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インタビュー

EXLOVERS 『Moth』



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エックスラヴァーズはロンドンを拠点に活動する5人組。そのサウンドは〈シューゲイズ(靴を見つめる)〉な俯き加減がピッタリの、繊細なメロディーで綴れ織られたロックンロールだ。インディーながらもEP『You Forget So Easily』(2009年)のプロデュースを大御所のスティーヴン・ストリートが手掛けるなど、デビュー当初から注目度の高かった彼らが、このたびついにファースト・アルバム『Moth』を完成。シングルの再録と書き下ろし曲で構成された本作は、バンドの〈いま〉をすべて詰め込んだ会心の仕上がりとなっている。

「ほとんどの曲をウェールズのロック・フィールド・スタジオ(UKロック・シーンに欠かせない有名な老舗スタジオ)で録音したんだ。田舎の真ん中にあるスタジオで、他には何もないところだからレコーディングに集中できたよ。新曲のなかには一部しか出来ていない曲もあって、レコーディングをしながら完成させていったんだ。どんな曲になるのか、どんなアルバムになるのか、全体像が見えないまま作業を進めていくのは、すごくエキサイティングだったよ」。

そう語るバンドのフロントマン、ピーター・スコット(発言:以下同)が10代の頃に影響を受けたのは、ニルヴァーナやスマッシング・パンプキンズといったUSオルタナ勢と、マイ・ブラディ・ヴァレンタインやジーザス・アンド・メリー・チェインなどのシューゲイザー・バンドだという。そうした90年代ロックのエッセンスを消化した彼らの楽曲は、ギター・ロックの魅力を凝縮したようなバンド・サウンドに加えて、ピーターとローレル・シルスの男女ツイン・ヴォーカルが生み出す美しいハーモニーも特徴的。

「ヴォーカル・ワークでは苦労したことがあまりなくて、いつもスムースにアレンジできるんだ。曲作りで大切なのはウケるかどうかなんて気にしないこと。音楽を作ること自体を楽しめばいいと思う。音楽以外のこと、例えば愛だの幸せだのをいろいろと考えすぎずに、やりたいことを楽しめばいいんだ。バンド・サウンドも同じで、基本的にはトライ&エラー。試行錯誤しながら失敗から学ぶことも多いけど、そのプロセスが楽しいから苦にならないよ」。

テキ疾走感溢れるギター・サウンドと繊細なハーモニーが溶け合うオープニング・ナンバー“Starlight, Starlight”や、シングル・カットされた“Blowing Kisses”がシューゲイザー新世代を思わせるドリーミーな出来の一方で、“Moth-Eaten Memories”や“You're So Quiet”などギター・ノイズが爆発する楽曲ではUSオルタナの歪みを感じさせたりと、バンドのルーツを織り込みながら、アルバムには彼ららしいリリシズムや瑞々しいポップセンスが息づいている。そんななか、ピーターが敬愛するシンガー・ソングライター、エリオット・スミスを思わせるフォーキーなナンバー“Ruins”にはこんなエピソードも。

「昔付き合っていた彼女に、〈あなたを5文字で表すとしたらR.U.I.N.S.(負け犬)ね〉って言われたことがあったんだ。確かに言い得て妙だと思うね」。

昔の恋人からのキツイひと言が、こんなにも美しい曲に生まれ変わろうとは。元カノといえば、〈Exlovers(元恋人たち)〉というバンド名も気になるところ。〈エックスラヴァーズの曲は全部別れた恋人についての歌、なんて噂もあるけれど?〉と話を振ってみたら、こんな答えが返ってきた。

「それは僕たちだけに限ったことじゃなくて、どのバンドも別れた彼女のことを歌っているんじゃないかな。まあ、確かにバンドを始めた時はそうだったし、バンド名の由来もそこからきているけどね」。

影響を受けた音楽への愛情と、去って行った恋人たちへの思い——彼らの曲が激しくて切ないのは、きっとそういうものが込められているからなのだろう。



PROFILE/エックスラヴァーズ


ピーター・スコット(ヴォーカル/ギター)、ローレル・シルス(ヴォーカル)、クリスト・ウッドヘッド(ギター)、ダニー・ブラックマン(ベース)、ブルック・ロジャース(ドラムス)から成るロンドン在住の5人組。2008年にホワイト・ライズのジャック・ブラウンが主宰するチェス・クラブより、シングル“Just A Silhouette”でデビュー。2010年6月に日本独自企画となるミニ・アルバム『Exlovers』を発表。その後もヤング&ロスト・クラブなどから順調にシングル・リリースを重ねていく。今年に入って、6月の初来日公演決定も話題を集めるなか、このたびファースト・アルバム『Moth』(Young & Lost Club/HOSTESS)を日本先行でリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年04月18日 00:00

更新: 2012年04月18日 00:00

ソース: bounce 343号(2012年4月25日発行)

インタヴュー・文/村尾泰郎