って、いちばん凝縮されてる時間だと思うし」(MACCHO)。
何だかすごく奇抜な考え方のようにも聞こえるが、これはMACCHOがやりたかったことを極端に表現したもの。
「いい意味で、いつもラップを聴かせるのに最高のビートを選んでる。自分大好きなんだろうね(笑)。ラップってアカペラで聴いても痺れるものだと思うし、むしろデリヴァリーに関して言えば、アカペラのほうが〈うぉー!〉ってなるじゃん(笑)。そこはすごく意識してる。たぶん俺は〈こういう曲を作りたい〉っていうのが、曲調ではなくて、良くも悪くもひたすらラップ。〈こういうことを、こういうふうにラップしたい〉とか、それだけ。だから最先端の新しさとかは逆にまったく意識してない。俺のラップが真ん中にドンッてあれば、究極はビートがなくてもいい。そこはずっと強くいたいんですよ」(MACCHO)。
MACCHOが音楽で重きを置いているのは、あくまで自分の言葉を聴き手に伝えることなのだ。だからこそライヴも想定したそのリリックの内容も、どうすれば伝わりやすいのかも、人一倍強いこだわりを持って考えている。
「自分はすべての作品に対して敬意を持ってるけど、結果としてファースト『ROLLIN' 045』とサード『Rhyme & Blues』は〈みんなに優しいアルバム〉だったと思う。いいって言ってくれる人が多いイメージがあるし、だからそれをやるっていうことじゃなくて、何でいいって言ってもらえるのかを考えた時に、自分の人間味の部分を歌ってる曲が多いからなんですよ。そういうことを歌ってる曲はやっぱり人が受け入れやすいと思う。あたりまえだけど大事なこととか……そういうことを歌ってるのが俺には似合うのかなって。自分に似合ってることをやるのがやっぱりいちばんしっくりくるから。曲が似合ってないと、ライヴの時に一瞬の〈間〉で狂っちゃう。すべてが自分に似合ってるからライヴはぴったりくるワケだし、いいライヴをやりたいから。もうそれがすべてですね」(MACCHO)。
12曲入りとなった今作の再生時間は、40分を切っている。前作がCDの限界値に近い74分ギリギリだったことを考えれば、今回のアルバムには、MACCHOの考える最良のメッセージが厳選して収録されていることがわかるはずだ。制作途中でも納得できる完成予想図が思い描けなければ、容赦なく破棄していったという今回の作品は、サウンド面で積極的なディレクションを加えたSN-Zの思考も含めて、OSとして現時点で最高と言える楽曲だけが用意されている。〈ヒップホップはこうあるべき〉といった類の足枷も、世界中で流行する最先端のサウンド・スタイルも、一度フラットになるよう置き去りにして、自分たちの表現したいものだけを形にする。それがOZROSAURUSの〈阿吽〉であり、〈THE ORIGINAL 045 STYLE〉の音楽なのだ。
▼『OZBUM 〜A:UN〜』参加アーティストの作品を紹介。
左から、BUZZER BEATSの2008年作『Just The Beginning』(Peninsual)、Fire Lilyの2010年作『Eternal Story』(徳間ジャパン)
▼関連盤を紹介。
DJ PMXの仕事を集めた編集盤『THE CHRONICLE II』(BAY BLUES/HOOD SOUND/plusGROUND)
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